初秋の道志山塊/赤鞍ヶ岳(1299m)
 
日  時:2004年10月2日
天  気:快晴のち晴れ
行  程:630東京−725相模湖IC−800,900厳道峠駐車場−940,950御牧戸山−1055,1107ワラビタタキの手前鞍部−1200,1220ワラビタタキ−1310秋山峠−1340,1350赤鞍ヶ岳−1432,1438ヒノキ林−1520,1527 890m地点−1550林道−1605民宿大屋(泊)

ルート断面図とルート図
赤鞍ヶ岳ルート図
 
赤鞍ヶ岳断面図
カシミール3Dにて作成しています

枠のある写真をクリックすると拡大します

「あれー!どうしたのかな?」「もう8時半過ぎたのに何で来ないの?」「7時に海老名を出て1時間半も掛かる訳ないのに」「何度電話しても留守電だよ」「道を間違えたとしても遅すぎるね。事故ったのかな?」ここは17年の歳月を掛けて昭和63年に開通したという山梨県秋山村と道志村を結ぶ林道の最高点、標高780mの厳道峠である。今日は車2台でここに集合し、赤鞍ヶ岳まで縦走して竹之本へ下る計画なのだが、集合時間より1時間も早く着いた我々B車隊はいつまで経っても来ないA車を待ちくたびれていた。

当初の予定では、中央道の渋滞で我々B車の方が少し遅れるつもりでいたのだが、6時半に東京駅を出発した後、首都高も中央道も予想外に順調で渋滞ゼロ。1時間足らずで相模湖ICまで来てしまった。秋山村を抜け、小さな集落が点在する安寺沢沿いの林道をグングン登って行く。八王子辺りまではスモッグで霞んでいた空も今は雲一つなく晴れ渡り、抜けるような秋空が広がっている。
 
厳道峠 厳道峠からの富士山 大室山 御牧戸山
 
狭くてカーブの多い山道だが舗装はしっかりしているのでスイスイ走れる。秋とはいえまだ10月初めなので周囲の木々は緑濃く、色付く気配もない。 峠も近付いた頃、道の真ん中に止まっていた小さな黄色い鳥があわてて飛び立ち、波打つようにサインカーブを描きながら飛び去った。あの飛び方はキセキレイだろう。8時丁度に峠に到着。峠から道志側へ100m程下ると大きく展望が開け、富士山や大室山がくっきりと望める。A車への携帯電話は通じないし、することもないので、そこまで何度も往復して時間をつぶす。気温は21度とやや高目だが、湿気もなく爽やか。半袖Tシャツで丁度いい。

   秋の空 友待ちわびる 峠道

「いやー、お待たせ」そろそろ集合時間の9時になろうかという頃、A車隊のT氏がひょっこり現れた。一同、目が点!!!「えー!!何で?」「車はどうしたの?」「いやー、林道の途中まで来たら工事で通行止めになっていて、しょうがないから僕一人15分位走って来たんだよ」「他の人たちは?」「竹之本の民宿まで行ってそこから赤鞍ヶ岳を目指してるはず」「あの登りはきついけど大丈夫かなー?」「大丈夫でしょ」 対向車もあったし、この道が通行止めになっているとは思えないので、腑に落ちないが議論しても仕方ない。A車隊はコースタイム2時間15分の登りに3時間半位掛かるだろうから、12時半頃赤鞍ヶ岳に到着するはず。13時位までに着けば合流出来るだろう。こっちのコースタイムは3時間40分だから相当飛ばさないと間に合わない。とにかく急ごう。 車を残し、9時丁度に峠を後にする。すぐ上に送電鉄塔があり、大室山、桧洞丸そして富士山がスカッと晴れた青空に浮かんでいるのが見える。ヒノキとアカマツ林の急登は風もなく暑い。クリが道一杯に落ちている。実が入っていそうなのもあるが今は拾っている場合ではない。

   栗の毬 踏みしめ登る 道志道

今回はデジカメデビュー戦。O社製の防水タイプだ。これまでの一眼レフと違って胸ポケットに入れて歩けるので花を見かける度にシャッターを切る。白い菊(後で写真をじっくり調べたらシロヨメナと思われる)や黄色いアキノキリンソウが咲いている。20分で急登が終わり、コナラやダンコウバイなど落葉樹林帯のなだらかな登りとなる。 9時40分、1047mの御牧戸山に到着して一息いれる。コースタイムより5分早い。中々快調だ。平らな山頂は樹林に囲まれて展望はなく、NHKテレビの中継アンテナなどが林立している。ここからは平坦な稜線歩きとなったが、今年は台風が多いから大きなアカマツやミズナラなどが根こそぎ倒されており、道が塞がれたままなのでルートが判り難い。

   倒木が 道を塞ぎし 御牧戸山

「あれっ、何だ?」突然、大きな羽音がして何かが飛び去った。「かなり大きい鳥が飛んで行きましたよ」「キジだろうね」 長尾山(1107m)を10時20分に通過するとクロモジの林が広がった。コハウチワカエデやヤマモミジも混じる。しばらく進むと稜線の左はヒノキの植林、右はコナラ林となった。10時40分、右手が大きく開けて雲取山や三頭山など奥多摩方面の山並みが姿を現した。延々とヒノキの植林が続く。ここら辺りも道は荒れていて藪を掻き分けて進む。先頭を歩いているのでくもの巣がしょっちゅう引っ掛かる。11時前、1060mの鞍部で休憩。細茅ノ頭はいつの間にか通り過ぎたようだ。前方にワラビタタキと思われるピークが樹間から覗く。気温は20度。右手に再び大菩薩、雲取方面が見える。 この付近にも栗のイガがたくさん落ちている。何とも云えない淡い青紫色のリンドウが所々にひっそりと佇んでいる。トリカブトの群落あり、蒼い花がきれいだ。白い房状のきれいな花が点々と咲いていた。サラシナショウマというらしい。トリカブトと同じキンポウゲ科の花だが、若芽を茹でて水でさらすと食べられる所から名付けられたそうだ。幹がとぐろを巻いたようにねじれた樹あり。イヌシデか?長い間、強力なツルに巻かれたのだろう。これでよく枯れなかったものだ。
 
