酸ヶ湯温泉と花溢れる八甲田山(1584m)
 
日 時:2005.7.30(土)〜8.1(月)

《第1日》東京から酸ヶ湯へ
天 気:薄曇りのち雨
行 程:852東京−1204,1216八戸−1315,1420青森−1530酸ヶ湯(泊)

《第2日》八甲田大岳から毛無岱へ
天 気:曇りのち晴れのち曇り
行 程:740酸ヶ湯−825,830樹林帯−920,930地獄湯の沢−1000,1015仙人岱−1125,1238大岳−1255,1322大岳避難小屋−1415,1430上毛無岱−1450,1455下上毛無岱−1555酸ヶ湯(泊)

ルート断面図とルート図
八甲田山ルート図 八甲田山断面図
カシミール3Dにて作成しています

写真をクリックすると拡大します。 また八甲田山の花は photos をクリックして下さい
 
酸ヶ湯 高田大岳見える 八甲田清水
 
メニュー豊富なバイキングの朝食をたっぷり腹に収め、7時40分、ツバメが飛び交う宿を後にする。標高925mにしては気温が高く、空は一面薄雲に覆われている。しかし、すぐに雨が降りそうな感じではない。ダケ カンバやブナの林を縫って石の階段を少し上がると 広大な駐車場があった。 随分立派だが登山客用だろうか?駐車場の脇に小さな鳥居がありそこから登山道になる。丸太を並べた階段道には《大岳まで4.7km》の道標あり。昨日の雨で道はぬかるんでいてかなり滑る。

今日は酸ヶ湯から東へ向かい仙人岱から北上して八甲田の最高峰である大岳に登頂後、井戸岳とのコルから西へ向かい毛無岱の湿原を下って酸ヶ湯に戻る周回コースを辿る予定である。気温は25度もあり蒸し暑く、Tシャツ1枚なのに早くも汗ばむ。 ブナに混じってオガラバナ、ナナカマド、ハウチワカエデ、オオカメノキなど落葉樹林が続く。 紅葉の時期はさぞかし素晴らしいことだろう。100m置きに大岳まで残り何キロという道標が現れるのは一寸うるさい。岩混じりの道となり、小さな流れを何度か横切る。 8時25分、一本立ててグレープフルーツを切り、水分を補給する。8時35分《大岳3.0km》の道標通過。コハウチワカエデには羽が付いた実がびっしり。ミズナラの幼木が多い。 8時55分《大岳2.7km》の道標あり。次々と登って来る後続のパーティーに何度も道を譲る。中には、スキーやボードを担いだ若者もいる。密生した樹林の中では風がなく汗が滴る。背の低いオオシラビソ《別名アオモリトドマツ》の天辺に大きな青い実《球果》がたくさん並んでいる。 本当にきれいな青紫の松ボックリという感じ。シラビソの球果も青いが、大きさは半分。オオシラビソの名は球果が大きいからだと改めて確認。右上に硫黄岳が姿を覗かせた。日差しがきつくなり、ようやく道が乾いて来た。 9時10分、大岳がはるか左上に望める。ゴゼンタチバナの大きな群落があり、ウグイスが囀る。右下から沢音が聞こえ始めた。

