新緑の御正体山(1681m)
 
日 時:2004年5月22日(土)
天 気:くもり
行 程:805相模湖IC−920,930山伏峠−1018,1027石割山分岐−1035奥ノ岳−1113中ノ岳−1120,1125鞍部−1150前ノ岳−1222,12353本目−1252,1340御正体山−1402前ノ岳−1436,1440中ノ岳−1508,1520送電鉄塔−1532石割山分岐−1600山伏峠

ルート断面図とルート図
御正体山断面図 御正体山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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道の駅道志で休憩、登山口の山伏峠に着いたのは9時20分。トンネルを抜けてすぐ左の狭い駐車場はほぼ満杯状態。何とか最後のスペースに車を収めてホッとする。少し前に着いたらしい夫婦二人組が先に出発して行った。この奥は、廃業した山中湖高原ホテルの広い空き地なのだから、開放してくれれば30台位は停められるのに、鍵付きチェーンで封鎖してある。空はどんよりと曇っており、標高1100mにしてはかなり蒸し暑い。入り口を塞がれた旧道のトンネルの脇にはヤマツツジがわびしく咲き残っている。荒れ果てた高原ホテルの建物の前から山道に入る。曇り空でもブナやハウチワカエデ、ミズナラなどの新緑が目に染みる。ウグイスやホトトギス、シジュウカラなどが頻りに囀る。数分で菰釣山への分岐があり、左へ向かう。気温は18度。風が全くないのでかなり暑い。モミ、ホオノキ、カラマツ、ミツバツツジ、イタヤカエデ、ウリハダカエデなどの間を縫って、展望のない急な尾根道が続く。早くも汗が滴る。足元にはヒトリシズカやミズナラの幼木が目立つ。

ガスが濃くなる。低木に漏斗形で暗紅色のしおれたような花がたくさん咲いており、調べてみるとヤブウツギというらしい。初めての同定だが、葉に毛が多いので間違いないだろう。コアジサイやチゴユリの小さな若葉が可愛い。下生えはクマザサが続く。3回程アップダウンを繰り返すと、斜度が落ちて稜線が近付いた感じだ。しばらく進むと御正体山から石割山に連なる稜線に出たので1本立てる。《左石割山、右御正体山》の立派な道標あり。ミズナラの巨木が辺りを睥睨している。クマザサが密生しているせいか、数年前の晩秋に来た時より尾根が狭く感じる。
 
ブナの巨木 御正体山頂にて 鹿留山方面
 
緩やかな道には、葉がすっかり巨大化したヤブレガサやバイケイソウの群落が続き、中にトリカブトが混じる。数分で大きな標柱のある奥ノ岳(1371m)を通過。鮮やかな新緑溢れるこの辺りはブナが多くなり、歩き易い道が続く。わずかに下ると伐採地に出て目の前が大きく開け、送電鉄塔が現れた。東側には菰釣山の稜線が平行しているはずだが、すっかり雲に隠されており、背の高い鉄塔の上部も低く垂れ込めた雲の中に消えている。しかし、西の方は視界が利くので鹿留山方面が望める。鉄塔の先は緩やかに下っており、左はブナ林、右はヒノキの植林だ。今度は緩やかな登りになった。リョウブ、イヌシデ、モミ、シラビソなど登場。気温は15度まで下がっている。この辺り苔むした立派なブナが増え、ウグイスが囀りいい雰囲気である。11時過ぎ、中ノ岳(1411m)通過。ここにもさっきと同じ立派な標柱があるので判り易い。単独行の若者が休んでいた。少し先の鞍部で2本目を立てる。風があり涼しい。また単独の人が降りて来た。コハウチワカエデ、ミネカエデ、ヤマモミジなどの若葉が瑞々しい。オオシラビソがあったが、この高度では珍しい。シジュウカラがせわしなく囀る。ガスが切れ明るくなった。

