新雪の大菩薩嶺(2057m)と大展望の明神山(1291m)
 
【第1日】カラマツ尾根から大菩薩嶺
4月8日 735上日川峠−826,8351860m地点−908,930雷岩−940,945大菩薩嶺−1040,1045大菩薩峠−1100,1330尾根−1345大菩薩峠−1450,1800上日川峠−塩山

ルート断面図とルート図
大菩薩断面図 大菩薩唐松尾根ルート
カシミール3Dにて作成しています

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中央道勝沼ICから裂石を経て上日川峠へと向かう。山梨県庁塩山建設部に問い合わせて、裂石から上日川峠までの冬季閉鎖は今日の夕方解除と判明。これで裂石から歩かないで済むので行程は3時間近く短縮出来る。 開通したばかりなのに、峠への道は路面凍結はおろか路肩の雪も全くない。これではスタッドレスの甲斐がない。どうやらこの辺りの冬季閉鎖は除雪をせず、自然に雪がなくなるのを待つものらしい。これなら3月末でも充分通行出来たはずだ。狭くてカーブの多い山道を辿って上日川峠に到着し、長兵衛荘前の駐車場に停める。広い駐車場には小屋の車らしい2台が停まっているのみ。標高1600mのここまで来ても雪のかけらもない。今シーズンは各地とも積雪が異常に多かったので、ここでも雪山気分を味わえると期待して来たのに当てが外れた。

4月とは言え、標高が高いので峠の朝はかなり冷え込む。寒さで目が覚めると、外は晴れているらしく車内に朝日が差し込んでいる。朝食を済ませパッキングをして、7時半過ぎ駐車場を出発。我々以外にはなにわナンバーが1台停まっているだけだ。その車のカップルは身支度をして先程出発して行った。

まだ、芽吹きには程遠いカラマツ林を縫って、大菩薩峠へ向かう舗装された林道を登る。気温は4度。前回は並行する山道を辿ったが、福ちゃん荘で合流していることがわかったのでこちらを選ぶ。カラマツ林の下生えは背の低い笹だ。ミヤコザサだろう。ミヤマハンノキの実がたくさん落ちている。 シジュウカラがツツピーを繰り返して忙しない。軽トラックが2台追い抜いて行った。さっきまで長兵衛荘前に停めてあった車だが福ちゃん荘へ行くのだろう。20分で福ちゃん荘に着いた。舗装路を歩いたので前回よりかなり早い。人の気配のない小屋の手前にはまだ冬姿の立派なダケカンバが立っている。


長兵衛荘 ミヤコザサ 雷岩方面
 
樹林帯 樹林帯 大菩薩嶺にて
 
ここからカラマツ尾根の山道となる。風はほとんどなく静かだ。段々雲が厚くなる。急登になり単独者に追い着かれた。高度計が1800mを示す頃、風が出て来た。気温は1度。空はますます暗くなり今にも雨が降り出しそうだ。 雪がチラチラ舞い始めた。予報は曇りのち雨だったが、気温が低いので雪になったようだ。雨は嫌だが雪なら大歓迎だ。小ピークになった1860m地点で1本立てる。ここからは晴れていれば富士山が見えるはずだ。この辺り風は当たらない。右前方の雷岩方面を見上げるとかなりガスって来た。 この先で尾根はわずかに下る。とうとう気温は0度まで下がり、時々凍りついた残雪が現れる。

   春浅く小雪ちらつく大菩薩

南の方に上日川ダムの湖面が見えるが、その奥の富士山は厚い雲の彼方だ。岩混じりの急登となり、道の右側には保護ロープが張ってある。その向こうの斜面は一面ミヤコザサに覆われているが、遠目にはカヤトの原のようだ。登るに連れて霜柱が大きくなる。気温はマイナス1度になったが風が強いので体感温度はもっと低い。 9時過ぎ、雷岩到着。今日は随分快調だ。ツガやシラビソなどの森に入ると、凍結と融解を何度も繰り返したらしい残雪がガリガリに凍っている。軽アイゼンとロングスパッツ、冬用帽子、手袋、雨具上下で完全武装してピークを目指す。

   ツルツルに凍りし山路ソロリ行く

   凍て付きし残雪踏みて辿る尾根

9時40分、樹林に囲まれた大菩薩嶺に到着。三角点はあるが平坦な広場なので標識がなければピークとは気付かないだろう。写真だけ撮ってすぐ引き返す。次々に登って来る登山者とすれ違う。中にはアイゼンを付けず両ストックの人もいる。雷岩まで戻ると大菩薩峠に続く稜線には雪が残っておらず、軽アイゼンを外す。 風が強くなりガスも濃くて、視界は30m位。雪が舞い、木々は霧氷を纏いあっという間に冬山の様相になった。さすがに2000m級の稜線だけのことはある。降雪の中、足取り軽く下って行く。

   ガスの中霧氷の峰を下るなり

賽の河原に建てられた避難小屋もガスに隠されている。中をのぞくときれいに清掃されて清潔だ。若干登り返して親不知の頭を越え、少し下ると介山荘のある大菩薩峠である。まだ10時40分、予定よりかなり早い。朝抜いて行った軽トラックが小屋の裏に停めてあった。ここまで車が入れるとは思わなかった。 調べてみるとこの峠道はその昔青梅街道だったという。現在の青梅街道は柳沢峠を越えているが、明治6年以前は丹波山村から大菩薩峠を越えて裂石に下り、塩山に出て甲州街道に接続しており、裏街道として重要な役割を果たしていた。往時、峠越えは非常な難路で困難を極めたらしい。