   登り来て沢音涼しき八甲田
 
地獄湯の沢 雪田の脇を行く 高田大岳の登り
 
涸れ沢を通過。谷間を渡る風が汗ばんだ肌に心地よい。しばらくすると、沢沿いに大きく展望が開けた。硫黄の臭いがする広々としたこの谷には木が全くなく荒涼とした風景である。9時20分、大きな沢を渡る所で休憩。《地獄湯の沢》との標柱あり。 一寸硫黄臭いが清冽な沢水は手が切れるように冷たく、渇いた喉を潤してくれる。黄色い硫黄鉱石が露出した間を縫って急坂を登るとハイマツ帯となった。斜度が落ちて平らになり、木道を辿るとワタスゲ、イワオトギリ、ミヤマキンポウゲ、ヨツバシオガマ、コバイケイソウ、イワイチョウ、チングルマ、タテヤマリンドウ等が花開く湿原が現れた。仙人岱である。 10時、ようやく仙人岱の真ん中にある八甲田清水に到着。湧き出る清水を水筒に詰める。続々と登山者が到着する。夏雲が切れて青空が広がり始めた。見上げる大岳の雄大な斜面にはわずかに雪田が残っている。コバイケイソウの群落を見ながら木道を進むと、雪田の少し下に一段と豪勢なお花畑が広がった。

ハクサンチドリ、タテヤマリンドウ、イワイチョウ、ミヤマキンポウゲ、チングルマ、イワカガミ、ショウジョウバカマ、エゾウメバチソウなどが今を盛りと咲き乱れている。しかも、びっしりと群落を成している花が多いから、華やかで丹精込めた花壇の様だ。 特に真っ白なチングルマと鮮やかな黄色のミヤマキンポウゲの大群落には圧倒された。皆写真を撮るのに大童。雪田を左から回り込むように火山礫の多い急斜面を登って行くと、 ヒナザクラやナナカマドの花が咲き、稚児車になったチングルマやハクサンシャクナゲ、タカネニガナの周囲を赤トンボが飛び交っている。 森林限界を抜けると小岳、硫黄岳、高田大岳など八甲田連山の大展望が広がった。酸ヶ湯温泉もはっきりと確認出来、見上げる青空には白雲が流れ、夏山気分が高まる。たくさんの実を付けたミヤマハンノキが目に付く。 登山道の両脇には落石防止の為に積み上げた岩を金網で覆ってある。左手眼下に田茂萢岳のロープウェイ山頂駅が見えた。周囲の木々を映して深い緑の水を湛えた鏡沼があり。この沼にはサンショウウオがいるそうだ。いよいよ斜度が増し最後の登り、大岳頂上まではあとわずかだ。 花もなくなりザレの急登が続く。山頂の手前にある祠を過ぎると斜度も緩み、だだっ広い山頂に着いた。酸ヶ湯からのコースタイムは1時間半オーバーしたものの何とか辿り着いてヤレヤレ。

大岳の急登 鏡沼 高田大岳山頂にて
 
高田大岳山頂にて 大岳避難小屋 井戸岳方面
 
夏山最盛期の百名山とあって大勢の中高年登山者が昼食を摂っているが、平らな広場のような山頂なので気にならない。ここは太平洋と日本海を同時に眺めることが出来る第一級の展望台なのだが、雲や靄が邪魔をして海はもちろん岩木山、岩手山、鳥海山などの遠望が利かず、せいぜい南八甲田の駒ヶ峰、櫛ヶ峰、乗鞍岳くらいしか同定出来ず。 山頂の周囲には植生保護のロープが張ってあるので噴火口は覗けない。我々も端の方にシート2枚を広げて陣取る。辺りには先ほどから無数の赤トンボが舞っている。 今回はビールは無し。薄い水割りをチビチビやりながら、宿で作ってくれた大きなおにぎり2ケを何とか詰め込む。気温は21度。爽やかな風が吹き抜ける山頂はTシャツだけで寒くも暑くもなく快適だ。12時38分、集合写真を撮り下山開始。 正面に大きく聳える井戸岳との鞍部へ向けて、背の低いオオシラビソ、タカネナナカマド、ハイマツ、ハクサンシャクナゲなどを縫ってかなり急な岩混じりの道を下る。眼下には大岳避難小屋が見える。

