初冬の気田川

日  時:2000年12月2日(土)〜3日(日)
天  気:12/2 晴のちくもり  12/3 くもりのち小雨
行  程: 12/2 袋井IC−1220秋葉神社キャンプ場−1430上流スタート地点―1540キャンプ場(幕営)
   12/3 700起床−1125キャンプ場―1320,1430終了点−1510,1600キャンプ場−1640袋井IC
漕行距離:約20km
漕行時間:約3時間

【1日目】
12月の川下りは初めてである。寒そうだから「沈」だけはしたくない。袋井ICから1時間で秋葉神社横のキャンプ場到着。目の前の気田川は以前と様子が違って、水深が随分深く流れも強い。いつもより目茶苦茶に観光客が多い参道横の食堂で昼食を済ませ、2台の車で上流へ向かう。春野町役場の少し上で河原に降りて準備をする。空はすっかり曇ってしまった。上流から女性を含むファルト艇の一団が下って来て、挨拶しながら通過。12月でもカヌーをやる人が他にもいた。

気田川 気田川 気田川 気田川
 
F車をキャンプ場へ回送し、2時半に出発。O・K・S氏はダッキー(ゴム艇で安定している)。F・Iはポリ艇、Y氏はファルト艇という布陣。以前は極め付きの清流で澄み切っていた水が、何故かかなり白く濁っている。どこかで土木工事をやっているのだろうか。早く清流が戻って欲しい。

スタートしてしばらくは快調に進んだが、水が多いのに油断してコース取りをミス、浅瀬の岩につっかえてしまった。渋々降りて艇を引っ張る。ポリ艇はコーミング(開口部、出入り口)が小さく乗り降りが面倒なので、なるべく降りたくはない。ファルトのY氏も同様に降りている。再乗艇して瀬を通過、Y氏を待ったが中々来ない。皆が心配して戻って来た頃、ようやく彼は現われた。「乗り沈をしてしまいましたよ」(乗り沈:乗込む時にバランスを崩して沈すること)

そこから先は水量も多く、流れは速いし、適当な瀬もあり、障害物もなくて快適なパドリングを楽しめる。ベテランのO氏などは余裕しゃくしゃくで瀬があっても漕ぎもせず、後ろ向きのまま悠然と流されて行く。水は思ったほど冷たくない。雪解けの梓川や魚野川の方がはるかに冷たかった。途中、先程のファルトの一団が右岸の河原に上陸していた。

順調に下り、予想よりかなり早く1時間程でキャンプ場に帰着。F車から荷物を出して、車回送の間にテントを張り、夕食の準備に掛かる。メニューはすき焼き。季節外れで誰もいないキャンプ場の炊事場で、野菜や牛肉などを切って大鍋に放り込み、コンロに掛ける。後は酒と醤油と砂糖で適当に味を付けるだけ。

気田川 気田川
 
日もとっぷりと暮れた頃、車を回送して来たF・O氏も加わり、流木の豪勢なたき火を囲んで男6人の宴会が始まった。すき焼きの味付けも上々。広い河原の闇をバックに大きく上がるオレンジの炎。炎に浮かぶ仲間の満ち足りた顔。目に染みる白い煙。鼻にツーンとくる木の燃える匂いとパチパチはぜる音。川のせせらぎ。日頃味わえない贅沢な時間が静かに流れて行く。曇りなので星が見えないのが惜しい。

オレンジの たき火に映える 友の顔

【2日目】
翌朝、皆呑み疲れで目が覚めず、7時頃テントから這い出す。今日も曇り。それ程寒くはない。キャンプ場の周囲のイチョウの黄葉が朝靄に煙っている。季節はずれとあって我々のテント以外は高さが5mはあろうかというインディアンテント一張りのみ。本日のコースはここからスタートして下流へ向かう。上流よりもやや瀬がきつく、沈の可能性もある。

