冬晴れの今倉山(1470m)
 
日 時:2007年2月3日(土)
天 気:快晴
行 程: 645東京駅−750相模湖IC−850,907道坂トンネル駐車場〜928,933稜線上〜1000,10071310m峰〜1037,1050今倉山〜1205,1255西ヶ原〜1400林道〜1420,1435道坂トンネル−1455,1620道志の湯−1700相模湖IC−1850東京駅

ルート断面図とルート図
今倉山断面図 今倉山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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集合時間を過ぎても来ないMさんに電話すると 「すみません!寝過ごしました。まだ自宅なんです」 「でも何とかして追い着きますから」 普通なら集合時間に自宅にいたらあきらめるはずだが。追い着くのは無理だろうなと思いながら、ともかく快晴の東京駅を後にする。メンバー5人のうちHさん、Aさんの二人が山登りは全く初めてなので、当初は雪を避けて1月初めに計画したのだが、日程が合わず今日になってしまった。 1400m級の山だからいくら暖冬の今年でも2月初めでは多少の雪は覚悟した方がいいだろう。時折姿を現す富士山に歓声を上げながら首都高、中央道を快調に辿り、相模湖IC近くのコンビニでMさんに連絡を取ると、まだ蒲田でこれから“自分の車”で行くという。 1時間経ったのにまだ自宅?急ぐなら相模湖ICではなく河口湖線都留ICから道坂トンネルへ来た方が早いと教える。相模湖から道志の山道を月夜野経由国道413号で道坂トンネルを目指す。予定より少し早くトンネル入口の登山口に到着。澄み切った青空には雲のかけらもない。

道坂トンネル登山口 今倉山への登り 御正体と富士山 南アルプス方面
 
真冬なのに風も無く絶好の登山日和である。高度計を1000mに合わせ、ストレッチをして歩き始めるとすぐ霜柱が現れたのは想定内だが、日陰に雪がたっぷり残っていたのは予想外だ。とにかくHさんがスニーカーなので雪道が続くと山頂まで行けないかもしれない。 気温は0度。ジグザグの登山道は所々残雪が凍結しているので慎重に進む。薄暗いヒノキの植林を20分程登ると稜線に出た。柔らかな陽光が一杯に降り注ぐ尾根道からは眼下に道志の集落がよく見える。心配した雪は全くない。ここには道標があり、右へ進むと御正体山への長い稜線で、今倉山は左である。 汗ばんだ肌にそよ風が心地好く、とても厳寒期の山とは思えない。カラマツの間から雪を被った白い山並みがわずかに見えるが南アルプスの聖岳辺りだろう。単独の人が追い着いたので先行してもらう。この尾根は杉やヒノキの植林がなく、アカマツ以外は全て葉を落とした冬姿なのですこぶる明るい。まぶしいくらいの早春の陽を浴びて落葉道を快調に辿る。

   蒼天にモザイク描く梢かな

   日溜りの山歩楽しむ落葉道

   雲一つ無き空仰ぎ辿る峰

Mさんと携帯がつながった。 「都留ICに着きました。今どこですか?」 「稜線に出た所。都留ICから登山口まで10kmくらいだよ」 えらく早い。中央道をかなり飛ばしたのだろう。この分なら山頂に着く頃には追い着くかもしれない。高度が上がるに連れて南面の御正体山の上に真っ白な富士山が頭を覗かせた。南アルプスの白い山並みも聖岳、赤石、荒川岳と広がって行く。1310m峰で1本立て、チョコレートや甘栗を配る。 ここまで来ると富士山が大きく姿を現した。南アルプスも北岳まで見える。4人の高齢者パーティーが追い着いて来た。道を譲ろうとしたが休んでいるのでこちらが先行。少し下るのだが、日陰に雪が残っていて滑るので木につかまりながら歩を進める。鞍部から急な登りとなり、気温は5度まで上がった。 カラマツの芽が随分膨らんでいる。


