早春の九鬼山(970m)

日  時:2005年3月19日(土)
天  気: 快晴
行  程:618鈴ヶ音峠−646,705840mピーク−720高指山−805,820 810m点−830 871m峰−835デポ地−852 914m峰−930,1000九鬼山−1042,1507デポ地−1612,1625高指山−1646,1715鈴ヶ音峠―1830大月IC

ルート断面図とルート図
九鬼山ルート図
 
九鬼山断面図
カシミール3Dにて作成しています

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「タララララー」 キツツキが木肌を叩く乾いた連続音が朝の静寂を破る。早朝の鈴ヶ音峠は雲一つない快晴で、南の空には菜畑山、今倉山、二十六夜山など道志の長い山並みが高く聳えている。3月半ばとあって気温は1度と低いが、風も無く穏やかな日和である。

   啄木鳥の 乾いた音が 木霊する

今回は猿橋から朝日小沢を経て鈴ヶ音峠まで車で入り、稜線伝いに九鬼山を目指すつもりで、人も少なく静かな山歩きが楽しめるはずだ。デビュー戦の高度計を710mに合わせ、道脇の道標に従って西へ向かう尾根道を歩き始める。2箇所ほど迷い易い分岐があったが、最初は右へ、2番目は左へ巻き気味に進むと稜線に戻った。 ガイドにはこのルートは藪っぽくルートファインディングが難しいとあったが、刈り払いしてあり歩き易い道である。ただ、道を塞ぐ倒木が放置されており、回り込む道が判然としない箇所が度々出てくるので注意が必要だ。 キツツキに呼応するようにシジュウカラも囀る。 今年は雪が多いので少しは残っているだろうとの予想に反し、ひとかけらの残雪もない。この道は稜線を忠実に辿っているので、歩き初めからずっと左手の冬木立の間から道志の山々が見えているのだが、あちらはここより標高が500m程高いので、北斜面にはかなり雪が残っている。 その長々とした山並みの右端には真っ白な富士山も頭を出している。右手にはアカマツやヒノキの植林が続くので展望は無く、時折り木々の間から滝子山、大蔵高丸、白谷ヶ丸、黒岳、雁ヶ腹摺山へと続く小金沢連嶺の山々がチラチラとのぞく程度である。
 
登山口 マンサクの花 伐採地
 
7時前、840mピークで朝食。来た方向を振り返ると、左肩にパラボラアンテナを載せた大桑山、その右奥に高畑山。前方には富士山が大きくなった。手前の杓子・鹿留山が大きく裾を広げて、富士の下半分を隠している。二十六夜山の右から御正体山が少し姿を現した。 7時10分、《桐木差山854m》の表示板を通過。気温は2度、日陰にはわずかに霜が残っているが、風はないのでそれ程寒くない。 冬用ニッカ−ではなくジャージにして丁度良かった。上着は山シャツの上にフリース、帽子は夏用、手袋は軍手で充分である。黄色い花びらが縮れたマンサクが数本あり。 7時20分、《高指山860m》の表示板を通過すると100m近い大下り。下り切るとヒノキ林の急登になった。気温は4度まで上がっている。左下に秋山村の集落が見える。相変わらずキツツキが木を叩く音が響く。稜線の右手が大きく開けると雁ヶ腹摺山がドーンと聳えている。 今度は左がヒノキ、右がコナラ、ウリカエデ、イヌシデなどの雑木林となった。一直線の急登を登り切った所で2本目を立てる。高度計が810mを差す辺りで左側に大きな伐採地が広がった。ヒノキを植えてあるが手入れが悪いのか、高さ1m程の幼木がほとんど枯れてしまっている。

伐採地脇の埃っぽい急登を喘ぎながら登る。8時半、871m峰と思われる小ピークを通過してしばらくカラマツ林を行くと、右下に宴会場に良さそうな平坦地があったのでザックをデポする。 しかし、空身で歩き始めること数分でもっと平らな日当たりもいい広場があった。 8時52分、914m峰を通過。小さな登降が続くと現在地が判らなくなるものだが、25000図と高度計があると判り易い。気温は8度まで上がっておりフリースを脱ぐ。 「ツツー、ツツー、ピーピー」 ヤマガラに似た囀りだがいつものリズムと違う。別の鳥だろうか?少し風が出てきた。 杓子山の左に御正体が大きく見え出した。ダンコウバイらしき黄色い蕾が今にも開かんばかり。シジュウカラらしい白と黒のツートンカラーの野鳥が番で遊ぶ明るい林に、大きなヤマザクラが1本聳えている。少し風が出て来た。

   風騒ぐ 早春の尾根 喘ぎ行く

  9時20分、杉山新道からのルートと合流して道も広くなった。 この合流点からは富士山の眺望が素晴らしい。右の方には三つ峠、本社ヶ丸、鶴ヶ鳥屋山が並び、更には真っ白な南アルプスもわずかに顔を覗かせている。間もなく九鬼神社からの道も合わせると、程もなく山梨百名山の標柱の立つ九鬼山山頂に到着した。
 
分岐点 富士山と杓子山 三つ峠方面
 
まだ9時半と早いせいか、北面が大きく開けた山頂には誰もいない。気温は10度まで上がって休んでいても寒くない。我々より少し遅れて単独の男性が到着した。今日初めて出会う人だ。この山は余り展望は良くないとの評価に反して、北面の展望は素晴らしい。 依然として雲一つない青空をバックに左端の滝子山から大谷ヶ丸、ハマイバ丸、大蔵高丸、湯ノ沢峠、白谷ヶ丸、黒岳、雁ヶ腹摺山そして楢ノ木尾根へと連なる長大な稜線、その奥には小金沢山や飛竜山が頭を出しており、さらに右には雲取山の姿も見える。 それらの手前には百蔵山や扇山、権現山などなど。春にしては靄もなく山並みもくっきりと遠望が利く。残念ながら南面はヒノキの植林に遮られてほとんど展望はない。充分、山座同定を楽しんで10時丁度に山頂を後にする。杉山新道分岐点に戻ると丁度老夫婦が登り着いた所だった。

10時25分、914m峰通過。そこから10分程で二度目に見つけた宴会場に到着。その下のデポ地に戻ってザックを回収し、テントを設営。缶ビールで乾杯。風もなく日当たりも良いのでテントの中は暖かい。食後の午睡を楽しみ、15時過ぎ撤収、鈴ヶ音峠へ向けて下り始める。 時折り、台風で倒れたらしいヒノキの倒木が道形を消している。15時15分、伐採地通過。空には雲が増えて来た。道志の山並みをじっくり眺めていたらさっきまで今倉山と思っていた山はどうも菜畑山らしい。赤鞍ヶ岳もはっきりしない。加入道山も見えているはずだが正確に同定出来ない。 登りでは気付かなかったカヤやモミの幼木、ネジキ、リョウブを見掛けた。長い登り返しがようやく終わって16時12分、高指山に到着。しばし休憩。前方の大桑山を夕陽が朱く染めている。さらに延々と小さな登り下りを繰り返して、16時46分、ようやく鈴ヶ音峠に帰着。 天気も展望も良く予想以上に人が少なくて静かな山を満喫出来た。