玉原高原と尼ヶ禿山(1466m)
 
日 時:2005.6.11(土)
日 程:747レストラン玉原駐車場−830,845ブナ平−930玉原越え−950,1000トンネル入口−1025送電鉄塔−1053,1105尼ヶ禿山−1117,1530テント場−1700,1815駐車場−1850沼田IC

ルート断面図とルート図
尼ヶ禿山ルート図
尼ヶ禿山断面図
カシミール3Dにて作成しています

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今回は関東随一と言われる玉原高原のブナ林とそれに続く尼ヶ禿山を巡る山旅である。梅雨の走りの雨が予想されるが、それだけに人出は少なく、静かにブナの新緑に浸ることが出来るだろう。
 
オオカメノキ ブナ地蔵
 
ブナ林の新緑 ヤマタツナミソウ
 
玉原スキー場の奥にあるレストラン玉原(ガイドマップでは《センターハウス》となっている)の広い駐車場には我々の他1台のみ。昨夜は霧雨が降り続いていたが、今朝は雨も上がり雲の切れ目からわずかに日も差している。駐車場脇の森陰には薄汚れた雪が残っており、エゾハルゼミが賑やかに朝の合唱を始めた。

   駐車場蝦夷春蝉が木霊する

駐車場を後に一般車通行止めの舗装路を緩やかに下ると間もなく《野鳥案内板》があり、そこが《ブナ平》への入口だった。ハウチワカエデ、オオカメノキやウリハダカエデの花が咲いている。数分でキャンプ場への道を右に分け、《ブナ平700m 20分》の道標に従って左へ折れる。 徐々にブナが増えて来た。少し急坂を登ると緩やかな道には所々木道があり、遊歩道のようだ。下草はずっとクマザサ。シジュウカラがやけに忙しなく囀っている。浅い裂がある大きな葉のウリノキを初めて同定。背の低いこの木はよく見掛けるが今まで名前が判らなかった。 気温は19度とかなり蒸し暑い。大きなトチノキとホオノキが並んでいる。いずれも葉が巨大なこの2種が並んで立っているのは珍しい。葉の感じがよく似ているので別々に見たのでは違いが判り難いが、並んでいると鋸歯の有無や葉のつき方、樹皮などの相違点がはっきり判る。 ウグイスに続いてホトトギスの囀りが森の中に響く。ここのブナは50〜60年前に伐採した後再生されたものらしいが、伐採時に大きな木を残したらしく、若木に混じって樹齢数百年と思われる直径1m位の立派なブナが多くて自然林の雰囲気である。空は曇ってはいるが若葉が実に鮮やかだ。標柱がある立派なミズメという木があり。

   朝日差し緑滴る椈の森

8時30分、ブナ平到着。さすがに《関東一》を誇るだけあって、風格あるブナが林立する明るい森は瑞々しい新緑に溢れ、心が洗われるようだ。木道に座って朝食にする。 一瞬小雨がパラついたがすぐ止んだ。気温は17度と少し下がった。歩き出すとわずかに日が差して薄い影が出来る。ブナの実が無数に落ちているが今頃どうして落ちるのだろう?去年の秋に落ちたのが残っているとは思えないが。 またエゾハルゼミが合唱を始めた。葉裏が白いアスナロの幼木あり。《ブナ地蔵》との看板があった。云われてみればいくつかの小さなブナの切り株を苔が覆っていて地蔵のように見えないこともない。  散りかけのタムシバが咲いている。イタヤカエデ、クロモジ、リョウブなど図鑑を見なくても判るおなじみの木々が次々に登場するのは楽しい。玉原湿原への道を左に分けると平坦な道が終わり山道となった。ここからはクマザサがびっしりと道を覆っているせいでズボンが濡れてしまう。しかし、雨具のズボンを取り出すのも面倒だ。9時10分、立派な道標がある1302mの三角点を通過すると道は下り始めた。 足元にはモミジイチゴやシロバナエンレイソウ。カメラや三脚を担いだ二人の男性とすれ違う。展望もないのに何を撮影するのだろう?駐車場の1台はこの人たちのものだろう。紫色の小さな壺状の花が咲いているが名前が判らない。 (後で調べたらヤマタツナミソウだった。舌状花の上部は紫、下部は白に紫の斑点があり下部が長いのが特徴)

   椈林ひっそりと咲く立浪草
 
ハウチワカエデ 東電トンネル
 
T字路にぶつかり道標に従って右へ曲がるとすぐまたT字路になっており、 《尼ヶ禿山2.3km 1時間15分》の道標に従って右へ進む。ホオノキの薄いクリーム色の大きな花が一輪、新緑の海に浮かんでいる。急坂を登るとすぐ林道に出た。ここが《玉原越え》らしい。道標が壊れて倒れている。車がぶつかったのだろう。とうとう雨が降り出した。