  朝霧が 川面を流れる キャンプ場

朝食後、F・O両氏が車回送に出発。ところがすぐに戻って来た。数キロ先で道が崩れて通行止めになっているそうだ。大回りで行くしかないので、回送に2時間以上掛かるかもしれないとのこと。二人が再び出発した9時頃からマイカーや大型観光バスが続々と到着し、駐車場を兼ねた広いキャンプ場はたちまち車で埋め尽くされ、秋葉神社へ向かう観光客であふれてしまった。

気田川 気田川 気田川
 
カヌーの周りにもおばさん達が大勢集まって物珍しそうに眺めていく。中には色々質問する人もいて、一々応対するのが面倒になって来た頃、雨がぽつぽつ落ち始めた。「今日は下るの止めようか」「雨の中で漕ぐのはいやだね」「沈したら寒そうだしね」雨に打たれながら長時間じっとしているので寒いし、皆段々やる気がなくなってしまった。11時頃ようやく回送組が帰って来た。

「いやー、お待たせしました。さー、行きましょう」F氏は張り切っているが、皆の反応は鈍い。お互いにどうしようかと顔を見合わせていたが、結局、ここは何度も下ったというK氏がパス。他のメンバーは折角遠くまで来たのだからと下ることになった。小雨の中、K氏や観光客に見送られて出発。

昨日の上流部は国道沿いなので、コンクリート護岸や建物など人工物が目に入るが、ここからの下流部は山間を流れており、2〜3の橋を除いて人工物は見当たらず、深山の雰囲気で気分がいい。スタート直後の右カーブの瀬を越えると川幅が広がり、両側を低い山に挟まれた流れはゆったりとカヌーを運んでくれる。木々の紅葉・黄葉は盛りを過ぎてくすんではいるが、雨に煙っていい風情だ。釣り人を気遣う煩わしさもなく、次々に現われる玉砂利の白い河原も美しい。

  雨煙る 川面に響く 早瀬の音

しばらくして右岸沿いの林道の崩落箇所があったらしいが、気付かず通り過ぎてしまった。水量は十分でカーブの度に適度な瀬があり、バランスの難しいポリ艇は結構スリルがある。1時間位下った頃右岸の河原にうずくまっている人を発見。12月なのに釣り人がいるのかと思ったら、K氏がしゃがんでビデオカメラを構えていた。下流を大回りして上って来たらしい。この後、林道脇や橋の上など色んなポイントで撮影をしてくれたので、皆モデル気分で目立つようにパドルを振り回して楽しむ。O氏など立上がっておどけている。雨はほとんど気にならないほどだ。青い橋が見えて来た。松間橋だ。橋の上ではK氏が待ち構えている。その手前の左岸側のカーブには消波ブロックがあって、巻き込まれると厄介な場所である。

皆、左岸に近づかないよう手前でターンしてうまくすり抜けていった。一番後から瀬に乗り入れる。ところがいつものファルト艇と勝手が違ってうまくコントロール出来ず、左に流され過ぎて後ろ向きにブロックに吸い寄せられて張り付いてしまった。ブロックを手で押して流れに出て、後ろ向きのまま波立つ瀬に突入する。このままではまずいと艇を前向きにしようと半回転した時、横波を食らって大きく傾き、パドルで水面を押さえたが効くはずもなく、グングン水面が近づいたと思ったら、次の瞬間水の中だった。ファルト艇ならすぐ脱出出来るのだが、ポリ艇はコーミングが小さいので足が中々抜けず、強い流れの中をもたもた流され、瀬が終わった所でやっと脱艇出来た。

パドルと艇を抑えて右岸の河原にたどり着く。皆心配そうに集まって来る。水は冷たくないので、それ程寒くはないが、3年前初めてこの川を下った時以来の久々の沈はやはり惨めだ。しかも今回はK氏にばっちり証拠ビデオを撮られている。いいネタを提供してしまったが、あの場合無理に反転しようとせず後ろ向きのまま下った方が良かったようだ。

気田川
 
ここからゴールの気田川橋はすぐだった。河原で着替え、甘酒やコーヒーで身体を暖める。40分程でキャンプ場に着き、昨日と同じ食堂で遅めの昼食。冬だというのに東名はやはり渋滞しており、渋谷経由で帰宅したのは深夜だった。