サラシナショウマ マムシグサの実 倉岳山方面 トリカブト
 
ホオノキの大きな葉が目に付く。1本のヤマウルシが紅く色付いている。右側がずっと開けた道となった。えらい急登だ。ピークに着いたのでワラビタタキかと思ったがまだ先のようだ。 しかし、このピークからの展望は素晴らしく今日一番である。大菩薩など小金沢連嶺の奥にかすかに奥秩父の山並みも見える。金峰、国師あたりだろう。黒岳から左に連なる稜線の左端には双耳峰の滝子山も見える。手前は倉岳山から細野山辺りだろう。ブナが増えて来て道はかなり下っている。下るに連れてワラビタタキのピークが大きくせり上がる。スジコみたいに粒がかたまったグロテスクな赤い実あり。マムシグサだとか。立派なブナが多くなる。下草がなくて明るい林だ。ほんの一部のブナだけが黄色く色付いている。

11時47分、大栗への分岐を通過。また下って急登。大きなドングリが落ちている。ロボット雨量計の横を過ぎて、背丈を越えるスズダケが密生している中へ突っ込む。笹を掻き分けて抜けるとワラビタタキの山頂だった。但し、山名表示はなく、ここも木々に囲まれて周辺の山は見えない。もう12時なので昼食にする。ここから赤鞍ヶ岳までコースタイムは55分である。「A車組はもう着いたかな?」「まだじゃない?」「多分12時半位に着く筈だから丁度いいかもしれないよ」「待っていてくれるかなー」雲が増えて来た。カラマツ、ブナ、リョウブ、コナラ、ミズナラ、シャラなどの林を抜けると、左が大きく開けて御正体、加入道山、大室山が見えた。しかし、富士山は雲の中だ。ミツバツツジが多い。気温は26度まで上がっており、暑くて汗びっしょりだ。両側は背丈までのスズダケが続く。シャラの赤い肌が美しい模様を描いている。

   急坂に 汗も噴き出す ブナ林

前方の赤鞍ヶ岳が大分近くなったので大声で叫んでみる。「おーい」反応があった。「A車隊みたいだね」少し下って登り返す。これが最後の急坂のはずだ。マンサクにコアジサイ、ハウチワカエデ、モミそれにサラシナショウマの白い花が目立つ。13時10分、秋山峠の裏で昼食中のA車隊を発見。「いやー!!どうもどうも」「お久し振りでーす」「すごい汗ですね。お疲れ様でした」「何時頃着きました?」「最初に道に迷って40分ロスしたので、今着いたばかりですよ」Tさんが説明してくれる。何はともあれ無事合流出来てよかった。少し休んでからピークまで空身でピストンする。ワイワイガヤガヤ5分程で赤鞍ヶ岳山頂。 ここも樹林に囲まれて展望はない。西には菜畑山へ向かうルートがあるのだが、誰も歩いていないようで獣道のようなかすかな踏み跡である。二つの山名表示板の前で記念写真を撮り、14時前、秋山峠を後にする。ここは笹が刈ってあれば遮るものがなく富士山が大きく見える場所なのだが、今は背丈を越すスズダケに覆われて全く展望がない。いきなり急な下り。ガマズミがきれいな赤い実を付けている。突然、Sさんが急斜面でバランスを崩して転倒。つかまった樹が折れたらしい。すぐ下を歩いていたK夫人も巻き込まれて倒れてしまったが、大事に至らずホッとする。ロープ場2箇所を通過。14時半、ヒノキ林で休憩。気温は20度。そよ風が爽やかだ。

クロモジ、ミズナラ、ダンコウバイなどの落葉樹林に変わった。柔らかな緑が目に優しい。羽状複葉で葉軸に翼が着いたヌルデを同定。これは初顔合わせである。また暗い杉林となりひたすら下る。下りでこれだけ長いのだからここの登りは大変だったろう。左はヒノキの森、右はコナラ林となった。15時20分、870m付近で休憩。22度。再びスギの植林。15時50分、林道に出た。加入道山をバックにススキの穂が揺れている。16時過ぎ、竹之本の民宿大屋に到着。直ちに、車回収に向かう。巌道峠は意外に遠く往復45分掛かった。
 
赤鞍ヶ岳と今倉山 赤鞍ヶ岳山頂にて ガマズミの実 赤鞍ヶ岳登山口
 
途中、どの道を通ったのか確認したら、本来の入口をかなり通り過ぎた別の道に《巌道峠入口》の標識があったので、そこへ入ってしまったことが判った。道標に従ったのだから道を間違えた訳ではない。何故林道入口に工事中通行止めの表示をしないのか?随分不親切だ。遠方から来る登山客など構っていられないということか? 新道を造っているらしいが、ちゃんとした舗装路があるのにどうして必要なのだろう?何とも腹立たしい。こんなに判りづらい道なら、今朝、林道入口まで迎えに来ればよかったと気付いたが後の祭り。まあ、ドラマチックな展開で印象深い山旅になったのだから良しとしよう。結局、両隊とも最初から最後まで誰にも遭わず、静かな初秋の山をたっぷり味わうことが出来た。