   隈笹が足元濡らす玉原越え

傘を差して砂利道を少し登って下ると程もなく舗装路にぶつかった。右へ緩やかに登って行くと再びダートになった。道端にはタムシバの白い花やハウチワカエデの紅い花が満開だ。サワグルミやナナカマドも現れた。いつの間にか雨は上がっている。 10時前、林道の終点に着いた。ここは広場になっており、入口を鉄柵で塞いだトンネルがある。看板を見ると東京電力の管理下にあるようだ。入口の左に道標があり再び山道となる。少し下ってから小さな沢を渡ると、山腹を巻き気味に緩やかな登りとなった。 送電鉄塔を越えると、左下の方から人の声が段々近付いて来た。玉原湿原からの道との合流点に到着すると、丁度中高年の団体が着いた所だった。大勢の団体と一緒に歩くのは嫌なので早足で先行する。 「あれー!ピンクのオオカメノキの花があるよ」 「白しかないはずだけどこんなの見たことないね」  (帰宅して図鑑数種を確認したがオオカメノキにピンクの花が咲くとは書いてなかった。葉は確かにオオカメノキだったと思うがどういうことだろう?ヤマアジサイだったのかもしれないが) 刈り込んでないクマザサが続くのでズボンはもうビショビショだ。10時45分、頂上直下の分岐を通過。《山頂まで200m 5分》とある。その上で南面が大きく開けたが、ガスで何も見えない。風が涼しくて気持ちいい。10時53分、ピークに到着。三角点のある狭い山頂には《尼ヶ禿山1466m》の立派な標柱が寂しげに立っているだけだ。

   ムシカリの薄桃の花珍しき

   頂はガスに包まる尼ヶ峰

ここからは晴れていれば目の前に上州武尊が、そして眼下には玉原湖が広がっているはずなのに、今は乳白色のガスが立ち込めてすぐ下の斜面も見えない。仕方ないので写真だけ撮って出発する。ところが、ピークの先の道はチェーンで《関係者以外通行止め》となっていた。 おかしいと思ったがルートのはずなので無視してどんどん下る。急だが今までの道と違い、2m幅に刈り払いしてあるので歩き易い。しかし、気になったので念のため地図で確認すると、本来のルートは山頂から直下の分岐まで戻らねばならないことが判った。
 
ガスの山頂 ウリハダカエデ
 
急坂を一気に下ってしまったので登り返すのは大変である。山頂に戻ると先程の団体が着いていた。15人くらいだ。分岐まで下り右へ下る。余り人が入っていないらしく、びっしりとクマザサが生い茂っており益々ズボンが濡れる。10分程でやや広い道となった。 ここにもチェーンが張ってあり、《関係者以外立入禁止 東京電力巡視路》の看板が下がっている。さっき山頂から間違えて下った道はここにつながっているのだろう。刈り払いしてある巡視路を少し下ると道幅も広く平らな場所があったのでテントを張る。ビールに続いてワインで乾杯。また雨がパラパラと降り出したがテントの中は快適だ。キムチとベーコン炒め、韓国海苔、しおから、枝豆などつまみで結構腹が膨れる。午睡を楽しんで撤収。15時半、霧雨の中を歩き始める。傾斜は緩やかだが道がぬかるんで滑りやすい。 どうやら道を間違えたらしく、玉原湖へ下りるつもりが玉原越えの方へ戻ってしまい、さっき通った送電鉄塔に出た。

   霧雨が椈の若葉を洗いける

しばらく緩やかな斜面を下って行くと《朝日の森》と《玉原湿原》の分岐に出た。近い方の《朝日の森》方面へと進むと広い草原の向こうに2棟のロッジ風建物があった。これが《朝日の森》のようだ。もう夕暮れが迫って来たので先を急ぐ。 ロッジの脇を抜けると舗装路に出た。玉原湿原の入口辺りからわずかな登りになったが疲れた足には結構つらい。道脇に《ブナの湧き水》があり、竹のコップが置いてあった。 冷たくておいしい。少し元気を取り戻し、今朝通った《野鳥案内板》を通り過ぎると駐車場だった。土曜日だというのにセンターハウスは営業しておらず裏寂れた様子だ。もう17時。早く帰らないと遅くなる。着替えもせず、すぐにエンジンを掛けるがウンともスンとも云わない。 「???」 「えー!バッテリーがアウトだ」 15年運転しているがバッテリー上がりは初めてでガックリ来る。すぐJAFに連絡するが1時間以上掛かるという。こうなったら焦っても仕方ないので運転席で仮眠することにする。 18時過ぎ、大きな作業車が到着してケーブルを繋ぐと一発で掛かった。ヤレヤレ!助かった。携帯電話がなかったら恐ろしいことになる所だった。 「1時間はこのままエンジンを切らない方がいいですよ」 アドバイスに従って、沼田で食事をせず高坂SAまでノンストップで突っ走る。新緑の静かな山行は波乱の幕引きとなった。