黄葉の小野岳(1383m)
 
日 時:2004年10月30日
行 程:30日 600東京−825白河IC−940,1020登山口駐車場−1055,1105送電鉄塔−1215,1258小野岳−1342送電鉄塔−1410,1415登山口


ルート断面図とルート図
小野岳断面図 小野岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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東北道を白河ICで降りコンビニで昼食を調達して羽鳥湖方面へと車を走らせる。ところが羽鳥湖から田島へ抜ける道が通行止めになっていて驚く。一瞬、途方に暮れたがどうやら抜け道があるらしい。羽鳥湖スキー場への道を少し進み、ペンション村やゴルフ場の間を抜けて案内板に従って右折すると、有料道路のように立派な舗装路が続いていた。 空は一面雲に覆われているが、それ程暗くはなくしばらく持ちそうだ。広々とした高原を下る道は展望良く、周囲の山々は紅葉に包まれロマンチックな雰囲気である。間もなく本来の国道118号に合流し、田島方面へと進む。大川を渡ってすぐ左折、続いて大内宿の大看板に従って右折。カーブの多い山道となる。大内宿はすっかり観光地と化しており、大きな駐車場も有料になっている。6年前に来た時はここから先は舗装されておらず工事中だったが、今では立派な道路になっている。

少し上にまた広い駐車場があった。登山口へつながる林道は右側にあるが、逆戻りする方向なので下から来ると見落としやすく、通り過ぎて気が付いた。 すぐUターンして林道に入る。車1台がやっとのダート道を進むと数分でさして広くもない原っぱに出た。詰めれば10台位は置けそうだ。先客は3台。林道はここが終点で、突き当りが登山口だ。ここの標高は約760m。くもりでわずかに青空がのぞいている。 気温は14度と歩くには丁度いい。二組の中年夫婦が相次いで現れ、先行して行った。下の駐車場に車を置いたのだろう。他のメンバーが揃ったので10時20分出発。予報では午後には雨ということだから、なるべく早く山頂に辿り着きたい。 6年前にはなかった立派な《小野岳登山口》との標柱が鬱蒼とした杉の森の入口に立っている。よく手入れされて歩き易い道である。傾斜は緩やか、荷が軽いし、足も揃っているのでピッチを速目にする。右手に小さな沢があるが水量多く、森の中に水音が大きく響く。
 
登山口 天望台 小野岳の紅葉
 
   杉林 沢音豊かに 響くなり

一旦、ホオノキ、ヤマモミジ、トチノキなどの落葉樹林になったが、すぐにまた杉の植林に入る。20分弱で最後の水場である小野の泉を通過。枯れ沢の右岸をしばらく進むと、道は沢から離れて左に折れ、鉄板で土留めした急な階段道となった。ようやく植林が終わり、明るい落葉樹林となる。11時前、尾根に出た。 ルートは右だが、少し左へ行くと開けた場所に送電鉄塔があるので1本立てる。《天望台》ということだがそれ程の展望はなく、文字通り天が望める程度。18度まで気温が上がった。結構汗をかいてしまう。ブナが増えて来た。ハウチワカエデやホオノキ、ミズナラ、コシアブラなど黄葉・紅葉が見頃で中々見事だ。 しかし、色付くより茶色に枯れている木も多い。去年歩いた志津倉山の黄金のブナ林が余りにも素晴らしかったので一寸見劣りするが、普通なら大感動する所だ。

小葉が5枚の掌状複葉で薄く黄葉した落葉を拾う。 「これはコシアブラ。白っぽい黄葉が特徴だけど、若葉の天婦羅はうまいよ」 左手が開けてはるか彼方に白く雪をかぶった山並みが見える。 「あれはどこかな?」 「飯豊山でしょう」 「どうかな?」 「去年の志津倉山からもあの方向に飯豊山が見えたからそうかな」 下には大内ダムにせき止められた大内沼も見える。11時半またT字路に突き当たった。《下郷線7号に至る》の標識がある。25000図に拠れば、標高1160m付近だろう。左は送電線巡視路のようだ。右の尾根を辿る。斜面の傾斜は緩やかになり、風格あるブナが多くなった。 この辺りの木々はほとんど葉を落としているので見通しが良くなる。1223m峰を過ぎると左前方に小野岳の姿が現れたが、まだかなり遠い。 「うわー、かなり下ってるよー」 左へ巻き気味に40m程下る。左手奥に大きな水面が日に当たって光っているのが見えた。猪苗代湖のようである。

   冬枯れの 木々の彼方に 猪苗代
 
小野岳山頂 山頂からの猪苗代湖 小野岳山頂にて 大和館
 
一旦登り返すと再び下る。サワラの幼木が群生していた。ヒノキの仲間で葉はそっくりだが、葉裏の気孔帯がX字状になっているので、Y字のヒノキとは簡単に見分けられる。斜度が緩やかになってさらにしばらく進むと、冬姿のダケカンバが数本寂しげに立つ山頂に辿り着いた。12時15分、登山口から2時間弱。まあまあのペースである。小さな祠の前に山名表示板があり山開き記念の看板がびっしり貼り付けてある。今年5月30日の山開きには252名登ったそうだ。 地元ではかなり人気のある山らしい。平坦な山頂は小広い草原になっており、ここからも猪苗代湖の湖面が光って見える。

   秋深く 頂に立つ 岳樺

南と西は樹林になっており展望は利かない。先行した二組の夫婦が昼食を摂っている。気温は11度とやや肌寒い。フリースを着込んで早速昼食。コンロでお茶を沸かす。とうとう小雨がぱらつき出した。13時前、下山開始。元来た道を軽快に下る。東面眼下には大川ダムの湖面がチラッと見える。雨が強くなったので雨具のズボンも穿き、ザックカバーを付ける。 紅葉は下から見上げるより上から俯瞰した方がきれいに見えるようで、登る時に見たより鮮やかな感じがする。天気が悪いせいだろうか?やはりブナ林の黄葉は素晴らしい。落葉が滑る。送電鉄塔辺りまで下ると雨はほとんど止んだ。杉林で雨具を脱ぐ。

   黄葉のトンネル下る椈の尾根

水場を通過すると10分程で駐車場に帰着した。大内宿の賑わいを抜け、国道118号を東へ向かう。温泉指南役の寺森が選んだ今宵の宿は二股温泉大和館である。ここには数軒の旅館があるが、中でも大和館は《秘湯の宿》の発祥らしい。 この宿は山間の急斜面に建てられているのでアプローチが難しい。狭い上に大変な急坂を慎重に下ったものの、客用駐車場は上の道路脇しかないと云われ、再び降り出した小雨の中、ずり下がりそうになりながら登り返す。上の駐車場も狭く、3台を収めるのに苦労する。 玄関からいきなり急な階段をどんどん下り、ずっと下に部屋が並んでいるというユニークな宿だ。温泉は更に下って谷底を流れる川沿いにあり、泉質は無色透明で硫黄臭はなく、露天風呂は川を挟んで両側にあった。中でも川向こうの湯はサワグルミなどの木々に囲まれた野趣溢れる岩風呂で雰囲気は最高だ。 大広間での夕食はきのこや山菜など、地元の食材中心の素朴なものだった。数組の客は中高年ばかりで我々は若い方だ。何となく周囲のグループと交流が始まり、最後には隣のグループとカラオケ合戦をやる羽目になっていた。静かな秘湯の夜は更けてゆく。