新緑とエゾハルゼミの黒川鶏冠山(1716m)
 
日 時:2001年6月9日(土)
行 程:655柳沢峠−735,745 樹林帯−810六本木峠−825三本木−840,850 横手山峠−940,950 黒川山−1005,1035 鶏冠山−1140,1355 横手山峠−1520柳沢峠

ルート断面図とルート図
 
黒川鶏冠山断面図
 
黒川鶏冠山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

柳沢峠の広い駐車場には8台程の車が停まっており、周囲の植込みにはヤマツツジが咲いている。レストハウスの脇から青梅街道を横切った所が登山口だ。薄雲りで無風、朝の空気は冷んやりして爽やかだ。ウグイスが沢山囀っており、クマザサに混じってヤマツツジが迎えてくれる。カラマツ、ミズナラ、ブナ、モミ等の混交林の道は朝露で湿っている。少し登るとすぐ平坦な遊歩道のような道になった。6月なので新緑は期待していなかったが、思いの外鮮やかだ。幹が分れた大きなブナが目を引く。オオカメノキの花はまだつぼみだ。この森は自然観察林になっており、道沿いの木の幹に名札が付けてある。ハウチワカエデ、ケヤマハンノキ、イタヤカエデ、ウラジロモミ、マユミ、ミズキ、コシアブラ、サワグルミ、キハダなどなど。ここは樹の種類も多いが、鳥も色々いて楽しい所だ。カッコウ、ホトトギス(キョッキョキョッキョ)、コガラ(チチチチチー)、シジュウカラ(ツピツピツピー)は同定出来た。

ダケカンバの巨木、コアジサイ、苔むしたイタヤカエデの巨木、リョウブ、ミズナラ、ハリギリの葉は巨大な手のひらのよう。尾根の左を捲きながら小石混じりの緩やかな道が続く。少しガスってきた。少し進むと観察林の分岐がある。右がルートだ。沢沿いなので道に苔むした岩が多い。サラサドウダンが道の真上に覆い被さって咲いていた。白地に紅色の更紗模様が入った1cm位の鐘型の小さな花がびっしりとぶら下がっていて判り易いが、遠目には目立たず地味な花である。前方が少し開けたが、真っ白で何も見えない。ガスってなければ黒川山や奥多摩の山々が見える筈だ。ようやく六本木峠を通過。ここからは下りになる。桧林に入ってガスが濃くなり、雲の中を歩いているようで幻想的だ。キョロロローという鳴き声。アカショウビンと言うそうだ。シジュウカラが忙しなく鳴いている。林道を横断する。三本木である。少し日が差して来て、エゾハルゼミが騒がしくなる。ハウチワカエデやミズナラの新緑が瑞々しい。鬱蒼とした桧林に囲まれて薄暗く全く展望の無い横手山峠に到着。エゾハルゼミが一段とボリュームを上げて大合唱だ。

蝦夷春蝉 歓迎するよに 大合唱

少し登りがきつくなる。ウリハダカエデに根曲りのダケカンバそして朱色のヤマツツジとピンクのミツバツツジが交互に咲いている。白っぽい滑らかな樹皮に「白いゴマ」のような小さな皮目があるシラビソが多くなった。チゴユリがクマザサの下につつましやかに咲いている。「展望台」との標識あり、道から左に外れてほんの少し登ると黒川山だった。展望台というもののシラビソを始め、ミズナラやハウチワカエデ、オオカメノキ、ナナカマド、アセビ等の新緑のトンネルで展望はない。レンゲツツジが1本だけあり、つぼみが開きかけている。なるほど名前の由来となった通り、つぼみがレンゲの花の形になっている。

黒川山頂 ブナの若葉 鶏冠山
 
尾根はやせてきて大きな岩がゴロゴロしている間を少したどると小さな社のある鶏冠山到着。岩が重なり合った小さなピークは南側が大きく開けていて、目の前に切れ落ちた岩稜は良く見えるが、ガスで遠くはみえない。サラサドウダンやミツバツツジが咲いている。ヒノキ、コメツガ、アセビそしてシャクナゲがピンクの咲き終わりの花を付けている。ポッポーとアオバズクが長閑に鳴く。薄い雲で濾過された柔らかな陽射しが心地よい。下り始めるのと入れ違いに、先生に引率された20人近い中学生と思しき一団が賑やかに上がって来た。岩場が終わるとすぐ分岐があり、どちらでも横手峠に行けるので、右のハンノキ尾根へ向かう道を選ぶ。沢沿いで余り踏まれておらず、今までの遊歩道と違って狭く木の根や岩が多い道となり、ようやく山らしくなった。

ホオノキ、ウリハダカエデ、葉柄が長くて赤いオガラバナなど確認しながら下る。ハンノキ尾根を落合へ下る道と分れて左へ折れ、横手山峠を目指して登り返す。クマザサの間にエンレイソウ。道のすぐ脇に直径1m30cm位の巨大なミズナラが苔むしていて王者の風格だ。こんな大きなミズナラは見たことがない。相変わらずエゾハルゼミが鳴いている。横手山峠に戻り着いた。辺りはヒノキやモミ、ハリギリ等の樹林帯で樹間からわずかに日が差している。ここからは元来た道を引き返す。軽快な足取りですぐに三本木の林道を越え、六本木峠辺りまで来ると鳥の声はなくなった。柳沢峠の駐車場に帰り着いたのは3時過ぎだった。素晴らしい新緑、ブナやミズナラ・ダケカンバ・イタヤカエデなどの巨木、エゾハルゼミと鳥の競演、サラサドウダン・ヤマツツジ・ミツバツツジなどの花、歩き易い道、少ない登山者、楽しさ溢れる山だった。