新緑の滝子山(1620m)
 
日 時:1999年5月8日(土)
天 気:晴のち曇り。初夏の陽気。湿度が低くさわやか。風はほとんどなし。
行 程:820 登山口―900,905 切石―1000,1005 造林小屋―1040大谷ヶ丸分岐―1115,1215 滝子山―1235,1340大谷ヶ丸分岐―1405造林小屋―1450,1455 平ッ沢丸木橋―1520登山口

ルート断面図とルート図
滝子山断面図 滝子山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

一昨年4月、昨年11月に続き3度目の滝子山である。紅葉が見事だったので、新緑特にカラマツ独特の緑を期待しての山旅だ。ねらい通り連休直後で空いている中央高速を快調に飛ばし、笹子駅から歩く登山者を何人も追越して林道終点に降り立つ。駐車スペースにはすでに数台の車が停めてある。今日は前回より人が多そうである。風も無くかなり暑い。歩き始めてすぐ大鹿沢を渡り、送電線に沿って左岸を高巻いて行く。桧の植林にヤマブキの鮮やかな黄色が目立つ。キジムシロ、タチツボスミレ、ヒトリシズカもある。

送電線から離れて右に折れ、平ッ沢左岸の高巻道をたどるとブナやカエデの若葉が目に飛び込んで来る。エノキやトチノキの巨木が林立しているがこれらはまだほとんど芽吹いていない。クヌギやコナラも葉が小さい。ホオノキには大き目の葉が沢山繁っているが、今の時期はまだ巨大化していない。良く整備された歩きやすい道なので花と木の図鑑と首っ引きで上下左右をキョロキョロしながらゆっくり歩を進める。他の登山者にどんどん抜かれるが気にならない。昨秋から本格的に樹木の同定を始めたが、冬枯れの間、樹皮と樹形だけでは判定が難しく四苦八苦してきた。これからの季節は葉と花が加わるので判別しやすくなるはずだ。葉を見るだけで瞬時に同定できるようになりたいものである。水量豊かな平ッ沢を丸木橋で渡り、再び暗い桧の植林帯を進むと切石である。平ッ沢右岸をゆるやかに登って行く。

白いニリンソウ、奇怪なマムシグサ、大きな葉が3枚輪生している中心に3枚の小さな白い花びらを付けたシロバナエンレイソウなどが足元を彩っている。キジムシロ、タチツボスミレもずっとついてくる。左へ高巻き、桧の植林帯を抜けると左斜面全体にブナ林の新緑が一気に展開し、黄緑色の若葉が陽光にきらめいている。植林帯が切れる辺りに風格のあるエノキとホオノキの巨木が並んで立っていた。エノキはケヤキと同様、樹形で判別できる数少ない樹種だ。右へ回り込んで再び平ッ沢の沢身に近づく。ロープを張った斜面をトラバースして行く。水量が多いので滑滝が見事である。土筆が顔を出す崩壊地を過ぎるとカラマツの植林が左右の斜面に広がってくる。

期待したカラマツの新緑は時期的に一寸早く、葉が小さいがやはり雰囲気が良く、山全体が明るく独特の緑色に煙っている。絵心があればスケッチしたい所である。沢に沿って右へ折れ、しばらく進むと造林小屋だ。小屋の裏で2本目を立てる。西長窪沢の丸木橋を渡り、再び右へ大きく回り込んでゆるやかな斜面を行く。右手(東面)に滝子山が大きくそびえている。日当りが良い斜面なのでキジムシロとタチツボスミレが交互に群落を作って咲き競っている。シャラノキ、ウダイカンバ、イヌシデ、リョウブ、ウリハダカエデ、クリなど落葉樹が次々現れる。この山は花も多いが樹種も豊かで、知らない木がいくらでも出て来る。

鳥も色々囀っているが情けないことに鶯しかわからない。熊笹の緩い斜面を登りきると大谷ヶ丸への作業道の分岐である。「滝子山ブナ・ミズナラ樹林帯」の看板あり。ミズナラが多くなる。左(北面)にカラマツの淡い新緑に覆われた大谷ヶ丸が望める。高度が上がるにつれ、ブナ・カラマツ・ミズナラ等木々の若葉も小さく、少なくなる。東南方向へしばらく進むと大谷ヶ丸からの稜線に合流して右へ折れる。「白峯神社」という小さな祠を過ぎ、ブナやカラマツの若木の間を縫って急斜面をゆっくり登るとピークに飛び出した。

山頂の先客は意外に少なく数名のみ。久々に持参したコンロで焼いたソーセージをつまみにワインで乾杯。南面に五合目まで雪をかぶった富士山が霞んでいる。北面には大谷ヶ丸に続く小金沢連嶺がかすかに見えるが、他はほとんど霞んでしまっている。小さな山頂広場を囲むのは滑らかな樹皮の株立ちした若木である。ブナに似ているがブナは株立ちするか?葉のある時期に来て確認したい。ゆっくり食後の紅茶を楽しんだ後、随分人数が増えた山頂を後に往路を下り始める。いつのまにか富士山は見えなくなっている。大谷ヶ丸分岐付近で熊笹の中に分け入り大休止。シートを広げて横になる。熊笹を揺らす風が快い。明るい陽光の中、至福の時が流れる。

造林小屋付近の東長窪沢で紫色のハシリドコロやモミジイチゴ(白く下向きに咲く)を発見。平ッ沢の下りでは山菜取りをしている人が何人もいた。地元の人だろうか?今回期待した新緑はカラマツ・ブナ・ハウチワカエデなど見事だったが、その他の落葉樹、特に高度が高い所の木はほとんど葉を付けておらず、盛りには少し早すぎたようだ。5月下旬から6月初めが良さそうである。