静寂の雪山/大沢山(1450m)
 
日 時:2002年2月16日(土)
天 気:快晴気温高く風なし。雪は下部10cm上部30cm
行 程:750稲村神社−805小鉄塔−835,50899m峰−920大鉄塔−950,10001059m峰の先−1040,551250m付近−1145,1540大沢山−1620,251059m峰の下−1640大鉄塔−1715小鉄塔−1722稲村神社

ルート断面図とルート図
 
大沢山断面図 大沢山ルート図
カシミール3Dにて作成しています


「結構冷えるね」ここは標高約700m。笹子の町外れ追分にある稲村神社前の道路には凍った雪が残っている。道脇に停めた車の中で迎えた朝はさすがに冷え込みが厳しい。車から出るとマイナス10度位の感じだ。スパッツを着けて境内のガリガリの雪を踏み、小さな道標に従って杉林に入るといきなりの急登である。すぐ尾根上に出る。中央道の車の音が周囲の山々に反響してうるさい。所々残る雪にはトレースが沢山あるものの、人の気配が全くない。

コナラにキツツキが止まっている。コゲラだろうか?アカゲラだろうか?ヒノキの実が無数に落ちている。モミ、アカマツ、シャラ。899m峰からは右上はるかに三角のおむすびのような大沢山が遠い。少し下り。硬い雪。コナラ、シャラ、ネジキ。雲が切れて周囲に朝日が当たり始めた。左に本社ヶ丸の稜線が巨大な屏風のように立ちはだかっている。 大送電鉄塔を過ぎると左はアカマツとヒノキ、右はコナラやイヌブナなど落葉樹林。斜面の雪は時々切れる。1週間でかなり融けたらしく、先週の奈良倉山より雪は少ない。1059m峰の辺りで2本目。振り返ると、アカマツの間から滝子山の端正な姿が望める。

滝子山 富士山 雪の登りが続く
 
日溜りの 雪尾根たどる 大沢山

蒼空に すっきり浮ぶ 滝子山

皮目が菱形の木。樹皮の図鑑を見るとヤマナラシのようだ。割とよく見掛けるがこれまで同定出来なかった。葉がわずかな風にも揺れてこすれる音がするので、この名があるらしい。葉のある時に来てみたいものだ。大きなブナの木。急登。ツガ、アカマツ、ネジキ、イヌシデ、コナラ、シロモジ、シャラ、リョウブなど樹種が豊富だ。雪の上に顔を出している木々を手繰り寄せ、新芽はどれくらい膨らんでいるか観察してみる。雪が深くなったが、トレースははっきりしておりそれ程疲れることは無い。高度が上がって北の稜線の向こうには大菩薩に続く小金沢連嶺が顔を出した。ミズナラ登場。左手の本社ヶ丸が大分低くなってきた。北には奥秩父の峰峰も見え始めた。シラカバ、ウリハダカエデやウダイカンバ。粉雪が激しく舞っていた先週と全く違い、陽射しがきつくて暑い。斜度が落ちてきた。ウサギと思われる糞や小便の跡がトレースの脇に点々としている。カラマツ林になり、雪は融けて柔らかくなってきた。日溜りの雪の一部が陽に照り映え、水滴となって少しずつ垂れている。穏やかな日溜りの中でそこだけきらきら動いて美しく、春の胎動を感じる。稜線の左に真っ白な富士山が現れた。最後の急登は結構長い。勢いよくステップを切る。

キックして 響く音色の 春山路

ようやく斜度が緩くなって平らな頂上に到着。もちろん誰もいない。予定よりかなり遅く、もう昼前だ。コナラやミズナラ、シャラなどの間から富士山や南アルプスが良く見える。雪をならしてテントを張る。コンビニで買った鶏鍋をつつきながら昨夜の残りのワインで乾杯。テントから出てみる。空は蒼く澄み渡り、明るい光に満ち溢れた雪面に立つと風も無く寒さは感じない。富士山や南アルプスの大景観を目の前にして気分爽快である。大休憩を切り上げて撤収し、雪の尾根を駆け下りる。アカマツ林を抜け、大鉄塔、小鉄塔を経て稲村神社に着く頃には冬の日は暮れようとしていた。