駒草煙る熊野岳(1840m)
 
日  時:2007年7月7日(土)
天  気:晴れのちくもり
行  程:738賽の磧〜813,819沢1130m地点〜841ロバの耳分岐〜912,920水場1320m地点〜1005,1010追分〜1122,1135熊野岳(1840m)〜1214,1223刈田岳(1758m)神社〜1300,1303大黒天〜1335賽の磧


ルート断面図とルート図
蔵王山断面図
 
蔵王山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

枠のある写真をクリックすると拡大します。 また蔵王山の樹と花は photos をクリックして下さい


突然転勤となり6月末に宮城県白石市に引っ越したばかりである。荷物の片付けや生活用品整備も一段落したのでそろそろ山歩きをしようかと思っていたが、今朝起きてみたら予報に反して快晴なので急遽ザックを引っ張り出し、おにぎりだけ調達して登山口を目指す。

この山域は初見参なので取り敢えず百名山である最高峰に挨拶すべく熊野岳〜刈田岳周遊コースを選んだ。他には1台しか停まっていない賽の磧(さいのかわら)の広い駐車場に車を置き、舗装された遊歩道を歩き始める。気温は20度、ここの標高は1250mだ。

賽の磧駐車場 蔵王山 蔵王山 振子沢
 
正面には青空をバックに蔵王連山の雄大な山並みが屏風のように聳えている。考えてみると単独行は30数年振りである。昔のようにコースタイムより早く歩けるだろうか?道の両脇にウツギの仲間と思われるピンクの花が花盛り。後で調べたらタニウツギのようだ。ゴヨウマツに緑色の大きな松ぼっくりが鈴生りになっている。 わずかに登って緩やかに下り、10分ほどで遊歩道が尽き山道となる。狭くて岩混じりの急な下りを軽快に辿ると振子沢の沢音が近づいて来た。前方が切れ落ちて展望が開け、火山特有の荒々しい大景観が現れた。谷向こうの斜面にはわずかに雪が残っている。同年輩の単独の人が写真を撮っていた。

《落石注意》の看板のすぐ下に崖崩れ跡があり、巨大な岩が道を塞いでいる。8時過ぎ、振子沢の沢身に降り立ち一休み。高度1130m。ここから700mの登りである。ここが《かもしか温泉跡》と勘違いして、コースタイム1時間20分の所35分で着いたと喜んでしまったが、すぐに大きな間違いと判る。 小さな木の橋を渡ると一転急登になり、フキの大きな葉が道に覆いかぶさっていた。エゾハルゼミが賑やかに合唱している中、わずかに下り北へ曲がる。水量多い小さな沢を渡ると《ロバの耳》コース分岐があり、《危険に付き通行禁止》となっていた。すぐ脇に《カモシカ温泉跡》の表示がある。

ここまで1時間なのでコースタイムより20分早いだけだ。いつの間にか山頂には雲が掛かってしまいがっかり。シャクナゲ、リョウブ、ミズナラ、オオカメノキなどの樹下にはツマトリソウやマイヅルソウなど可憐な花が点在している。長い登りで大汗を掻く。枯れ沢を渡ると湧き水があり小憩を取る。

不帰滝方面 通行禁止 道標 マムシの昼寝
 
青空がわずかになった。ウラジロヨウラクがあちこちに咲き乱れている。他にもコバイケイソウ、アカモノ、ハクサンチドリ、ナナカマド、イワカガミなど次々登場。このコースは展望には恵まれないが、花が途切れることがない。ウグイス、カッコウ、ホトトギス、ホシガラスなど野鳥も多い。えぐれた道の急登が続く。 10時過ぎ、ようやく1510mの追分に到着。休もうとしたら道標下の岩の上でまむしが昼寝をしていてびっくり。丁度名号峰方面から単独の人が来たので声を掛ける。

「その岩にまむしがいますよ」 「あー、さっき通った時はいなかったのに」 彼が石を拾ったので 「寝ているから、放っておけばいいでしょう」 云った時にはもう投げて追っ払ってしまった。 「藪に隠れた方が厄介じゃないですか?」 「いや、もう大丈夫ですよ」 気味悪いが、しばらく待ってそっと通過する。

ここから左に折れて緩やかな傾斜の稜線を熊野岳方面へ向かう。空はすっかり厚い雲に覆われてしまった。気温は17度まで下がっている。シャクナゲやハイマツの《自然園》を通過。道の左20m程先に大きな遭難碑があり、そちらがルートかと思って間違えてしまった。 碑を建てるならルート沿いにして欲しい。雲の中に入ったようでガスがひどくなり目の前の木々以外何も見えない。

この道はメインルートなので登山者と次々にすれ違う。森林限界を超え、ハイマツや背丈の低いダケカンバに覆われた急斜面の岩稜となる。この辺りには目印として高さ3m程の棒が等間隔に立っている。 視界は30mもなく次のポールがやっと見える位である。気温は14度まで下がり、少し風が出て涼しくなった。緩やかな斜面のだだっ広い火山礫帯にはコマクサだけが一面に咲き乱れている。こんなコマクサの大群落は記憶になく感激してしまう。丁度今がピークなのかもしれない。

霧の中駒草跳ねる蔵王山

熊野岳 熊野岳 熊野岳山頂にて 熊野岳
 
11時過ぎ、分岐があり。ロバの耳コースがここへ直登しているようだ。益々ガスが濃くなり視界10mがやっとだ。この辺り広大な稜線なのでポールがなければルートを失ってしまう。かすかにしか見えない避難小屋の横を抜けるとほぼ平らな道となり、わずかにガスが晴れ100m程先に熊野岳山頂神社が見えた。

登山者が大勢行き交っている。11時22分、山頂着。中高年のカップルを中心に人は多いが、八甲田山に似て余りにも広大な山頂なのでそれ程気にならない。簡単な昼食を済ませ下山開始。お釜の方に下り始めると再びガスが濃くなり、何も見えなくなってしまった。とても火口湖を見る所ではない。 観光客もたくさん登って来る中をどんどん下る。岩陰に青と白のツートンカラーの大きくて美しい花を見つけた。後で確認したらミヤマオダマキだった。12時過ぎ、刈田岳リフトへの分岐通過。

間もなく刈田岳神社に到着し少し休む。気温は12度で汗ばんだ肌には涼し過ぎる。 視界は相変わらず10m位。避難小屋の脇を通って下り始めたが、きっちりと石を敷き詰めた立派な長い階段が続くので左膝を痛めてしまった。大変な労力とお金を掛けただろう階段だが、膝への衝撃も大きく山屋にとっては無用の長物だ。しばらくすると木の階段に変わって延々と続くので膝が益々痛くなったが、サポーターを付けたら少しましになった。

刈田岳山頂 大黒天への下り 大黒天への下り 大黒天
 
ウグイスのきれいな声が濃霧の中でよく響く。13時丁度に大黒天に到着。ここからは蔵王エコーラインを下ることになる。霧の中、歩道がない観光道路を下るのはかなり危険だが仕方ない。ライトを点けた車がスピードを落として頻繁に行き交うので、なるべく路側帯の草むらやガードレールの外側を歩く。 コマクサ平を通過。ここからが長かったが13時半過ぎ賽の磧に帰着。遠刈田温泉の共同湯《壽の湯》に浸かって帰路に着く。温泉付で15時半には帰宅という都会では考えられない贅沢な山行となった。

参考:遠刈田温泉 壽の湯入浴料 200円