春浅き夜叉神峠〜高谷山(1842m)
 
日 時:1999年4月17日
天 気:高曇り。展望あまり良くない。気温高く風弱し。
行 程: 1010桃の木温泉−夜叉神峠入口−1145,1225夜叉神峠−1250,1300 高谷山−1325,1330 桧尾峠−1400,1408 稜線1本目−1446,1455 稜線2本目−1530桃の木温泉

ルート断面図とルート図
 
高谷山断面図
 
高谷山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

初夏の陽気の中、立派な「夜叉神峠入口」の表示板を後にTシャツで歩き出す。風が無いこともあるが、4月中旬で高度1400mにしては随分暑い。皇太子が歩いたとかで整備が良く、並んで歩ける道幅で斜度もないので、散歩気分でゆっくり足を進める。周囲は明るい林でカラマツ、ミズナラ、ブナがほとんどだ。櫛形山の長大な稜線が南の空を画している。稜線に出た所で北の展望が開けた。熊笹が増えて益々斜度が落ち、右へ大きく回り込んだら峠だった。少し右へ登って夜叉神峠小屋の前の広場で大休止。

小屋はまだ営業していない。曇っていて迫力はないが、東の空いっぱいに白峯三山の雄姿が迫る。左から農鳥、間ノ岳、北岳。さすがに真っ白である。かつてたどったバットレス中央稜には雪が付かず黒々している。一旦下って高谷山への登りとなる。多少、斜度が増して山らしくなる。ダケカンバに混じり針葉樹が多くなった。葉の裏を見てウラジロモミとコメツガ、オオシラビソを何とか同定する。ウラジロモミは葉の裏にはっきりした白い気孔帯が二本あるのが特徴だが、枝振りも十字になっていて分かりやすい。コメツガは葉が小さく長さ4〜12mm、幅1.5mmでツガより高所に生える。30分弱で本日の最高点の高谷山着。

北岳の右に、夜叉神峠からは見えなかった甲斐駒が見える。仙丈は北岳に隠れている。ワイワイ騒ぎながら北岳をバックに集合写真を撮り、いよいよ急な下りに掛かる。地図によれば桃の木温泉まで高度差約1000m。相当急な下りとは思っていたが想像以上にハードだった。出だしが背より高い熊笹なので、軍手をして頭を突っ込んだがあっけなく抜けてしまい、後は猛烈に急な下りとなった。夜叉神峠辺りとは打って変わり、人がほとんど入っていない感じだ。枯れ葉が大量に積もって踏み跡がない。左右がかなり切れ落ちたやせ尾根を慎重に下ると、桧尾峠である。この辺りウラジロモミとコメツガの若木が多い。

やや斜度が緩くなりほっとしたのもつかの間、再び厳しい急斜面に突入。尾根は広くなったが、ガレており初心者には一寸難しい状態である。人数が多いので頻繁に小さな落石が起きる。休憩するにも座る場所もない急斜面が延々と続く。シラカバが寂しそうにぽつんと1本立っている。下るにつれてシャラ、リョウブ、ウダイカンバ、アカマツ、イヌシデ、イヌブナ、ウリカエデ、ウリハダカエデ等樹種が増える。葉が出るより先に花が咲くミツバツツジが目に付く。

いつまでも続くガレの急斜面に皆嫌気が差して来る。枯れ葉で埋まってルートがはっきりしない。初心者がいるのでなるべく歩きやすいルート取りをしたいが、滑りやすい崖っプチに出てしまい時間が掛かる。目の下にようやく桃の木温泉の屋根が見えてきたが、斜度がきつくてペースを上げられない。点々とピンクのミツバツツジが咲いている。桧の植林帯に入り斜度が落ちてしばらく行くと桃の木温泉裏のフェンスにたどり着いた。靴がほこりまみれで真っ白だ。

追記:後で聞いたらここは山菜取りの山で、今はシーズン前なので誰も入らないそうである。道理で踏み跡がないはずだ。夜叉神峠の名前の由来となったヤシャブシは、以前は峠の辺りに林を為していたらしいが今では伐り尽くされており、芦安から夜叉神トンネルへの林道脇に少しだけあった。葉の無い木に6cm位の黄緑色の雄花が毛虫のように沢山ぶらさがっているので車の中からもすぐにそれと判る。雄花がなければ判別できないが。この木は細工物や床柱に使われたり、果実の粉は昭和の初めまでお歯黒に使われたそうである。

宿 泊:桃の木温泉別館山和荘(1泊2食¥13000)立派な宿だった