13時前、井戸岳と大岳とのコルにある大岳避難小屋に降り立つ。標高1430mに建つ立派な小屋前のベンチは高校生らしき団体が占領しているので、少し先のベンチで皆を待つ。しかし、中々誰も来ない。 15分程してようやく全員揃った。もう13時半近いが、ここから酸ヶ湯まではコースタイムでまだ2時間あり、今のペースでは16時までに着くのは難しいだろう。 とにかく、雷雨には遭いたくないのでなるべく早く下りたい。アオモリトドマツを中心にオオカメノキ、ツガ、クロマメノキ、ドウダンツツジ、ナナカマド、オガラバナなどの樹林帯は風がなく暑い。上毛無岱の湿原に降り立つ。木道の脇にミズバショウの花がわずかに残っている。

シラタマノキ、ツマトリソウ、ハクサンシャクナゲ、アカモノ、ワタスゲなどの花が目に付く。14時5分、田茂萢岳への道を右に分け、振り返ると今下って来たばかりの大岳がはるか彼方に大きく聳えている。井戸岳、赤倉岳も大きい。ヒョウ柄の蝶が木道脇に羽を休めている。しばらく観察していたK氏が 「ヒョウモンチョウにも色々あるけどこれはウラギンヒョウモンチョウですね」 何でも良く知っている人だ。ネバリノギラン、チングルマ、そして湿原全体を埋め尽くすキンコウカの大群落が素晴らしい。14時15分、上毛無岱のベンチで休憩。空はすっかり灰色の厚い雲に覆われてしまい、大岳上部はガスに包まれ出した。 今頃山頂にいたら何も見えなかっただろう。何とかあと2時間位降らないで欲しい。急な階段下りが始まった。はるか下まで一直線に続く木製の立派な階段は段差も小さくて非常に歩き易いが、造るのは大変だっただろう。これが無かったら、ぬかるんだ急斜面を下るのに2倍以上の時間が掛かったはずだ。
 
下毛無岱の湿原 下毛無岱の湿原 酸ヶ湯温泉帰着
 
突然、眼下に下毛無岱の美しい湿原が姿を現した。少しガスった中に地塘が点在する幻想的な光景に歓声が上がる。この雰囲気は燧ヶ岳の見晴新道から尾瀬ヶ原を眼下にした時とそっくりだ。湿原に降り立つと、再びキンコウカの大群落が彼方まで広がった。 余程生命力が強いのかこの広い湿原を完全に占拠してしまっている。

   湿原に見渡す限りの金黄花

14時50分、下毛無岱のベンチで休憩。早くも紅く色付いたナナカマドあり。再び、階段下りが続く。風格あるブナの巨木があちらこちらに立っている。15時10分《酸ヶ湯まで1.4km》の道標通過。葉が巨大化したミズバショウあり。傾斜は緩やかになったが、小さな上り下りがいつまでも続くのでくたびれて来た。 15時25分、城ヶ倉温泉への分岐を通過、立派なブナ林となる。下の方から車の音が聞こえ始めた。もう酸ヶ湯が近そうだ。どうやら雨に降られずに済んだ。間もなく何棟も連なった大きな宿の屋根が見えた。疲れた足を引き摺りながらぬかるんだ急坂を下り、16時5分前、宿の裏手に出た。 あとはビールと温泉が待っている。山を降りてすぐこんな立派な温泉でゆっくり出来るなんて幸せだ。


《第3日》酸ヶ湯から東京
天 気:晴れ
行 程:955酸ヶ湯−1120,1248青森−1351,1404八戸−1708東京

駐車場にいたタクシーと交渉したら周辺を観光しながら青森駅まで1台8000円で行ってくれるという。9時半に宿を後にした我々は、城ヶ倉大橋で眼下120mに展開する城ヶ倉渓谷の目も眩む絶景に驚嘆し、馬立場の雪中行軍遭難記念像や棟方志功記念館に立寄って、青森駅に11時過ぎに到着。運転手に教えてもらった駅近くの市場でお土産を物色し、市場内の海鮮食堂で昼食。 ホタテの刺身定食は新鮮そのもの。厚さ3cm以上もある貝柱は甘くて瑞々しく絶品だった。