   雨上がり ブナの若葉も 清々し

直径が5cm位ある白く大きな見慣れない花があり。花びらが内向きにカーブしてお椀型のきれいな花だ。早速調べてみるとヤマシャクヤクだった。これも初めての同定。「ツツー ツツー ピーピーピー?」ヤマガラのようだが一寸リズムが変だ。左はカラマツ林になった。淡い緑に心が和む。11時50分、前ノ岳(1471m)を通過。30m程下って再び急な登りとなる。これが最後の登りだが、高度差200mを一気に稼がねばならないので気合を入れる。またガスが流れて来た。色々な野鳥の声が途切れないのに、ほとんど同定出来ない。 一段と斜度が増してすごい急登になり、息が切れる。ミツバツツジの花がたくさん落ちているが、それ程痛んでおらず最近まで咲いていたようだ。またガスが切れて日が差して来た。ようやく傾斜が緩やかになる。頂上まで一気に歩こうかとも思ったが、まだ先は長そうなので一本立てることにする。12時20分過ぎ、おあつらえ向きの倒木に腰掛けて休憩。この山は立派なブナが多い。周りをゆっくり見渡すと、直径1m近いブナの巨木があちこちにある。ウダイカンバや太いシャラ、マムシグサなどが目に付く。この山域としては珍しく数本のヒメシャラあり。樹皮が赤茶色でツルツルしており、サルスベリにそっくりだ。5〜6人の中高年登山隊とすれ違う。

バイケイソウに覆い尽くされた斜面が徐々に平らになると、その先で森が切れ、一寸した広場になっていた。この平らな広場が御正体の山頂である。今、12時50分だから山伏峠を出発してから3時間20分掛かったことになるが、コースタイムは3時間25分なので上出来だ。我々の到着と同時に今朝山伏峠で先行した夫婦も降りてしまい、平坦な山頂には誰もいなくなった。周囲はミズナラなどの密な樹林に囲まれており、全く展望はない。 一角には《山梨百名山》を始めとしていくつもの山名表示が立てられ、三角点標柱も3つもあって雑然としている。山名表示など一つあれば十分なのに何故いくつも立てるのだろう?広場を避けて樹林の中にシートを広げる。ビールで乾杯。汗をかいた後の冷えたビールは堪えられない。時間の余裕がないので食事はおにぎりなどで簡単に済ませる。結局、山頂にいた1時間弱の間誰も来なかった。13時40分、軽くなったザックを背に元来た道を下り始める。緩やかで歩き易い道だ。その先は急斜面を一気に駆け下りる。14時過ぎ、前ノ岳を通過。ここは平坦な尾根道の途中であり、全くピークという感じがしない。右手奥に鹿留山のものらしい山裾が見え始めたが、山頂はガスの中だ。

14時35分、中ノ岳で小憩。シジュウカラやウグイスが囀る。雲が厚くなったと見え、辺りが薄暗くなった。右に送電線が走っている。雨が少しぱらついたが、すぐ止んだ。カラマツの芽吹きが瑞々しい。長いダラダラ登りが疲れた足に堪える。15時過ぎ、送電鉄塔着。鉄塔の上部さえ見えなかった今朝と違い、ガスが消えて展望が良い。東には菰釣山、西方に鹿留山その左奥に杓子山がすっきりと見える。一帯はふかふかの絨毯のような草原で、寝転ぶと気持ちよい。それにしても100m級の大鉄塔なのに、昭文社の地図にも2万5000図にも送電線の表記がないのはどうしてだろう。少し登り返すと奥ノ岳である。風が強くなった。

   若葉萌え 風騒ぐなり 御正体

バイケイソウの群落の中を下るとすぐに石割山分岐。ここから左に折れて稜線から外れ、山伏峠への下りとなる。1m程にヒョロヒョロと伸びたホオノキの幼木にアンバランスな大きな葉が付いている。ホトトギスが頻りに囀る。ヤブウツギがたくさん咲いているが、今日は花が少ないのでこの貧相な花でも充分目立つ。わずかな登り返しを交えて急な下りが続く。左下の斜面に10m位にすらりと伸びたホオノキの若木が数本目に付く。菰釣山分岐を過ぎると間もなく山中湖高原ホテルの屋根が見えた。天候には恵まれなかったものの、新緑溢れる静かな山を満喫出来て、素敵な山旅であった。