今倉山山頂にて 西峰からの眺望 西峰からの眺望 西峰からの眺望
 
斜度が緩やかになると間もなく今倉山山頂に着いた。登山口から1時間半、ほぼコースタイム通りだ。初登山にしては上出来である。三等三角点のある山頂にはわずかに雪が残っている。ここへ来る度に写真を撮っていたブナの大樹が途中から折れていた。 先程の4人組もすぐ到着。Mさんをしばらく待ってみたが下の方を見ても姿が見えないので西峰を目指して出発。この山は双耳峰になっており山頂は東の耳に当たる。ヒノキやモミが密生して薄暗い森の中はかなり雪が残っており、凍結部分も多いので初心者には厳しい。 しかもHさんはスニーカーなので、急な下りでは極端にペースが落ちてしまうが仕方ない。平坦な鞍部を過ぎると西峰の登りとなった。キックステップで足場を作りながらゆっくり登る。AさんもHさんも初めての山登りでいきなり雪の斜面にとまどいながらも楽しそうだ。 予想以上の積雪でギブアップかなと思ったが何とかなりそうだ。西の耳に当たる西峰に着くと、足元がスパッと切れ落ちて目の前が大きく開け、雲一つない青空の下、実に雄大な景観が広がった。富士山から南アルプス、八ヶ岳、奥秩父、奥多摩まで山並みがくっきり。八ヶ岳や奥秩父もかなり雪がある。 ほぼ360度さえぎるものがないが、バッテリー不足でパノラマ写真が撮れず残念。空気が澄んでいるのでどこまでも遠望が利く。冬場だから雲一つない快晴は珍しくないが、無風で暖かくしかも遠くまでよく見えるこんな日は滅多にない。 「初登山でこんな眺望を楽しめるなんてすごく運がいいよ」

   凍てつきし雪尾根下る今倉山

   青空の彼方に浮かぶ白き富士

「うわー!こわいー」 「こんな所下るの無理だよー」 「大丈夫だよ」 ここからの下りは急な上につかまる岩角や木が少なく、半分凍った雪に覆われた痩せ尾根でロープが張ってありかなり大変だった。もっとも軽アイゼンがあればどうということはないのだが。慎重に一歩ずつ足場を指示する。Hさんを安全な場所に降ろしてから再び駆け上がってAさんをフォローする。 さらに延々と続く雪の尾根道を、文字通り一歩一歩足場を確認しながら下る。 「Mさん来たよー」 ラストのT氏が叫んだ。 「お待たせしましたー」 満面の笑顔でMさん登場。なんと“レンタカー”を借りて目一杯飛ばして来たそうだ。近所のレンタカー店の開店時間まで待ったので1時間遅れたとか。それにしても車を借りてまで追い着こうという執念には恐れ入った。

西峰からの下り Mさん登場 西ヶ原からの下り 西ヶ原からの下り
 
西峰から高度差にして100m程下ってようやく西ヶ原の鞍部に到着。 今倉山山頂からのわずかな距離に1時間以上掛かってしまった。余裕があればこの先の松山へも登るつもりだったが、たっぷり雪があるので断念。南側のカラマツに囲まれた日当たりのよい場所でシートを広げ昼食にする。風もなくポカポカ日和を楽しみながら紅茶を沸かす。 ここからの枯れ沢沿いの下りにも所々雪が残っていたが、HさんもAさんもすっかり雪に慣れて問題なく通過。何箇所かロープ場があり。枯れ沢の大きな岩の間を下るが、ほとんど道標もなくルートが判りづらい。長い下りにくたびれて来た頃ようやく傾斜が緩み、左下に堰堤を二つ見送ると間もなく林道に出た。 数分で都留と道志を結ぶ24号線と合流し、道坂トンネルまでゆっくり登り返す。サプライズで始まった今回の山行は、雪道の登降に加えて岩だらけの沢下りと初心者向けのルートではなかったが、素晴らしい天気と眺望に恵まれ、皆大満足の山旅となった。初登山の二人には非常に厳しかったと思うが、効果満点のトレーニングになったことは間違いない。 元気一杯のこのメンバーならもっと厳しい山でも大丈夫そうだ。帰路は「道志の湯」に立ち寄り、露天風呂にゆったり浸かって疲れを癒す。

参考:道志の湯 2時間500円