新緑輝く久慈川

日  時:2002年5月4日(土)〜5日(日)
天  気:5/4 くもりのち雨、気温普通風弱し。5/5 晴れ、気温高く風強し。
行  程:5/4 940那珂IC―1115,1230大沢橋―1240,1310大子観光やな―1450,1500新しい橋の下―1630大沢橋(幕営)
5/5 700起床―910大沢橋―1035,1045西金大橋手前―1210,1240下小川沈下橋―1250,1330大沢橋―1340,1420そば道場―1525那珂IC
漕行距離:約20km
漕行時間:約6時間

【1日目】
ゴールデンウィーク真っ只中とあって集合場所の常磐道友部SAは車と人であふれている。今回は色々事件があり、波乱に満ちたツーリングとなった。那珂インターからは久慈川沿いに国道118号を40km程遡るのだが、最初からかなり渋滞している。早目にコンビニで昼食を調達。もし大渋滞だったら車の中で昼食になるかもしれないと覚悟したが、後半は意外と空いており、11時過ぎに上小川のキャンプ村やなせに到着。ところが、ここは河原が遠くてカヌーを運ぶのが大変なので、大沢橋の下の河原へ移動。

久慈川 久慈川 久慈川 久慈川
 
昼食後テントを設営し、スタート地点の大子観光やなを目指す。観光やなの脇の土手に駐車し、カヌーを組立て、ビールで景気付けをして1時過ぎに出発。水は冷たくて気持いいが余りきれいではない。しかも水量がかなり少なく隠れ岩にがんがんぶつかるし、しょっちゅう浅瀬で突っかえてライニングダウン(艇を引っ張って歩くこと)させられる。あと10cm水深が深ければ楽なのだが。今日はあいにくの曇り空だが、新緑の中にフジの花がきれいで淡いパステル画のようだ。左岸の崖に幹がすごくねじけたケヤキが数本。

曇り空 新緑淡く 輝きて

2時頃沈下橋を通過。「沈下橋」というのは初めて見たが、水面から1m位の高さに欄干のない狭い橋が架けてあり、車がゆっくり通って行く。洪水の時は流されてしまうのだろうか?2時半頃水郡線の鉄橋に差し掛かると丁度2両のディーゼル列車がガタガタと通過。新しい道路橋の下で休憩。少し雲が切れて陽が射して来た。予報では天気は回復の方向だから明日は晴れるだろう。

久慈川 久慈川 久慈川 久慈川
 
番の鴨が飛んできて水面に舞い降りた。大勢の家族連れで賑わう所谷キャンプ場を過ぎ、3時半頃「最大の難所」であるシャモの瀬に突入。どんな瀬かと期待したが、水量が少ないせいか全く迫力無し。期待外れだった。4時に奥久慈橋を通過。次の鉄橋はテトラポットが山積みで、乗ったまま通過出来ずテトラの間をゴリゴリ艇を引っ張る。キャンプ村やなせを通過すると今日のゴール大沢橋だ。もう4時半だから大子から3時間半掛かったことになる。結構疲れた。

久慈川 久慈川
 
スタート地点の大子まで車回収に出発。5時頃だった。国道118号は逆方向が袋田の滝帰りの車で大渋滞である。同じ道を戻ると遅くなるから迂回路をナビで探す。かなり山の中を大回りすれば抜けられそうだ。5時15分頃大子観光やなを出て、国道461号を西へ向かう。所がナビの画面では近く感じた道がとんでもなく遠いと判ったのはかなり走ってからだ。このまま進むとおそろしく大回りだが今更渋滞の道へは戻りたくないのでそのまま突っ走る。結局着いたのは7時前。素直に戻れば10km弱の道を迂回して、2時間近く何と50kmのロングドライブを楽しんでしまった。

真っ暗になってしまった河原で雨の中の夕食となった。Fシェフの今夜のメニューは分厚い豚のソテーに手作りのデミグラスソース添え、ジャガイモの丸焼き、豚のスペアリブに野菜のバーベキューという超豪華版。雨具を着てビールで乾杯。カジカが盛んに鳴く。「カジカってどんなの?」「カジカは魚ですよ」「えーっ、蛙の仲間じゃないの?」「魚がどうやって鳴くの?」「水面から口を出して鳴くの?」「どうですかねー?」「食べられるの?」「どうかな?」カジカ論議の結論は出なかった。

食事の後はやはり焚き火だ。バーベキュー用の炭の残ったドラム缶を使って流木を豪勢に燃やす。相変わらず雨はしとしと降っており、星は全く見えないが、オレンジ色の火と木のはぜる音と川のせせらぎとカジカの鳴き声がハーモニーを奏でる。テントにもぐり込んだのは9時半頃だったろうか?

