雪降りしきる奈良倉山(1349m)
 
日 時:2002年2月10日(日)
天 気:雪
行 程:940長作−1057,1102尾根上−1130,11352本目−1200十文字峠−1215,12203本目−1250,1420奈良倉山−1440十文字峠−1520,1530シロモジ林−1545,1550四阿−1557長作

ルート断面図とルート図
 
奈良倉山断面図 奈良倉山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

この冬一番の寒波が来ているということで、風は無いが空はどんよりとした雪雲に覆われ、気温はかなり低い。小雪がちらちら舞っている。長作自然塾に車を置き、守重商店の脇を入ると奈良倉山への道標があった。この山は奥多摩の西南に位置し、大菩薩から東に長々と伸びる牛の寝通りの東端に当たる。鶴川を挟んで東隣は三頭山だ。期待を上回って、登山口からいきなり20cm位の積雪。雪は何度も融けたらしくガリガリに凍っているが、小さな沢沿いのトレースは明瞭だ。わさび田の脇の雪の中にはフキノトウが顔を出している。沢を離れて右に回りこむと雪が消え、笹林を抜けて尾根の上に出ると新しい四阿があった。道標も新しい。ここで自然塾から直上する道と合流している。

急な尾根にはコナラ、クリ、シラカバ、シロモジなどの冬木立が並んでいる。左に折れて杉の植林に入り、ジグザグを切って進む。所々雪が残っており、スギの間にヒノキの苗木が植えてある。細かい粉雪が段々強くなる。登るにつれて再び雪が増え、とうとう一面の銀世界になった。道の脇に高さ10m以上の立派なシャラが1本。幹の直径は40cm位あり、赤茶色の樹皮は鮮やかな斑模様を描いている。雪が深くなりヒノキ林に入ったが、間伐もしてないし下枝も伸び放題だ。密生して日が当たらないので、下の方の枝は皆枯れている。植林なのに藪こきのように枝を掻き分けながら進む。その上は対照的にきちんと枝打ちされた手入れの良い杉林だ。暗い森の中を左へ左へといつまでもトラバース気味に進む。いつのまにかトレースがなくなったので、その度に皆であちこち見渡して赤テープを探す。雪の中でルートファインディングしていると、冬山気分が盛り上がる。

ようやく道が折れ今度は右へトラバース。再びヒノキ林。しばらくすると、斜度が落ちて植林がやっと終わり、コナラやミズナラ、ウダイカンバなどの明るい雑木林が広がって、緩やかな尾根登りとなる。視界が開けたが、一面雪雲で周囲の山は全く見えない。粉雪が本降りになり、高度が上がるにつれて多少雪質は良くなったが、ブレイカブルクラストで足を乗せると表面がバリッと割れてドスンと落ちるのでトップはかなり疲れる。径15cm位の太いウリハダカエデあり。テンポの早いツツビーツツビーはジジュウカラか?しきりに囀っている。延々と続く尾根の傾斜がさらに落ちて、ほとんど平坦な雪原が広がった。さらに10分程進んで若干下ると鞍部になっており、小さな「十文字峠」という道標が木にくくりつけてあった。右には鶴峠へ向かう道が分かれており、左は佐野峠に至る道だ。 ツガの大木に挟まれてアセビの群落が雪に半分埋もれている。粉雪の勢いが増して来た。雪を被った枯葉を付けたままのイヌブナがあちこちに立っている。

犬椈の 枯れ葉に白き 雪帽子

雪の登りが続く 奈良倉山頂にて 奈良倉山頂にて
 
いつまでも緩やかな登りが続き、積雪は益々深くなる。カラマツが増えて来た。ようやく奈良倉山到着。二等三角点のある平らな広い山頂はカラマツなどに囲まれている。もちろん誰もいない。ここからも四囲の山々は雲に隠されて全く展望はない。なるべく降雪を避けてツガの下を踏み固めシートを広げる。いつものようにビールで乾杯したが、氷のように冷たい缶を持つ指が凍傷になりそうだ。マイナス5度以下だろう。降りしきる雪のお陰でシートは真っ白。いつものようにのんびりくつろげないのは残念。 足取りも軽く十文字峠まで20分で下りた。計画ではここから鶴峠へ下山の予定だったが、トレースが無い下りは上りよりはるかにルートを見失う可能性が高いし、時間も掛かりそうなので、来た道を戻ることにする。

深雪を 蹴散らし下る 奈良倉山

少しガスってきた。木切れを雪に差し込むと50cm位潜る。3時過ぎ、スギとヒノキの植林帯に入る。ようやく雪が止んで雲も切れ、少し青空が見えてきた。シロモジやクロモジの林で一休み。深雪の中をどんどん下ると四阿にたどり着いた。三頭山が目の前に聳えているが中腹から上半分は厚い雪雲の中だ。ここから直進してフィールドアスレチックの中を通り抜けると、長作自然塾はすぐだった。予想通り誰にも遭わず、トレースの無い深雪で久々に冬山気分をたっぷり味わえて楽しい山旅であった。