ワカンで辿る前烏帽子岳(1401m)から後烏帽子岳(1680m)
 
日  時:2008年4月12日(土)
天  気:晴れのちくもり
行  程:718烏帽子岳登山口〜733渡渉地点〜815,820960m地点〜845,8541060m地点〜930,9381220m地点〜1020,1040前烏帽子岳〜1130,11351550m地点〜1200後烏帽子岳山頂〜1250,1325えぼしスキー場石子ゲレンデ〜1405えぼしスキー場駐車場〜1405登山口

ルート断面図とルート図
烏帽子岳断面図 烏帽子ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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先週に引き続きまた烏帽子にやって来た。ネットで注文したワカン持参で今日こそ後烏帽子まで登るつもりである。登山口を7時20分に出発。気温は8度、小阿寺沢の渡渉点付近の雪もすっかり消えており、水量はやや増えて飛び石が水を冠っているので別の岩からジャンプする。 先週は鳥の声を全く聞かなかったが、今日はウグイスやシジュウカラなどたくさんの野鳥が囀り、キツツキが幹を叩く「タラララー」という連続音が木霊している。沢音も加わって正に春のシンフォニーである。ブナ林の所々にミズナラの巨木が存在感を誇示している。標高800mを越えるとわずかに残雪が現れた。

尾根筋の急登となり汗ばんだ肌にそよ風が心地よい。1週間前には雪が夏道を隠していた岩尾根だが、今はほとんど雪もない。番のシジュウカラが目の前を横切った。8時過ぎ、傾斜が緩み960m付近で1本立てる。気温は8度だが、ラッセルで大汗。ここまで高度が上がると残雪量も多くなる。 辺りは静寂に包まれて笹の葉音しか聞こえない。左へトラバース気味に登る。雪は益々多くなり、先週付けたトレースが消えてしまった。昨日の雨のせいだろう。

サラサラと笹の葉そよぐ春の尾根


後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳
 
鹿の足跡がルートを横切っている。1060m付近でワカンを着け、上着を着る。30年振りのワカンだが、固定バンド付きなので装着は簡単だ。しかも激しいキックステップも多かったのに最後まで一度も外れなかった。気温は5度まで下がって風も強くなったので、手袋と帽子を冬用に替える。 9時半、1200m付近で2本目。先週よりも雪が緩んでワカンでもかなり潜ってペースが上がらない。「賽の河原」の道標が雪の中から姿を現していた。急斜面でキックステップが続くが、ワカンに張り付いた雪が重く鉄下駄のようだ。いいトレーニングにはなるが腹が減ってくたびれる。前烏帽子の道標も半分雪に埋まっていた。

後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳
 
10時20分、前烏帽子ピーク着。ワカンがあるのに先週より少し時間が掛かってしまった。踏み抜きが多く、しかも重い雪でピッチが落ちたからだろう。ここは西からの風がまともに当たるので寒く、雲が南に向かって飛ぶように流れて行く。今日は屏風や不忘山はガスに隠れて全く見えない。 一旦大きく下っていよいよ後烏帽子への急登が始まる。オオシラビソの間を縫って一歩一歩進むが雪がグズグズで、続け様に腰まで潜ってどっと疲れてしまう。荷が軽いとはいえ、単独のラッセルは遅々として進まない。この調子では300m登るのに何時間掛かるか判らない。 相当登ったと思って後を振り返ったら、まだ前烏帽子と同じ高さでがっかり。ガスも濃くなり視界が狭くなって、辺りの様相は春山から冬山に一変した。ダケカンバやオオシラビソには氷が張り付いて霧氷になっている。一瞬不安がよぎるがともかく1500mまで登ることにする。 そこまでに時間が掛かり過ぎる様なら引き返せばよい。吹雪いているわけではないので自分のトレース通り戻れば迷うことはない。方針を決めて、かすかなトレースを見失わぬよう注意しながら、あえぎあえぎワカンを蹴り込む。何とか1500m付近までたどり着くといくらか傾斜も緩み、ペースも上がって来た。

後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳
 
これならピークまで行けそうだ。雪崩が起きる急斜面や雪屁が出来るようなナイフリッジもなく、緊張する場面はない。傾斜は益々緩くなった。オオシラビソの海老のしっぽが大きくなり、辺り一面真っ白になる。スキーの古いシュプールが何本も現れ、ほぼ平らな雪原をたどると後烏帽子のピークだった。 12時丁度。前烏帽子から1時間20分掛かっている。周囲はガスに包まれて何も見えない。気温は0度。写真を撮ってすぐ下山に掛かる。えぼしスキー場へ降りたいのだが、広い雪の斜面にガスが掛かって方向が判らない。何か目印がないか探しながら慎重に下る。 数分下った所でワカンやスノーシューで登ったと思われる古いトレースを発見。ヤレヤレ、これで助かった。あとはこのトレースを追って一気に駆け下りる。

後烏帽子岳 後烏帽子岳 後烏帽子岳
 
山頂から35分でスキー場最上部に到着。通い慣れた「かもしかリフト」の終点である。チャレンジコースを下り「石子第2リフト」降り場でワカンを外し、昼食を摂る。 あとはゲレンデをのんびり下り、ゴンドラハウス付近でフキノトウを採りながら歩き、登山口に帰着。無雪期とは景色が全く違ってルート探しにかなり時間が掛かり、ガスと強風でちょっぴり冬山気分を味わえてワクワクした。3月末にえぼしスキー場がクローズしてからは全く人が入ってないようだ。夕食にはフキノトウを天婦羅にして春の味を楽しんだ。