初秋の滝子山(1620m)

日 時:2005年9月11日(日)
行 程:740大月IC−810,815登山口下−825道証地蔵登山口―855,905三丈の滝下−920切石−943,952曲り沢峠分岐−1027造林小屋−1050,10571400m地点−1130大谷ヶ丸分岐−1148,1240滝子山−1255,1300大谷ヶ丸分岐−1330造林小屋−1336,1342西長窪沢出合−1405曲り沢峠分岐−1432,1437三丈の滝上−1500登山口−1510,1520登山口下−1540大月IC


ルート断面図とルート図
滝子山ルート図 滝子山断面図
カシミール3Dにて作成しています

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予報ではくもり時々雨ということだったが、5時丁度に家を出ると朝日を浴びてオレンジに輝く雲が澄んだ青空に映えている。朝焼けは悪天の予兆だが何とか降らないで欲しい。 船橋ICから京葉道路に乗り、首都高、中央道と順調に進んで石川PAで朝食。大月ICで降りて甲州街道を西へ向かう。笹子駅手前の吉久保バス停を右折、中央道を越えて右折し、さらに稲村神社の脇を左折して狭い里道を登る。笹子駅から歩く登山者を何人か追い越す。
 
道証地蔵登山口 トチノミ 滑滝
 
 
フシグロセンノウ マムシグサ トリカブト
 
キャンプ場からダートの林道になるとすぐ《この先全面通行止め》の標識があって迷ったが、構わず進む。しばらく行くと舗装部分にスペースがあり、車が1台停めてあったのでここに車を置くことにする。軽くストレッチをして急な林道を歩き始めると、すぐ登山者を乗せたタクシーに抜かれた。 「何だ、車で行けるんじゃない」 紛らわしい標識に腹が立ったが戻ることもないのでそのまま進む。空は白い雲に覆われているが、気温は高く、たちまち汗が滴る。ススキやホオノキを眺めながら10分程で道証地蔵登山口に着くと、先程のタクシーから降りた数名のパーティーが身支度をして出発する所だった。

我々も写真を撮ってすぐ後を追う。なお、以前と同様、登山口のすぐ手前に数台分のスペースがあった。歩きながら高度計を830mに合わせる。少し下って大鹿沢を木橋で渡ると杉林の急登となる。間もなく送電鉄塔を左に見送る。ヒノキの植林もあり、見分け方など説明しながらゆっくり歩を進める。 風は無く、気温は27度もある。既にTシャツもタオルも絞れる位汗びっしょりだ。セミの鳴き声が暑苦しく響くが、野鳥の囀りは全く聞こえない。2本目の鉄塔を過ぎると、良く整備されて歩き易い道は送電線から離れて右に曲がり、平ツ沢左岸の尾根を巻くように緩やかに登って行く。 植林を抜けてブナやカエデの明るい林となる。遥か左下を流れていた平ツ沢の沢音が段々近付いて来た。1箇所土砂崩れで道が壊れていて高巻きさせられる。9時前、沢身に降り立ったので1本立てる。清冽な水だが余り冷たくはない。気温は23度まで下がっており、ややヒンヤリする。 三丈の滝下で丸木橋を渡る。この辺りトチの実が沢山落ちており、分厚い殻が割れているが、熊が割ったのだろうか?リョウブやコアジサイが目に付く。

   登り来て栃の実拾う秋の沢

崩壊地にロープが張ってある。再び暗いスギの植林となり、しばらく行くと半分に削ぎ落とされたような大きな岩があった。文字通り《切り石》である。ここまで1時間弱、まずまずのペースである。日が差して来た。またもや土砂崩れでロープあり。小沢を渡る。高度は1050mに上がった。 またトチの実が大量に散乱している。さっきは熊が実を食べたのかと思ったが、殻は割れているのに実がかなり残っているから熊の仕業ではなく、どうやら自然に割れるらしい。殻の中にはややいびつな大き目のクリ位の茶色い実が一つまたは二つ入っている。 左へ高巻き、ヒノキの植林帯を抜けると左斜面全体にブナ林が広がった。サワシバと思われる果穂、カエデの羽付き種がそこら中に落ちている。ジグザグの急登が続く。9時43分、曲沢峠への分岐で2度目の休憩を取る。標高1140m。気温は24度。 道は右へ回り込んで再び平ッ沢の沢身に近付く。ロープを張った斜面をトラバースして行くと、花崗岩らしい一枚岩の滑滝がザーザー、ドド−ッと豪快である。沢に近付いたり離れたりを何度か繰り返しながら急登が続く。

   轟々と滝音涼し滝子山

カラマツの植林が左右の斜面に広がって来た。しかし、草や潅木が生い茂っているので、以前と印象が全く違い谷間が狭く感じる。沢に沿って右へ折れ、しばらく進むと壊れかけた造林小屋だ。鮮やかなオレンジ色の5弁の大きな花が目立つが同定出来ない。 (帰宅して調べたらナデシコ科のフシグロセンノウ【節黒仙翁】と判明。妙な名前だが節が太くて黒紫色を帯びることから和名が付いていて、センノウという元の種は京都府嵯峨の仙翁寺に伝わったそうである) 紅くなりかけたマムシグサの実がグロテスクだ。西長窪沢を丸木橋で渡り、再び右へ大きく回り込んでゆるやかな斜面を行く。東長窪沢のせせらぎが涼やかだ。11時前、北面に大谷ヶ丸が望める1400m地点で3本目。気温は22度で休むとスーッと汗が引いていくのが心地良い。

隈笹やススキの緩い斜面を辿ると大谷ヶ丸へのトラバース道の分岐である。ダケカンバやミズナラ、シラビソ等の疎林の間に青紫のヤマトリカブトの群落が次々に現れる。サラシナショウマの房状の白花もチラホラ。 「この松ボックリみたいなの何かしら?」 Oさんが枝毎落ちた青いシラビソの実(球果)を見つけた。11時半、大谷ヶ丸からの稜線に合流して右へ折れる。間もなく《白峯神社》という小さな祠がある《鎮西ヶ池》を通過。 ミツバツツジなどの間を縫って急斜面をゆっくり登るとようやくピークに飛び出した。滝子山は地図上の三角点は1590mだが、最高点はやや西にあり1620mである。高度計が1600mを越えても山頂に着かないので、また設定を間違えたのかと焦ったがミスではなかった。 ともかく、全員登頂出来て何よりだ。狭い山頂には数組のパーティーが休んでおり、一番端にシートを広げる。靴を脱いで腰を下ろしビールで乾杯。 「最高!」 一気に飲み干したFさんは満面の笑み。山でビールなど初めてらしく感激されて恐縮。登りのコースタイム2時間半の所、休憩を入れて3時間20分掛かったが、上出来である。

   一気に干す山上の麦酒甘露なり
 
白峯神社 大谷ヶ丸方面 滝子山山頂
 
残念ながら雲とガスで展望はほとんどなく、北の大谷ヶ丸方面と南の三つ峠、鶴ヶ鳥屋山辺りがちらりと見えるのみ。しかし、雨にも降られず爽やかな空気を味わって皆満足そう。下りは往路をそのまま辿る。平ツ沢右岸の岩場のトラバース道では皆へっぴり腰だったが、何とか無事通過。 林道の駐車場着は15時11分。車に辿り着く直前に大粒の雨が降り出したが、山の中ではパラパラの雨にしか遭わず助かった。