春の十二ヶ岳(1683m)と鬼ヶ岳(1738m)
 
日 時:2000年4月2日(日)
行 程:750大石―755,815文化洞トンネル−845,850 1本目−945長浜分岐−1010,1030 毛無山−1115,1120 七ヶ岳−1220,1235十二ヶ岳−1325,1425 金山−1455,1500 鬼ヶ岳−1520,1525 雪頭ヶ岳−1555,1600 ブナ原生林−1700根場堰堤― 1710文化洞トンネル

ルート断面図とルート図
 
十二ヶ岳断面図
 
十二ヶ岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

8時前に河口湖畔の民宿大石荘を後にする。数分で文化洞トンネル手前の駐車場に到着。ここからI車を下山口の根場へ回送する。M車を駐車場に残して、予定より少し早く出発。入口をコンクリートで塞がれた旧道のトンネルの横を通って、ルートは新道のトンネルの真上を横切っている。5分ほどで尾根道に出た。白い気孔帯がくっきりとY字型になっているヒノキと樹皮が赤いアカマツの植林にコナラ、イヌシデ、リョウブ、ウリカエデなどが混じる。

ダンコウバイの細い枝に可愛い黄色の花が塊って咲いている。まもなく忠魂碑と石仏が並べてある広場に出た。ジグザグでなく直登なのでかなり急勾配の単調な尾根道が続く。アカマツはきちんと枝打ちされてほとんどの木は真っ直ぐ伸びているが、中にはひねくれて幹を大きくくねらせた奴もいる。どんどん高度を上げて行くとカラマツの林に変わる。この辺りからは両サイドに湖が見える。右下に河口湖、左下に西湖。そして後ろを振返ると富士山が段々大きくそびえてくる。シジュウカラが盛んに囀る中、四等三角点のあるミネ山を通過。植林帯が終わってクリ、クヌギ、カシワ、ウダイカンバ、ツガ、コメツガ、モミ、ウラジロモミなどが次々に現われる。カシワは枯れ葉を付けたままだ。足元には丈の低い熊笹が広がっている。

長浜への分岐を分けるとカヤトの原に変わって大展望が展開した。正面にはこれから辿る毛無山、左手に十二ヶ岳のギザギザの稜線。振返ると、やや食傷気味だが富士山が圧倒的ボリュームで南の空を画しており、河口湖・西湖はもちろん山中湖や精進湖も見える。斜度が落ちてようやく毛無山にたどり着く。相変わらず風は無く、天気は薄曇り。展望は良い。ここから左に折れていよいよ十二ヶ岳への岩稜帯である。この山はシャラ(ナツツバキ)が多い。中に随分太くて大きいのがある。普通シャラもリョウブも直径10cm以下だが、これは20cm位ある。他にアセビ、コメツガ、ウラジロモミ、ブナ、ウダイカンバ、ウリハダカエデ、ミズナラなどが目立つ。小さなピークが次々現われ、上り下りが忙しい。ピーク毎に「一ヶ岳」「二ヶ岳」と表示がしてあり判り易い。それほどの岩場はなく、順調にピークをクリアして「七ヶ岳」で一本立てる。コメツガの巨木あり。

雲が厚くなり、北寄りの風が出て気温が下がってきた。しかし、富士山には雲が掛からず、ずっと見えている。「九ヶ岳」「十ヶ岳」はピークの北側を巻くが、この辺りで先行パーティーが戻ってきた。すごい岩場で女性がこわくなってあきらめたそうだ。「へーそんなにすごいのか」と期待する。所々雪が凍っているので慎重に歩を進めて行くと、ようやく核心部のキレットの下りに差掛った。斜度45度位のクーロアール状の土の斜面に太いロープが何本も張ってある。最下点の吊り橋まで40m以上ありそうだ。ホールドになる岩がほとんどなく、ロープに頼らざるを得ない上、凍った雪もあるので結構緊張させられる。初心者だけではとても無理だろう。先程のパーティーが引き返したのは正解だ。

最後の3m程がかぶり気味でいやらしい。先頭のHさんは固い雪の上を左にトラバースしたが、このトラバースもホールドがなく、外傾気味なのでかなりやばそうだ。一寸迷った末、「真っ直ぐ下りる方がいいよ」とのHさんのアドバイスに従う。最下点に降り立つと「吊り橋」がある。ガイドブックに「キレットにかかる吊り橋」とあり、稜線上に吊り橋があるなんてどんな状況か想像出来なかったが、実際見てみると「なるほど」と言う感じ。両サイドがはるか下まで切れ落ちている上、キレット最下点までは手前側も向こう側も高さ5m位の垂直の岩壁になっている。吊り橋の長さは10m位。2本のがっちりしたワイヤーロープに沢山のアルミの桟がぶら下げてあり、その上にステンレスの薄い板が2枚張ってある。一人づつワイヤーロープにつかまってステンレスの板を歩くのだが結構揺れる。それにしても「稜線上の吊り橋」なんて初めてだ。

吊り橋を渡ると鉄梯子を伝って急な岩場を登る。更にロープや鎖を張った階段状の岩場が次々に現われ、木の根や岩角をつかんでのスリリングな岩稜歩きが延々と続く。足許はスパッと切れており、気を抜けない。ようやく普通の山道になり、桑留尾からの道が左から合流すると何とか無事十二ヶ岳ピークに到着。軽く腹ごしらえをして先を急ぐ。金山への下りもロープや鎖を張った岩尾根の急下降がずっと続いている。やがて熊笹の原となり、1時を過ぎて腹も減ったので宴会場を探しながら歩く。大石からの道と合流すると間もなく金山に着いた。樹林に囲まれた展望の無い平坦なピークである。比較的風も当らないのでここで昼食を済ませ鬼ヶ岳へ向かう。

一旦下って登り返す。かなり遠くに見えたがコースタイム通り30分程で、鬼の角のような岩が突き出た鬼ヶ岳に到着。ここは展望が良く、北に奥秩父の金峰、国師、北奥千丈岳が望める。霞んではいるが、西方遥か彼方に白峰三山と塩見岳が白く輝いている。鬼ヶ岳から樹林を少し下ると、雪頭ヶ岳のカヤトの原に出た。ここからは富士山と西湖の大パノラマが迫力満点で、皆感嘆の声を上げている。急斜面をどんどん下るとブナの原生林となる。風格のある巨木が多いが、同根で大きな2本の幹が抱き合うように絡まった不思議な形のブナもある。イヌシデ、ミズナラ、リョウブ、シャラなどもかなり大きな木が目に付く。カラマツの植林となり、再びシジュウカラが鳴いている。斜度が落ちて林道も近そうなので、車の準備の為先行する。ヒノキ、アカマツ、杉と植林の樹種が変わる中を小走りに通り抜ける。途中涸れ沢を渉り、薄暗い杉の林を進むとようやく土砂でほぼ埋まった堰堤に到着。ここから林道をわずかに辿ると車をデポしたキャンプ場だ。前回に続いて岩稜歩きの山だったが、二子山より岩場が大きく距離も長くて厳しく、中々面白い山だった。