親不知の頭 親不知の頭 新雪の道
 
ここから日川峠ではなく石丸峠に向かう南への稜線を辿る。この上の平らな場所でテントを張って昼食にするつもりだ。介山荘裏手の針葉樹の森に入った途端、再び凍結路となった。残雪が分厚く凍っていてホールドも乏しく、ピッケルが欲しい位で再び軽アイゼンを着ける。 慎重に木の根につかまってソロソロと急斜面を登る。15分ほど進むとルート脇に丁度1張り分のスペースがあった。設営中に霰が激しくなったので急いで荷物をテントに放り込む。遠くで雷も鳴っている。コンビニで調達したベーコンと白菜の漬物を炒め、ワインで300回記念山行を祝う。 高校時代から登り始めて40年掛けてここまで来たが、400回記念はいつになるだろう。外は吹雪だが、もち入りラーメンやおにぎりのおじやなど暖かいものを口にすると温まる。冬用ではないけれどやはりテントの中は別世界だ。

   バラバラとテント叩くは霰雪

コンロを消すと急に冷え込み、霰が激しくテントを打つ。13時半、テントを撤収。いつしか雪は止んでおり陽が差して青空も覗いている。この2時間ほどの間に周囲は銀世界に一変していた。周囲の木々の枝という枝を覆い尽くす霧氷に陽が当たって輝いており、ツルツルの氷の上に2cmほどの乾いた新雪が積もっている。 4月にこんな光景を楽しめるとは望外である。急斜面では八本歯が必要な程で滑り易いので慎重に下る。10分位で介山荘まで下り日川峠への道を行く。すっかりガスは晴れ、青空が広がって親不知の頭までくっきり見える。バージンスノーで化粧された幅広い道をルンルン気分で駆け下りる。

   雪止みて霧氷輝く大菩薩

   峠道新雪踏みて下るなり

廃屋のような勝縁荘からは舗装された林道となり、少し登り返す。富士見山荘、福ちゃん荘を経てカラマツ林を大きくカーブしながら下ると長兵衛荘が見えて来た。

【第2日】明神山
4月9日 塩山−1100三国峠−1120,1200明神山−1210,1230三国峠−1400相模湖IC

快晴で風も強いので春にしては遠望が利き、南アルプスがくっきり見える。昨日と打って変わって好天なのでどこか登ろうということになり、釈迦ヶ岳を目指すが、林道の冬季閉鎖が解除されておらず断念。もう雪はないのにお役所仕事で解除しないのは腹立たしい。しばらく思案して山中湖近くの三国山を目指すことにする。

御坂トンネルを抜けて下りが渋滞している河口湖大橋を渡り、東富士五湖道路を飛ばして山中湖西岸から三国峠に向かう。高度が上がり富士山と山中湖が一望出来るようになると、道路脇では三脚を据えた人が大勢富士山の写真を撮っている。三国山は樹林に覆われて展望が悪そうなので、峠を挟んで反対側のカヤトに包まれた明神山に登ることにする。 峠の駐車場は5台分位のスペースしかなくほぼ満杯だったが、何とか停めて11時に歩き始める。背丈ほどのカヤトの原を縫って急な赤土の斜面を辿る。道はえぐれた溝になっていて見通しが悪いので左の斜面に上がると大展望が展開した。青空をバックに白い富士山が長く裾野を引いて豪快だ。


明神山からの展望 明神山からの展望 明神山からの展望
 
登るに連れて山中湖の湖面も大きくなり、富士山の右には雪を被った南アルプスの山並もくっきり見えて感激だ。牧場のような単調なカヤトの原を登ること20分。1291mの明神山(鉄砲木の頭)に到着。赤土が剥き出しになった大きな広場状の山頂には石造りの立派な社が祀ってある。ここからの眺めは実に雄大。 5合目まで真っ白な富士山がとてつもなく巨大な姿を見せ、その右下に山中湖が大きく湖面を広げている。富士の右奥には赤石岳から荒川、塩見、農鳥、間の岳、北岳、仙丈そして甲斐駒まで雪化粧した南アルプスの重鎮が並び、右手前には王岳から黒岳、三つ峠に至る御坂山塊が黒々と連なり、最後は杓子山だ。

   春の山真白き富士の大きくて

ところで、この山の西半分はカヤトの原で樹木がほとんどないがどうして他の山のように植林しなかったのだろう?もっともそのお陰で眺望は天下一品なのだが。存分に展望を堪能してから高指山方向へ少し下る。緩やかな枯葉道を行くと右手奥に丹沢湖が見えた。簡単な昼食を済ませ登り返す。 明神山山頂を12時に通過、10分で三国峠に帰着。着替えたりザックを整理して、12時半峠を後にする。一旦山中湖畔に下り、平野から山伏峠への道を登る。今日はバイクの集団が随分多い。山伏トンネルを抜けて道志村へ下る。天気がいいこともあってか「道の駅道志」はバイクや車で溢れていた。 のどかな道志の里はサクラ、ウメ、モモ、レンギョウ、コブシなどが一斉に咲き誇って、正に春爛漫。特にサクラが丁度満開で、道路脇のそこここで競うように咲き乱れていたのが強く印象に残った。思いがけず2日間で冬山と春山を体験出来、花見ドライブまで楽しめてこの上なく充実した山旅となった。