晩秋の三頭山(1531m)

日 時:2003年11月8日(土)
天 気:晴れのちくもり、風弱し。気温高い
行 程:715鶴峠−752,815鞍部−900,920見晴らし台−925,930デポ地−1050,1117三頭山−1215,1615デポ地−1630鞍部−1648,1700鶴峠

ルート断面図とルート図
三頭山断面図
 
三頭山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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秋空にうろこ雲が広がり、鶴峠を挟んで三頭山とは反対側の奈良倉山には薄っすらと朝霧が掛かり色付き始めたカラマツ林を流れて行く。時折、峠道をバイクや車が大きなカーブを描いて通り過ぎる。標高850mの鶴峠バス停前が登山口になっており、ヒノキの植林の中を歩き始める。かなりの急登だ。左右の木々からパラパラと朝露が落ちる。間もなく傾斜が緩やかになり尾根の右を巻いて行く。気温は12度もあり全然寒くない。植林が切れて自然林となる。カラマツがわずかに黄色に色付いているものの、ダンコウバイ、ハウチワカエデ、エンコウカエデ、ホオノキなどほとんど葉を落としてしまっている。森の中に朝日が差して来た。今度はスギの植林となりジグザグに登って行く。熊避けの鈴を鳴らして来た単独者に抜かれる。リョウブ、イタヤカエデ、ミツバツツジ、ウダイカンバなどの明るい林となって間もなく鞍部に出た所で朝食にする。繊細な感じのヒナウチワカエデが紅い葉を残している。目の前にミズナラの巨木、すぐ脇には太い枝を大きく広げた巨大モミがドーンと立っている。ここから道は右に折れて尾根の左を捲くように平坦に続いているが、岩や木の根もなくよく整備されて歩き易い。下生えもなくすっきり明るいブナの森がどこまでも広がっている。分厚い落葉の絨毯はフワフワで心地良い。

   小春日に 落葉の絨毯 踏みしめて

2年前に来た時ブナの新緑が輝くようで余りにも素晴らしかったので、黄葉もさぞやと期待して来たのだが、残念ながらほとんど落葉しており、所々ブナやハウチワカエデの枯れかかった黄色い葉が残っているのみ。1〜2週間遅かったようだ。高木がほとんど冬姿なので低木の黄葉が目に付く。長い葉柄の先に3出複葉が目立つのはタカノツメだ。冬芽の形が鷹の爪に似ているらしい。落葉も3枚セットのままなので判り易い。薄黄色に色付いたコアジサイもあちこちにある。イヌシデ、シャラ、リョウブ、ヤマモミジなどもすっかり葉を落としている。小焼山手前の右手が開けている場所で1本立てる。

薄雲が空を覆い、春のようにやや霞んでいるが坪山方面の山並みが良く見える。相変わらず道は稜線の左を捲くように細かい登降を繰り返しながら続いている。樹間から左手方向に雲取方面の山並みが望める。分岐のような場所があったが左の道は廃道らしく通行止めになっている。ここからやせ尾根の急登になり、右前方に三頭山が見えて来た。冬枯れの木々の間を柔らかな風が爽やかに吹き抜ける。鞍部状の所に幹周りが優に4m以上ある巨大ブナが現われた。朝抜いて行った単独の人がもう降りて来た。相変わらずリョウブやシャラが多い。それにしてもこの2種は樹皮がよく似ていて同定は微妙だ。ミズナラ、ミツバツツジ、ドウダンツツジなどの中に太いダケカンバが1本あった。この木が登場すればほぼ1500mまで登ったと思ってよい。

ブナの老木 坪山方面 三頭山山頂にて
 

少し青空が覗きそよ風が心地いい。小さなピークを幾つか超えると、ようやく人の声がして11時前、三頭山に到着。冬姿のブナ、ミズナラやリョウブに囲まれた広くて平坦な山頂にはベンチや山名表示や案内板がやたらにある。全てのベンチは塞がっており草原にシートを広げている人も多い。ざっと40人位はいるだろう。しかし少人数のパーティーが多いせいか騒ぐ人もなく皆静かに山を楽しんでいる。檜原都民の森から1時間も掛からないらしく手軽に登れるから人が多いようだ。少し休んでいる間にもひっきりなしに登って来る。気温は16度もあり晩秋の1500mの山頂とはとても思えないポカポカ陽気だ。北には雲取山から七ツ石山、鷹ノ巣山への稜線が続き、眼下に奥多摩湖が広がっている。

南側は権現山やずっと右の方に滝子山が見える程度で、正面に見えるはずの道志、丹沢方面や富士山などは霞の彼方だ。この山は南東に伸びる長大な笹尾根を始めとして四方にたくさんの尾根を広げており、従って登山ルートもたくさんある。これだけ色んなルートがあると道を間違える人もいるだろう。少し休んで記念写真を撮り、元来た道を下り始める。ほんの数秒で静寂が戻った。いつも通り心静かにのんびりと歩を進める。二度ばかり単独行の登山者とすれ違う。なだらかな尾根は分厚い落葉に埋め尽くされて茶色の絨毯を敷き詰めたようだ。期待した黄葉には間に合わなかったが十分に秋の風情を満喫出来て幸せだ。

青空と白い雲がまだら模様を描いている。風もなく気温は20度まで上がって暑い。番号が書いてある小さな巣箱があちこちの木に取り付けてあるが、人の背丈位の低い位置に据えてある。出入りする野鳥を観察しやすいようにとの配慮か、それとも単に取り付けの手間を省いただけなのか?それにしても今日はほとんど鳥の声がしない。快適な落葉の絨毯が延々と続くが、急斜面では滑り易いので注意が必要だ。また少し風が出て来た。実に爽やか。昼食と午睡を含む大休憩の後、小焼山を回り込み、歩き易い乾いた落葉道をどんどん飛ばし、鞍部は16時半に通過。秋の陽は早く、スギの植林に入るともう暗い。足早に駆け下りて鶴峠に着いたのは17時前だった。