霧雨降りしきる独鈷山《とっこさん》(1266m)
 
日 時:2002年4月21日(日)
天 気:雨
行 程:800霊泉寺温泉和泉屋−820登山口−1000稜線−1005,1018独鈷山−1125登山口

ルート断面図とルート図
 
独鈷山断面図 独鈷山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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今日は信州の鎌倉とも呼ばれる塩田平の南にある独鈷山に登る。独鈷は「とっこ」あるいは「どっこ」と読む。仏敵を滅ぼす仏具(銅または鉄製の両端の尖った短い棒。手に持って煩悩を打ち砕く意を表す)ということだから、この山も信仰の対象だったのであろう。松本の東20km、美ヶ原の北東10kmに位置する小さな岩峰である。8時に宿を後にする。国道254号に出るとすぐ左に「独鈷山登山口」という立派な標識があり、細い道に入る。「独鈷山開山祭」の横断幕の下をくぐり抜けると、すぐに砂利道となった。この分では随分人が多いだろう。畑の上には車が沢山停まっているので手前の脇道に駐車して、支度をする。歩き始めから雨具上下はうっとおしいが仕方ない。サクラの苗木が植えられた植林地の間を行くと大勢の人が集まってセレモニーが始まっている。 すぐに細い林道は終わり山道となる。御屋敷沢の右岸沿いの杉林を緩やかに登って行くと左に小さな鳥居があり、「山の神」と書いてある。右下には一枚岩のクリーム色をした岩盤の上を清冽な水が流れている。暗い林にヤマブキとタチツボスミレが目立つ。クロモジだろうか?細い株立ちした小木が大量にあり、雨に濡れて光る小さな若葉にはかすかな紅い縁取りがある。小枝の先を折るといい香りなので間違いないだろう。トラバース気味の山道は雨に濡れて滑り易く、何ヶ所かロープに頼る。沢を離れ急登となる。

霊泉寺の大ケヤキ ガスの山頂 麓の四阿
 
コナラ、ホオノキ、キブシ、ハウチワカエデなど新緑が瑞々しい。晴れていれば輝くばかりの新緑のトンネルになるのだろうが、雨の中の若葉も絵になる。黄色いラッパ状の小さな花の群落があり、ジロボウエンゴサクかと思ったが同じケシ科のミヤマキケマンだった。可憐なヒトリシズカもひっそりと咲いている。ブナの若葉にピンクの小さな吹流しのようなものが付いている。気になったので調べてみると托葉のようだ。長さ1.5cm程の托葉は褐色で開葉後まもなく落ちるそうだ。アブラチャンの小さな花が辺り一面に落ちている。

   霧雨に 若葉煙れり 独鈷山

斜度が落ちて稜線も近くなったようだ。この辺りまで高度が上がるとカラマツはまだ全くの冬姿である。10時に稜線に出た。晴れていればここから北アルプスが見えるそうだが今は全く展望なし。この稜線にはリョウブが多い。すぐに着いた狭い山頂はガスの中で、風が冷たい。気温は5度。形の良いアカマツが数本。小さな石の祠の脇にはアブラチャンが花を付けている。山頂からは北アルプスを始め、浅間山、美ヶ原、八ヶ岳なども近くに見えるはずだが、今日は雲の中で一面真っ白だ。

この頃には道がすっかりぬかるみ、泥んこの急斜面でずるずる滑ってマイッタマイッタ。今回の最大の収穫はブナの花を初めて見たこと。垂れ下がった枝の先端を手元に引き寄せてじっくり見てみると、若葉と一緒に緑色の小さな小さな雄花が可愛らしい。 ほんの一瞬しか咲いていないらしく何百本のブナのうち数本の極一部の枝だけに花が付いていた。(ブナの花は毎年は咲かないようである)杉林にシロバナエンレイソウ。針葉樹の葉の上にクリーム色の雄花が、もこもこと気味悪い位沢山付いている。図鑑を確認すると、どうやらハイイヌガヤのようである。国道から少し入った内村川の辺にある四阿で昼食にする。雨に煙る周囲の山里は梨の花や桜、ボケ、ヤマブキ、レンギョウなど一斉に咲き、カラマツの新緑もしっとりと春めいていた。

   春雨に 煙る山里 長閑なり


参考:和泉屋 1泊2食 12000円