陽春の文台山(1199m)
 
日 時:2001年4月14日(土)
行 程: 805 八王子―857,901 大月―920,925 谷村町―945 登山口−1035,1050993m峰−1140,1325 文台山−1450,1500 935m峰−1600送電鉄塔−1617楽山公園−1645,1658 十日市場―1720,1738 大月―1820 高尾

ルート断面図とルート図
 
文台山断面図 文台山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

大月で乗り換えた電車は、予想に反してガラガラ。白い富士山が大きく姿を現した。右の方には三つ峠、本社ヶ丸、鶴ヶ鳥屋山の稜線が連なっている。富士急谷村町で下車した登山者はやはり我々だけ。タクシーで細野へ向かう。「地元ではお尻山と言うんですよ」運転手が言う通り、青空にほぼ同じ高さの丸い膨らみが二つ並んでいる。鹿島槍や谷川岳のようにピークが二つあれば双耳峰と言う所だが、この山は本当にお椀を伏せたような峰が隣り合っているので、「耳」ではなく「尻」というのがふさわしい。この山は「大野山」という別名も持っているが、地元の通称が一番ぴったりくる。姿通りの忘れられない渾名だ。タクシーは菅野川沿いの新緑溢れる山里を右に左にカーブを描きながら緩やかに上って行く。

文台山 文台山
 
登山口には切り出したばかりの杉が積まれており、その陰に「文台山へ」という導標があった。道は急だが、杉を引き摺った為に落葉混じりの腐葉土がきれいに均されていてえらく歩き易い。足跡は全く無い。導標に従って右の山道へ折れる。杉も赤松もきちんと枝打ちされて手入れがいい。間にヒノキの若木が植えてある。間もなく稜線に出た。反対側に道があるので、峠のようだ。白っぽいオオシマザクラが葉と共に開いている。植林が切れてウリハダカエデ、クロモジ、コナラ、ミズナラ、リョウブ、ブナなどの自然林になった。それぞれ小さな若葉を出していて辺りがうっすらと春めいている。 ウリハダカエデに総状の黄色い花が咲いていた。マメザクラあるいはチョウジザクラと思われる花の小さな桜も目につくが、桜の同定は難しく自信はない。明るいピンクのミツバツツジに蜜蜂が沢山群がっている。右が開けて急なやせ尾根を一登りすると993m峰だ。冬枯れの林に濃いピンクのムラサキヤシオが鮮やかだ。左奥の御正体の沢筋に雪が残っており、右手には三つ峠から本社ヶ丸そして鶴ヶ鳥屋山が大きく聳えている。

春告げる 三葉躑躅に 蜜蜂舞う

文台山 文台山
 
株分けして一面に大きく広がった見事なミツバツツジが一際目を引く。よく見ると小さな淡黄色のダンコウバイもあちこちに咲いている。地面にはミズナラやコナラのどんぐりがびっしりだ。高度が上がったせいか、この辺りの木々は冬姿のままだ。斜度が落ちて一段と落葉が分厚くなり、ようやく文台山ピークに着いたと思ったら手前の「お尻」だった。少し下って、わずかな登りで三角点のある山頂に到着。冬枯れのコナラやミズナラに囲まれてほとんど展望は利かないが、木の間越しに御正体山、右に鹿留山が望める。富士山は霞の彼方だ。 余程人が入っていないらしく落葉で隠された道を探しながら、尾崎山へと続く北西へ向かう尾根を一気に下る。かなりの急傾斜なのでリョウブやイヌシデ、ウリカエデなどの幹につかまりながら小走りに下って行く。右下の大きなコブシの木一杯に白い花が満開だ。チェーンソーのうなり声が近づいて広い伐採地に出た。切られたばかりのミズナラがあちこちに放置されている。100m程下の斜面では作業が続いている。ここを切り開いてヒノキでも植えるのだろうか?自然林の伐採は見るに忍びない。

文台山 文台山
 
振り返ると二十六夜山が目の前だ。山腹に林道を削り取った大きな傷痕があるのでそれと分る。北面には九鬼山、ずっと奥に雁ヶ腹摺、黒岳から湯の沢峠の稜線が霞んでいる。すぐに935m峰に着いたが、尾崎山はまだ遥か彼方だ。もう3時だし、登り返しもきつそうなので、まいったなーと思いながら辺りを見渡すと、右に明瞭な踏み跡がある。少し下って偵察すると、しっかりした道形が続いている。この道の方が早く下山出来そうなので、皆、藪こきに備えて軍手をして進む。 北面なので雪がわずかに残っている。ヒノキに混じって葉裏がXのサワラあり。大した薮も無く、延々と続いた急斜面がようやく緩やかになり、歩き易い道になった。樹間から都留の街並みが見え隠れしている。クロモジの若葉が目に鮮やかだ。ウグイスがしきりに囀る。送電鉄塔を越えると赤松林にヤマブキの黄色が目立つ。「左 楽山公園、右 鍛冶屋坂」の導標あり、左の道を選ぶ。ホオノキの大きな葉芽も初めて見た。さすがにホウノキの葉は新葉の時からでかい。楽山公園に着くとソメイヨシノやオオシマザクラがわずかに咲き残っていた。 「キブシだよ」Hさんが教えてくれたのは特徴ある黄色い花房を一杯ぶら下げた低木だった。都留文科大学のキャンパスの間を通り抜け、国道沿いに少し歩いて十日市場の駅に着いたのは5時前だった。静かな春を満喫して、気分良く大月へ向かう我々をお尻山が見送ってくれていた。

文台山 文台山