新緑の王岳(1623m)
 
日  時:2007年5月12日(土)
天  気:快晴のちくもりのち晴れ
行  程:645東京−816河口湖IC−900,920町営駐車場〜942登山口〜1016,10201本目〜1104,1114鍵掛峠〜1234,1340王岳〜1438,1447鍵掛峠〜1550登山口〜1617町営駐車場−1810河口湖IC−1920東京


ルート断面図とルート図
王岳断面図 王岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

写真をクリックすると拡大します。 また王岳の樹と花は photos をクリックして下さい


寝坊したMJが東京駅に現れず今回も「自分の車で追い着く」というパターンになってしまった。段々大きくなる真っ白な富士山に歓声を上げながら河口湖ICに着いたが、M車はかなり遅れそうなのでコンビニに寄って西湖畔の登山口を目指す。登山口付近は以前と大きく様子が変わっており、町営の《いやしの里 根場》という公園のようなものが出来ていた。 茅葺屋根の民家が10軒ほど移築されており、それぞれ大きく立派で蕎麦屋や土産物店、民宿などの営業をしているようだ。ここの広い駐車場に車を置く。 以前の道が通行止めになっているので、登山口への道を教えてもらい出発。2月の雪道ではスニーカーで苦戦したHさんは新調の赤い山靴と同色のザックを格好良く決めている。茅葺民家群の左側が登山口への林道だった。丁度屋根の葺き替え工事をやっている家の脇を抜けてダート道をたどる。 振り返ると雲一つなく晴れ渡った紺碧の空に富士山が大きく聳えている。しばらくジグザグの道を登ると舗装した部分が現れた。その舗装路の脇が登山口で《王岳・鬼ヶ岳》の道標がある。ヒノキや杉林の中をグングン登って行く。ここは南斜面なので日当たりが良く、風もないので早くも汗ばむ。

西湖と富士山 根場いしの里 巨大ブナ 鍵掛峠にて
 
本沢川の左岸を高巻いて進むと路傍にはスミレが点々。幹にとげがあるハリギリの葉は夏には巨大化するのだが、この時期の若葉はまだ可愛い。Aさんが白い花を見つけて 「これは何?」 と尋ねるが図鑑が無いのではっきり同定出来ない。 「葉がカエデみたいに切れ込んでいるから多分モミジイチゴだよ」 5年前にはなかった新しい大堰堤あり。《平成15年治水事業》とあるが本当に必要なのだろうか。急斜面に白いプラスチックの角柱が林立している。中はヒノキの苗木で鹿などの食害から保護しているのだが、無数に並ぶ墓標のようで余り気持ちの良い眺めではない。しかし、道は良く整備されていて歩き易い。 大きな倒木2本が道を塞いでいる辺りから沢筋を離れ、急斜面の登りを経て尾根筋となる。明るいブナ林には淡い緑が溢れて輝くような新緑のトンネルだ。瑞々しく柔らかい若葉に陽が映えて実にいい雰囲気である。ブナ林は秋の黄葉もいいが新緑は清々しくて心が洗われる様だ。

