紅葉残る雁戸山(1484m)
 
日  時:2007年11月3日(土)
行  程:807セントメリースキー場〜815笹雁新道登山口〜839林道終点〜917,930大堰堤830m〜1022,10282本目1190m地点〜11121410mピーク〜1145,1203雁戸山〜1245カケスガ峰〜1300,13071200m地点〜1420,1426740m地点〜1439笹谷古道入口〜1515セントメリースキー場


ルート断面図とルート図
雁戸山断面図 雁戸山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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遠刈田温泉、青根温泉を経て国道286号を西へ進み、笹谷IC手前のセントメリースキー場駐車場に車を置く。天気はくもり、気温は8度。広い駐車場には車が2台のみ。 歩道のない国道を10分程で笹雁新道の登山口に着いた。ここには「北蔵王登山道案内図」という大きな案内板と登山届のポストあり。 国道の反対側には日帰り温泉の大きな駐車場もある。左折して舗装された林道に入る。暗い杉林を抜けて高速道路(山形自動車道)をくぐると砂利道になる。軽ワゴン車が勢いよく追抜いて行った。チラッと車を見ると若い女性が運転していた。イタヤカエデ、トチノキの黄色い落葉が目立つ。

今日は初めて北蔵王の山域に足を踏み入れるのでどんな山なのか楽しみである。目指すは雁戸山。「がんどさん」と読むらしい。今シーズンは蔵王山域で3回紅葉を満喫したが、もう11月なので紅葉は残っていないかもしれない。山並みに挟まれて狭い空は快晴になって来た。左下から水無沢の沢音が響く。 所々にハウチワカエデなど見事な紅葉が残っている。これは期待以上だ。登山口から20分程で林道が尽き、数台の車が停めてあった。先程の軽ワゴン車の脇で二人の中年女性がロングスパッツを着けている。「若い女性」のように見えたのは錯覚だった。 標高は630m。 背中が汗ばんで来たのでフリースを脱ぐ。ハウチワカエデ、イロハモミジ、ヤマモミジなどの色鮮やかな紅葉・黄葉が予想外に連なっていて写真を撮るのに忙しい。左が開けて雁戸山から東へ伸びる稜線が見え始めた。9時過ぎ、740m付近で道は右にカーブして沢筋から離れ沢音が遠のく。

 
雁戸山 雁戸山 雁戸山
 
13度まで気温が上がり、谷間で風もないので汗びっしょりだ。ジャージの下にサポートタイツを穿いてきたので暑い。ずっと緩やかな登りが続く。二人の女性はいいペースで付いて来たが、紅葉の写真を撮っている間に抜かれてしまった。800m辺りまで来ると紅葉も終わり、木々はほとんど葉を落としている。 再び沢筋に出た。人の声がして上を見ると大きな堰堤があり、それを右から越えた所で1本立てる。丁度休み終えた5人位の中高年パーティーが歩き始めた所だった。気温12度。「雁戸山3.3km」の壊れた道標が木の下に落ちていた。まだ先は長い。しばらく行くと沢音が消え尾根筋のジグザグの急登になった。 道は整備されて歩き易く快適だ。サポートタイツの効果で足が軽いけれど暑いのが困る。周囲は若いブナの純林になった。明るく爽やかな雰囲気だ。冬枯れの木々の中でわずかに残ったクロモジの黄葉やハウチワカエデの紅葉が青空に映える。高校の山岳部と思しき若者のグループが降りて来た。

まだ10時前だがこの時間に下山とはどこかで幕営したのだろうか?10時、休憩中の女性2人に追い着き脇を抜ける。標高は1030m位だから400mは登ったことになる。木々がまばらになり東面・北面の山々がよく見えるようになった。点在するカラマツの独特の黄葉が味わい深い。 ハラハラと舞う針のような葉が晩秋の柔らかな日差しを浴びて黄金色に輝く。ガレ場の横を過ぎるとえらい急登になった。1190m付近で2本目。眼下の谷間が良く見える。稜線に出ると急に気温が下がり、北からの風も強くなったので再びフリースを着る。温度計を見ると7度を指している。

谷を隔てて雁戸山の北尾根がこちらの尾根と平行に大きく伸びており、その先に初めて見る北蔵王の峰々がいくつも連なっている。背丈ほどのクマザサの原を登る。シャクナゲ、クロベ、コメツガ、ゴヨウマツなど低木帯を緩やかに下ると前方が開け、雁戸山が目の前に大きく姿を現した。 道脇の窪地で大学生のグループが休んでいた。先程の高校生といいこの山には若い人も来るらしい。11時過ぎ、雁戸山の前衛峰である1410mピークで中高年5人組に追い着いたが、彼らはここで引き返すらしい。ここは双耳峰の北雁戸山、南雁戸山の良い展望台となっており、切り立った岩峰が眼前に迫ってくる。