小雨降る 河原の夜に 鰍鳴く

【2日目】
翌朝5時半に目が覚めて散歩してみる。テントのすぐ傍に大きな見慣れない木が1本ぽつんとある。幹はコナラより深く裂けており、葉は奇数羽状複葉で小葉は丸く鋸歯はない。先端の小葉の先が凹んでいる。 (後で調べたらハリエンジュ別名ニセアカシアだった。5〜6月に白い花を咲かせるはずだが、まだ全く花はなかった。砂防用に各地の河原に植えてあるらしい)

9時過ぎに出発する頃には予報通り晴れて来た。日が差すと周囲の山々の新緑が輝き出す。フジが満開である。9時半上小川キャンプ場通過。河原にはカヌーも数艇並んでいる。岩の上に小さな鳥がいる。腹が白く背が黒くて尾が細長くピンと伸びてスマートなセグロセキレイだ。クロアゲハがヒラヒラ水面を舞っている。

揚羽舞う 水面を風が 吹き抜ける

新緑の山肌が迫り、白い石の河原が広がって気田川のような静かな雰囲気だ。時折ささやかな瀬があるものの、川の流れは昨日と同様ゆったりとしており瀞のようである。

新緑の 山肌迫る 久慈の川

この川は初めてだが、隣の那珂川より家並や人工物が目に入らず、自然が残されていて気持いい。「グワッ、グワッ、グワッ」突然、大きな汚い鳴き声が渓谷に響き渡る。しばらく進むと右岸に大きな鳥がいた。なんとガチョウである。大きく右にカーブすると御城橋と水郡線の鉄橋が並んでおり、3両連結のディーゼルカーが轟音を上げて走り抜けた。ガイドブックによると、ここは1mの段差があり、乗ったままでは抜けられないとあったが、橋桁のすぐ脇の細いが強い流れに乗るとあっという間に遊園地のウォータースライダーのようにドーンと落ちた。

ゴム艇は安定していて何の不安もなく気持ち良かったが、ダンサーのF氏はテトラに引っ掛かって危うく沈する所だった。右岸に小さな茶畑あり。空はすっかり晴れ渡り、真っ白い小さな積雲が次々と山の端から湧き上がって来る。澄み切った青空の中で新緑が輝き、その緑の中でフジが一段と派手に咲いている。水面に近いところからずっと上の方まで点々と連なっていて巨大な藤棚のようだ。中には枝を張っているように見えるのもある。

新緑と 艶やか競う 藤の花

近くの人家の庭には満開のオオデマリが、派手派手しく輝くばかりの白さで咲き誇っている。今日は晴れて暑いのでTシャツだけにしたが、この分ではかなり焼けそうだ。この辺りは適度な瀬が続いて流れも早く、気分爽快である。これでもう少し水がきれいで量が多ければ最高なのだが。「こんにちわー。いつもこんなに水が少ないんですか?」河原の釣り人に聞いてみると「いやー、いつもよりうんと少ないねー」

そう云えば、丁度2年前の梓川の時は田植えシーズンで農業用水に取られて本流の水量が極端に少なかったが、ここも田植えの為の減水だろうか?ウグイスが盛んに囀る。青い空、白い雲、そして山肌は針葉樹の濃い緑から淡い新緑まで絶妙のコントラストを描いている。いくらでも材料があるので句がドンドン出来そうだが、漕ぎながらでは中々まとまらない。竹が大量に倒れていて行く手を遮っている。

青空に 白雲流る 久慈の川

川面から 見上ぐ若葉の 輝きて

10時半、白い石を敷き詰めたような広い河原で休憩。チューブの空気は今の所抜けてない。右岸にヤマツツジが1株咲いている。その近くにヤシオツツジに似た白い花が咲いているが遠くてよく見えない。岸辺の崖から太い幹が水平に出て、途中から曲がって垂直に立ち上がった大きなイロハモミジあり。枝を大きく広げて無数の若葉が辺りの空を覆っている。左岸に2本の柱が立っており、ワイヤーケーブルを対岸まで渡してある。上流から流した材木を引き上げるのだろうか?一瞬、前方の水面が逆光できらめいた。

初夏の陽が 水面にきらり 久慈の川

どこまでも 続く若葉の 渓谷や

西金大橋に続いて西金キャンプ場を通過。ここは廃業したのか誰もいない。ミズキ、コメツツジのような花、シモツケのような花など白い花が多い。この辺りは左岸がずっと河原になっていて、どこでもキャンプ出来るのでテントと4WD車が点々と並んでいる。これではお金を払ってキャンプ場に行く人はいないはずだ。水は深くなったが澱んで瀞のように汚い。先程からの強い風に散ったフジの花びらが水面にたくさん浮いている。

水郡線の鉄橋でまた3両通過。頻繁に列車が通るが、ゴールデンウィークだから増発しているのだろう。赤い橋の下はテトラポットが1m弱の間隔できれいに並んでいた。カヌーの幅が広いので左右にぶつかりながら無理やり何とか通過。まるで障害物競走のようだった。

去年の那珂川と同じように向い風が強くなり、漕がないと上流へ戻されてしまう。川幅がうんと広がって浅くなったのでライニングダウンが多くなる。遥か彼方にゴールの沈下橋が見えてからが遠かった。手帳に色々メモしている間に、皆随分先に行ってしまった。漕いでも漕いでも追い着かない。だだっ広い水面に一人取り残されると、気が焦り疲れが倍増する感じだ。

向い風 漕げども遠き ゴールかな

12時過ぎにゴールの下小川沈下橋に到着。上小川から丁度3時間、流れが遅いので随分時間が掛かった。カヌーを片付けてテント場に戻る。水面を漕いでいる時は感じなかったが、地上はえらく暑い。やはり水の上はかなり涼しいんだと実感。テントも撤収して昼食に向かう。下小川にある「そば道場」は1時半というのに広い駐車場が満車だ。店内は天井も高く中々立派な造りである。味はさすがに良かったが、値段も良かった。(マイタケ天婦羅そば1200円)初見参の久慈川は、水量が多いときに来ればかなり楽しめそうな川であった。