椈の森淡き碧の弾けおり

10時過ぎ尾根上で1本立てる。Aさんが電話すると彼はもう登り始めているらしい。大堰堤を過ぎたというから峠に着く頃には追い着くだろう。この辺りからアセビが多くなり、ミツバツツジのピンクの花もわずかに残っている。時折、木々の間から富士山が見える。 「おーい!」 突然すぐ後ろから声が掛かり振り向くとMJだった。電話から5分位しか経っていない。 「うわー! びっくりしたー。もう来たの!」 Hさんが大声を上げた。それにしても随分早い。実は走るように登って来てさっき電話した時は我々の声が聞こえていたらしい。30分ほど急斜面をジグザグにたどると道が緩やかになり峠も近い感じだ。道のすぐ脇に幹の直径1mを超える巨大なブナあり。眼下に西湖が見え、キジムシロの黄色い花が目立つ。11時過ぎようやく鍵掛峠に到着。 右の道は鬼ヶ岳に通じている。左に曲がったすぐ先に南側が大きく開けて展望抜群の場所があった。足元がスパッと切れ落ちているので遮る物が無く、正面に富士山が高々と聳え、西湖が逆光にきらめき、裾野には青木ヶ原の樹海がはるか彼方まで黒々と広がっている。実に雄大かつ心癒される景観だ。 マメザクラ(別名フジザクラ)の可憐な花があちこちに咲き、ウグイスやシジュウカラが盛んに囀っている。風が梢を揺らし、空には少し雲が出た。右手奥に南アルプスの白い峰が連なり、聖岳から北岳まで主だった峰々にはたっぷり雪が残っている。ここからは左に富士山を見ながら、なだらかな起伏の稜線歩きとなる。

五月晴れ富士の麓に湖光る

風騒ぐ尾根の彼方に雪の峰

風に揺れ山路彩る富士桜

高度が上がったので季節が逆戻りして木々の若葉が小さくなった。木肌が紅く美しいシャラノキあり。芽吹いたばかりのカラマツの若葉は独特の濃い緑色だ。左手前方の山陰に精進湖がちらりと見える。スミレの群落を賞でながら上り下りを何度も繰り返してピークをいくつも越えて行く。 カラマツに小さな花がぶら下がっているが、雄花だろうか?夫婦と思しき二人連れとすれ違うと間もなく二等三角点がある山頂に到着。南側が大きく開けた狭いピークには誰もいない。記念撮影をしてシートを広げビールで登頂を祝う。眼前に富士が裾野を引き、眼下の西湖の湖面も大きく広がり、根場の集落が丁度真下で《いやしの里》の駐車場には我々の車2台がはっきり判別出来る。

落葉松の芽吹き鮮やか初夏の尾根

富士山と西湖 根場集落 王岳山頂にて
 
南アルプス方面 南アルプス方面
 
おにぎりを頬張っていると単独行の男性が熊避けの鈴を鳴らしながらやって来た。続いてまた一人。依然として風は無く暑い。昼食をコーヒーで仕上げて山頂を辞す。空にはいつの間にか薄雲が広がり富士山も霞み始めた。 南アルプスはもう雲の中だ。木々の間からのぞく北面の奥秩父の稜線はかすかにしか見えず同定は出来ない。登りでは気付かなかった満開のアセビ発見。雲間から差し込む初夏の陽を浴びてびっしり並んだ小さな花が白く輝いている。何度も昇り降りを繰り返してくたびれた頃、鍵掛峠に帰着。天気が回復してまた富士山がよく見えるようになった。 急斜面の下りでMJが妙なものを見つけた。茶色の縞柄でヒョロヒョロと伸び過ぎた細い竹の子のような形の草で、高さ50CMくらい。マムシグサのようだが断定は出来ない。ミツバツツジの若葉が稜線上では芽吹いたばかりでつぼみのようだったが、下るに連れて徐々に開き、季節の移り変わりを目の当たりにする。 あと1週間もすれば若葉が皆開いてこんな変化は感じられないだろう。ロープ場が2箇所ほどあり。ハウチワカエデの小さな赤い花が葉の下にぶら下がっている。大堰堤を過ぎた辺りの杉林にヒトリシズカがひっそりと咲いていた。16時前登山口に帰着、林道を下る。

満開の馬酔木輝く峠道

杉林一人静の密やかに

道脇の沢水で顔を洗うと冷たくて気持ちいい。道端のヤマブキは盛りを過ぎて白っぽくなっている。《いやしの里》の茅葺工事はかなり進んでいた。 神社と旧足和田村西浜小根場分校跡である《もりの学校富士山クラブ》の横を通過すると駐車場はすぐだった。富士吉田で甲州名物ほうとうを食し帰途に着く。