新雪深き不忘山(1705m)
 
日  時:2007年11月18日(日)
行  程:804白石スキー場〜829白石女子校山小屋跡〜858,907水場1160m地点〜940,944弘法清水1350m〜1050,1056不忘山〜1130,1145弘法清水〜1240白石スキー場


ルート断面図とルート図
不忘山断面図 不忘山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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雪混じりの小雨が降る中、白石スキー場のだだっ広い駐車場の片隅に車を置き、雨具とロングスパッツを着けて歩き始める。わずかに青空も覗く変な天気だ。数日前に雪が降って山はかなり白くなっていたのだが、この辺りは全く雪が残っていない。3度と気温はそれ程低くない。 後から来たワゴン車5〜6名の中高年グループも支度している。今日は誰にも遭わないつもりだったが、自分以外にこんな悪天に登る物好きがいるとは意外だ。上空は西風がゴーゴーとうなりを上げているが、ゲレンデ内を登る道には風が当たらない。みぞれ模様の中、8時半に白石女子高山小屋跡を通過。 ここから山道となり風当たりが強くなる。小雪が舞っているがタイツと冬用ニッカーを穿いているので下半身が暑く背中が汗ばんで来た。

1100m付近からわずかに残雪あり。水場で1本立てていると先程のパーティーが近付いて来たので出発。女性を含む中高年パーティーにしては足取りがしっかりしておりかなり速い。 単独行なのに追い着かれてはみっともないのでペースを上げるがちっとも離れずどんどん迫って来る。こちらも負けずに雪を蹴散らしながら益々ピッチを上げる。雪が本降りになり周囲はあっという間に雪化粧。ゴーグルをしていないので汗と雪で眼鏡が曇り、道が見えにくく非常に歩き難い。 弘法清水で2本目を立てた所で追い着かれた。女性3人、男性2人。話し振りからもかなり山慣れた感じである。彼らが休んでいる間に出発。気温は0度。雪が徐々に深くなり、靴が潜って急斜面ではキックステップ、ラッセル状態。早くも下からさっきのパーティーがどんどん迫って来る。

 
不忘山 不忘山 不忘山 不忘山
 
雪が激しさを増して手帳が濡れるのでほとんどメモも出来ない状態になる。一面銀世界だが、ガスがひどく視界は20m位だ。風も強くなり久々の冬山気分を味わう。つい1ヶ月前に華やかな紅葉を堪能した同じ場所とは思えない。1600mを越えたガレ場付近で写真を撮っていると遂に追い着かれてしまった。 先頭はなんと年配の女性だ。この女性に写真を撮ってもらう。カメラのレンズも曇っている感じだがタオルも濡れるから拭くこともままならない。しばらく後ろに着いていたが雪景色をカメラに収めている間に引き離されてしまった。不忘の碑で一旦追い着くと彼らの話が聞こえた。
「今度は男性がトップを取って下さいよ」
「疲れたのか」
「ラッセルがあるんですから交代してください」
素人中高年グループのやり取りではない。数回シャッターを押している間に彼らは消えてしまった。木々には霧氷がびっしり着いて白く輝いている。頂上直下は突風が吹き荒れ身体がよろける位だ。吹き降りも激しく、彼らの踏み跡があっという間に掻き消されてバージンスノーとなる。

 
不忘山 不忘山 不忘山 不忘山
 
不忘の碑から300mを15分も掛かってヨロヨロと山頂にたどり着いた。岩が積み重なったピークでは、風に飛ばされて積雪はほとんどなく、岩は薄氷を纏っている。気温マイナス2度と格別厳しい寒さではないが強風で立っていられない。視界は10mもなく何も見えない。 無雪期なら大勢の登山者で賑わう山頂だが、今はこの5人以外誰もいない。登頂記念のシャッターを押してもらいすぐ下山に掛かる。吹き溜まりは30cm以上の新雪なので下りは快適だ。一緒に下りながら話を聞くと仙台の山岳会の人達だった。どおりで速いわけだ。 蔵王での山スキーや冬道の説明を受ける。この山も山スキーに適しているらしい。会では冬の単独行は禁止しているとか。
「貴方も一人では登らない方がいいですよ」
と忠告を受ける。もちろん一人でラッセル出来る訳もないので、冬山単独行など考えてもいないのだが。これから今夜に掛けて大雪になりそうだから、明日以降は雪が深くてとても一人では登れないだろう。今日冬山の雰囲気の中で登頂出来たのは非常にラッキーだ。 彼らがガレ場で集合写真を撮っている間に先行する。降雪は断続的に強くなり、みるみる積雪が増えて先程のトレースなど完全に消えている。視界は30m位。しかし夏道の道形ははっきりしているので迷うこともなく、バージンスノーを蹴散らして走るように下る。実に気持ちいい。

 
不忘山 不忘山 不忘山 不忘山
 
弘法清水まで下って昼食にする。ここも先程よりかなり雪が深くなっている。気温は0度。おにぎりを頬張っていると彼らも下って来たが、下山してから食事するとかでさっさと行ってしまった。全員60歳を越えている感じだが元気な人達だ。一旦止んでいた雪が再び降り出して視界が悪くなる。 1200m付近から霙に変わり道の雪も消えて泥んこ斜面となる。滑りやすいし靴が重くなるのでうっとおしい。足の筋肉も一気に疲労が増す感じだが、雨の中では休む気もしないので構わずどんどん下る。小雨が降り続く中、白石スキー場のぬかるんだゲレンデを辿って駐車場に帰着したのは12時40分。

山岳会パーティーに追い立てられたお陰で、標高差900mの雪と泥の道をほとんど休まずに往復して足の筋肉はパンパンで痙攣しそうだ。しかし、温泉で着替えるつもりでそのまま車を走らせる。鎌先温泉の狭い駐車場に車を置いて外に出た途端、異変が起こった。 両足のつま先から太腿まで足全体が痙攣して硬直状態で全く動けなくなってしまったのだ。歩こうとすると硬直がひどくなり痛いのでじっとしているしかない。これまで随分色々過酷な運動をしてきたがこんな経験は初めてだ。やはり脚力が落ちているのだろう。 しばらく車にもたれて休んでからゆっくり屈伸する。何とか歩けるようになったので用心しながらノロノロ旅館まで移動する。温泉の湯船で足を伸ばすと徐々に正常に戻った。ともあれ悪天ではあったが、久しぶりに本格的な雪山を満喫して大満足の山旅であった。 参考:鎌先温泉木村屋旅館 日帰り湯 500円