霧雨煙る桟敷山(1915m)と天狗温泉
 
日 時:2006年5月27日(土)〜28日(日)

【第1日】
天 気:[5/27]霧雨降ったり止んだり
行 程:[5/27]930南越ヶ谷−草加IC−小諸IC−1250,1300登山口駐車場−1417,1430桟敷山−1520,1530駐車場−1535旧鹿沢温泉(紅葉館)

ルート断面図とルート図
桟敷山断面図 桟敷山ルート
カシミール3Dにて作成しています

写真をクリックすると拡大します。 また桟敷山と浅間山麓の樹と花は photos をクリックして下さい


今回は6年振りに湯の丸高原を訪れ、初日に桟敷山に登り、旧鹿沢温泉の 一軒宿紅葉館の温泉に浸かって、翌日は角間山に向かう計画だ。しかし、予報では雨模様なのでカッコウの声を聞きながら高原散策が出来るだろうか? 外環・関越・上信越道を順調に辿り小諸ICで降りて、広域農道から地蔵峠へ向かう。道の両脇には1番から始まる観音が次々に現れる。80番観音のある地蔵峠から数分下り、90番観音から右手の小道に入ると桟敷山登山口の駐車場があった。車も人もいない広い駐車場は細かい雨とガスに煙っている。ここは標高1610m程なので山頂まではわずか300mの登りだ。13時、雨具を着けほとんど空のザックを背に歩き出す。 登り口に「桟敷山1.7km」の標識あり。昼食は済ませたので急ぐことはない。ガスが濃く視界は100m程、霧雨に包まれた新緑のシラカバ林は幻想的である。緩やかな斜面を絨毯のように覆い尽くしているミヤコザサの間から大きな苔むした岩がポツンポツンと頭を出している。

ハンゴンソウの小さな芽吹きやゼンマイ、タチツボスミレなどが目に付く。湯の丸高原名物のレンゲツツジの花芽はまだまだ固い。ナナカマドやリョウブの芽吹いたばかりの若葉が可愛い。オオカメノキの瑞々しい花が濃い霧の中にほの白く浮かんでいる。 気温は11度。雨具を着ているものの暑くはなく快適だ。アカマツ、ミズナラ、カラマツなどの明るい林を縫って進むジグザグ道の足元にはコイワカガミやタチツボスミレが彩りを添えている。 開いたばかりのサラサドウダンが紅い鈴のようだ。マイヅルソウやツバメオモト、エンレイソウなどの蕾はまだ固い。カラマツの枝にびっしり並んだ小さな新芽が濡れて光っている。大きな桜の木が何本もありヤマザクラかと思ったが、下向きに咲く小さな花が満開のミネザクラだった。枝を左右に大きく広げた姿は風格があり見事。

   霧雨に濡れて輝く唐松の芽

   峰桜そぼ降る雨に凛として

 
登山口駐車場 オオカメノキの前で 山頂にて
 
気温は9度まで下がり風が出て来た。傾斜が緩んでほぼ平らになり、右に展望台への道があったが、ガスの中では何も見えないだろうと素通り。高度計はそろそろ1900mに近付いて来た。若干の登りで1915mの山頂到着。ここはカラマツに囲まれているので天気が良くても展望はなさそうだ。シートを広げて靴を穿いたまま腰を下ろしビールで乾杯。雨はほぼ止んでいるが、風が吹くと周囲の木々から雫がバラバラと降り掛かるので長居は出来ず、早々に山頂を辞す。シジュウカラがえらく忙しない。満開のオオカメノキの前で記念撮影。ウグイスの囀りが静かな森によく響く。

   霧の中オオカメ浮かぶ桟敷山

15時20分、登山口に降り立つ。結局、期待したカッコウの声は聞けず仕舞い。紅葉館へは5分程で到着。今回は道を挟んで反対側の「新館」だが、かなり古くかび臭い。これで12000円はちと高い。 「秘湯の宿」の看板を掲げた本館の玄関辺りは模様替えしたようで、右手は蕎麦コーナーになっており、前回あった皇太子(今の天皇陛下)来館時の写真や大きな掛け時計はなかったが、ぬめりの出た板張りに木の浴槽の温泉は全く変わっておらず、他にすることもないので翌朝まで何度も通ってしまった。夕食は焼きたての岩魚、揚げたてのコロッケに岩魚の刺し身、丸ごと焼いたジャガイモ、山菜の天婦羅、鍋うどんなど作りたての温かいものが多く、とてもおいしかった。

【第2日】
翌朝、夜来の細かい雨が朝食を終える頃には益々激しくなりザーザー降りになってしまった。残念ながら予報が当たっている。とてもこの雨の中を歩く気にはなれないので角間山は未練無くあきらめ、ユニークな温泉とおいしい蕎麦があるというK氏推薦の天狗温泉を目指すことにする。 やや小降りになったものの依然降り頻る雨の中、地蔵峠に向かう。振り返ると昨日登った桟敷山が鍋を伏せたようにこんもり盛り上がっている。地蔵峠から左に折れ、湯の丸スキー場の中を抜ける湯の丸高峰林道を進む。前回来た時に散歩した池の平湿原入口を過ぎるとは道は下りとなる。

いつしか雨は止み、雲が切れて所々青空が覗く。高峰温泉、アサマ2000スキー場を経て車坂峠からチェリーパークラインを下る。標高が下がったせいかガスも晴れて来た。浅間橋から左に折れて新緑のトンネル道をしばらく走ると、どん詰まりに天狗温泉浅間山荘があった。 ここは浅間山のメイン登山口でもある。車から降りると雨上がりの澄み切った青空には真っ白な雲が浮かび、強い日差しにきらめく若葉が眩しいばかりに輝いている。今年の5月はほとんど五月晴れがなく、しかも昨日からずっと雨空の下に閉じ込められていたので、この清々しい空間は心が洗われるような解放感に満ち溢れている。正に山笑う瞬間だ。

   浅間山五月雨過ぎて山笑う

昼食には少し早いし余りにも気持ちがいいので、登山口の鳥居をくぐって林の中を少し歩いてみる。フデリンドウ、シロスミレ、キジムシロ、トウゴクミツバツツジなどが陽光をたっぷり浴びてうれしそうだ。
 
浅間山荘 浅間山登山口にて 天狗の湯
 
浅間山の火山活動状況(レベル2で賽の河原まで登山可)を知らせる大きな看板の横を通って山荘に戻り天狗の湯に浸かる。鉄分が多いらしく見たこともない赤茶色の湯で皆びっくり。しかも色が濃く透明度数センチ。タオルを浸けるとたちまち茶色に染まってしまう。他のお客がいないので揃って写真を撮ったり、タオルをしっかり染めたり大はしゃぎ。チョロチョロ流れ出る源泉はかなり熱くて透明だったから、空気に触れると酸化して茶色になるようだ。

湯から上がって山菜の天婦羅と打ったばかりの蕎麦に生ビール。最高!採れたてのギョウジャニンニク、シイタケ、タラノメ、コシアブラの天婦羅は風味豊かで、特に分厚いドンコシイタケはフワーッとした食感が絶品。 天気には恵まれなかったが、霧雨に煙るシラカバやカラマツの新緑、オオカメノキやミネザクラの可憐な花、紅い温泉、新鮮な山菜や蕎麦と信州の初夏を満喫して大満足の山旅となった。