 
雁戸山 雁戸山 雁戸山
 
  あちこち写真を撮っている間に大学生パーティーに先を越されてしまった。彼らは急な岩峰を軽々と降りて行く。50m程下ると一転して猛烈な急登になる。両側が切れ落ちた45度はある胸突き坂だ。ナナカマドの赤い実が鈴なりに生っている。湿った黒土の滑りやすい急斜面なので慎重に足を運ぶ。 11時半過ぎ、南北に走る雁戸山の稜線に出た。南面が豪快に切れ落ちており、その向こうに南雁戸山の険鋒が聳えている。ここから往復1時間なので空身でピストンも考えたが、まだ先は長く時間的に厳しいのであきらめ、すぐ後の北雁戸山へ向かう。11時45分、標高1484mの山頂着。

360度の大展望だがやや雲が多く、遠望は利かない。北には神室岳から大東岳、西には蔵王ダムから山形市方面が見えるが鳥海山ははっきりしない。南はすぐ目の前に南雁戸山、その右奥に熊野岳から地蔵岳の山並みが連なっているが頂稜付近には雲が掛かっている。 東方彼方に霞んでいるのは太平洋だ。あまり広くないピークには先程の学生グループを始め、数組のパーティーが昼食を摂っていて満杯状態。わずかに空いた小さな岩に腰を下ろしておにぎりを口にする。気温は8度だが風が強く体感温度は5度以下だ。次々に登山者がやって来るので早々に腰を上げ北へ向かう。

いきなり岩場の急な下り、両側が切り立った蟻の戸渡りである。ロープが張ってあるがスタンスは多いのでそれ程危険ではない。しかし、登って来る人も多く、渋滞して若干待たされる。山慣れない人は緊張する場面だ。ピークから20分で滑川コースとの分岐があり右へ進む。 前山を右からトラバースしていくと再び分岐がありここも右を選ぶ。大きな遭難碑の少し先のカケスガ峰に窓ガラスが割れた避難小屋と「東北電力マイクロ波無線用反射板跡」という長ったらしい名前の石碑あり。ここは広い原っぱになっていてルートを見失いやすいが、右の笹薮の割れ目に道がある。

 
雁戸山 雁戸山 雁戸山
 
  北方には山形神室と仙台神室が並んでいるのを眺めながら笹薮に入ると、急な滑りやすい下り道が延々と続く。周囲はまたもやブナの純林だ。1200m付近で一休みしていると年配の夫婦が降りて来た。気温は7度と山頂と変わらないが風がなく暑い。空の半分は晴れているが太陽は雲の中。 濡れた落葉が重なり溝状にえぐれた道はぬかるんで滑るし、そこら中木の根が露出して歩きにくい。樹間から台形状の山形神室岳が見える。左へ回り込み、何度か枯れ沢を渉る。突然前方が開けてドーム状に盛り上がった仙台神室岳が大きく姿を現した。13時半、無線中継所、笹谷峠の分岐があり、標識のない右へ進むとすぐ馬頭観音と「有耶無耶関跡」の道標あり。

この道は平安時代から続く「笹谷古道」といわれる街道で、奥州街道から出羽街道へ抜ける峠道らしく【仙住寺跡】【幹平】【駒泣かせ】【吹き越し】【化け石】【函水】【上栃】【下栃】など様々な言い伝えのあるポイントが多く、それぞれ解説の標柱が立っている。それらの由来を読んだり、写真を撮りながらのんびり下る。 岩がゴロゴロした場所も多く、山靴でも歩きにくいのに草鞋履きではさぞ大変だったろうと想像される。所々に残った紅葉を愛でながら杉林を下ると14時半過ぎに舗装された林道に出た。「笹谷古道入口」の道標あり。まもなく国道286号に突き当たったが、ここにも大きなルート図と笹谷古道の説明看板がある。 右に少し進むと20台位は置けそうな駐車スペースあり。側溝には雪解けのように澄み切った水が滔々と流れ、手を付けると冷たく気持ちいい。平行して走る山形自動車道をくぐり、笹谷IC、笹谷集落、薬湯一の湯、笹雁新道入口と辿って15時過ぎセントメリースキー場帰着。 期待以上の紅葉と青空に恵まれ、なかなか歩き応えのある健脚向きの山旅だった。