平滑沢から七ヶ岳(1636m)

日 時:2003年7月11日
天 気:くもり時々雨、風弱し
行 程:743登山口−810,825渡渉点−945,9551400m点手前−958平滑沢源頭−1100,1220七ヶ岳−1255平滑沢源頭−1400,1405渡渉点−1428,1440登山口

ルート断面図とルート図
七ヶ岳断面図 七ヶ岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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2年前の秋以来2度目の七ヶ岳である。前回は青空の下きらびやかな紅葉をたっぷり堪能出来たが、今回は梅雨のど真ん中。多少の雨は覚悟の上だが水量豊かな平滑沢はどんな表情を見せてくれるだろう。昨夜来の雨は夜が明けても降り止まず車の屋根を叩いている。小降りならまだしもこれでは歩き出す気になれない。7時を過ぎてようやく小雨になったので仕度を始める。7時半過ぎに章吾橋を後にする頃には雨は上がっていた。鴬がさえずりの練習をしているが沢音に掻き消されてよく聞こえない。気温は21度。クリ、トチノキ(前回はホオノキと思ったようだ)、ブナ、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、シラカバ、マンサク、ミズナラ等の自然林にホトトギスやカッコウの声が響く。 標高千米の高原の朝は実に気持ちいい。緩やかな道に陽が差して影が出来るようになった。これなら展望も期待出来る。シラカバの純林となり、足元は少しぬかるむ場所もある。

   木漏れ日に 若葉も踊る 白樺林

「七ヶ岳登山道」の道標がやたらに多い。オオカメノキ、サワグルミ、ミズナラ等の幼木が道沿いに点在。小さな沢を渡った所で朝食にする。直径2m近いトチノキの巨木あり。トチノキは巨木になるがこれだけ太い木は初めてだ。こんな大きな木を前回は見落していた。周囲の紅葉に目を奪われていたせいだろう。8時40分平滑沢に入る。梅雨だけあってかなり水量が多いので滑りやすく前回より時間が掛かる。しかし、久し振りの沢歩きは実に楽しい。トチノキの大木が多い。延々と滑が続く。傾斜の急な場所2ヶ所にロープが張ってある。折角止んでいたのに、また小雨が降り出した。

   若き日を 憶い出すなり 滑の沢

   常滑を 越えて愉しき 夏の沢

9時半近く本降りになったので雨具を着ける。9時半に大カツラのある場所に着いた。前回休んだ所だがその時はここが源頭だったのに、今日はずっと上流まで清らかな水が豊かに流れている。小降りになったので雨具を仕舞う。10時前、ようやく流れが消えた。すぐ先の大きなブナの樹の根元に「あと50分」との道標あり。オオカメノキやホオノキの花はまだつぼみだ。山腹を左へ巻くと薄日が差して来た。苔むした立派なブナが多くなり、岩や木の根につかまっての急登となる。ガスが切れて上がって行く。ダケカンバの巨木が現れた。葉がほとんど出ていないブナの大木あり。元気がないのか、今が芽吹きの季節なのか判らない。ヤマガラやホトトギスが囀り、再び陽が差す。背の低いサワラ、ナナカマド、シャクナゲ等が増えて来て森林限界が近いことを知らせてくれる。リョウブも多くなった。大きな岩にロープがぶら下げてある。10分程あえぐと再びロープあり。 ベニサラサドウダン(と思ったが帰宅して調べたらウラジロヨウラクのようだ)が可愛いピンクの花を付けている。ようやく森林限界を越えて急に見晴らしが良くなる。しかし残念ながら雲が多く周囲の山々はわずかしか見えない。ウスユキソウの花が岩陰に楚々とした姿を見せている。

   梅雨の雲 切れて山並み 現るる

頂上直下からの展望 ウラジロヨウラク 七ヶ岳山頂
 
傾斜が緩やかになり黒森沢コースとの分岐に到着。わずかに砂礫地をたどると1等三角点のある山頂に達した。11時丁度だった。会津百名山の標識あり。当然先客はなし。 無数の赤トンボが飛び交っている。イワツバメ、ミツバチ、ハエも飛んでいる。わずかに日光方面の山々が東の雲の間から顔を出しており、西には燧岳らしい姿の山が見えるがはっきりとは同定出来ない。あとは全て雲の中。気温は24度まで上がっている。シートを広げてビールで乾杯。おにぎりを頬張る。暑くも寒くもなく静かな山頂はトンボと我々だけの別世界。至福の時が流れる。12時20分撤収。急な下りを35分で平滑沢の源頭に着く。13時15分、1400m地点の大きなカツラを通過。

   蜻蛉舞う 頂静か 七ヶ岳

   手の甲の 蜻蛉見つめて 寂となり

13時半 ロープを張った滑滝。13時45分、再びロープ場。14時朝食を摂った沢で小憩。水がうまい。少し青空が広がり、緑輝くシラカバ林がまぶしい。広い道をゆっくり下り、14時半、登山口に帰着。ここには数台分の駐車スペースがあるのだが、他の車はない。最後まで誰にも遭わず、豊かな緑と清冽な沢歩きを満喫出来て素敵な山旅であった。