黄葉と藪こきの笹子雁ヶ腹摺山(1357m)
 
日 時:1999年11月23日(火)
天 気:曇り。無風。気温高し。
行 程:820登山口(墓地)−855,900尾根−915 1番鉄塔−935 4番鉄塔−950,1020甲州街道分岐−11109番鉄塔−1130,1135 大鉄塔−1150,1215 雁ヶ腹摺山−1250,14559番鉄塔の下−1545,15553番鉄塔の下−1610,1620登山口

ルート断面図とルート図
笹子雁ヶ腹摺山断面図 笹子雁ヶ腹摺山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

渋滞もなく快適な中央高速を勝沼ICで降り、曇り空の下、国道20号を笹子方面へ4km程戻る。中央高速を3回くぐって左に折れるとすぐガイドブックにある墓地が見つかった。これから目指すのは笹子雁ヶ腹摺山である。中央線沿線の山として比較的ポピュラーな山だが、今日は送電鉄塔を目印に歩く地図にないコースなので人は少ないはずだ。ガイドブックによれば「墓地の右脇の道」とあるが左にしか道はない。迷った末、それをたどることにする。急坂の細い舗装路を10分程上ったが、尾根筋への道が判らない。おかしいなと思いながら歩いていると、道は山裾を右へ捲くように下り始めた。これでは尾根から遠くなるばかりである。どうも道が違うらしい。何しろ道標は一つもないルートなので、登り口を間違えては話にならない。戻りながら山側にそれらしい踏み跡がないか探す。墓地が見える辺りまで下った時、道の擁壁の階段の先にかすかな踏み跡を発見。全く頼りなげなけもの道という感じだが、尾根の方向と一致しているのでこれを進むことにする。

先日の坪山と同様に登り口が分かり難い山である。ほとんど人が入っていないらしく、踏み跡は消えかかっているので、藪をかき分けながら慎重にルートを選んでゆっくり進む。パズルを解くようで中々面白い。右に左に踏み跡を探しながら10分程潅木をかき分けて行くと、ようやく明瞭な尾根道に出た。落ち葉がびっしりと積もっていて歩き易い道である。並んで歩ける散歩道のようだ。ダンコウバイやコナラの黄葉が見事である。青空でないのが残念だが、時期的に紅葉は期待していなかっただけに得した気分になる。人の気配が全くない尾根道を、1本・2本と送電鉄塔を数えながら上って行く。ヒノキやカラマツの植林がウリカエデ、ウリハダカエデ、ミツバツツジ、リョウブ、クロモジ、コアジサイ、ミズナラなどの雑木林に変わって来る。カラマツもかなり黄葉している。4本目の鉄塔を過ぎ、ゆるやかな尾根道をたどっていくと甲州街道分岐に到着。右下の方、木の間越に旧街道が見える。

尾根道が段々やせて斜度が増して来る。登るにつれて眺望も良くなり、右手(西側)に御坂山塊、その奥に真っ白な富士山が頭を出している。左手には先月登った小金沢連嶺が長々と連なっている。曇りで見えないとあきらめていた南アルプスや八ヶ岳も見える。30分程登ると7本目の鉄塔があり。そのあと5分毎に8本目、9本目を通過。9本目の鉄塔を過ぎるとすぐ右から来る登山道と合流した。笹子峠からの正規のルートである。ここからは他のパーティーもいるだろう。笹子雁ヶ腹摺山の主稜線の右側を捲くようにゆるやかに登って行く。斜度もなく非常に歩き易い道だ。この辺りまで来ると木々は皆、葉を落してすっかり冬支度をしてしまっている。ダンコウバイだけが黄色の葉を付けているのがえらく目立つ。単独の人に追いつかれた。新設の巨大送電鉄塔で一息入れ、最後の急登に取付く。木の根に掴まってゆっくり足を進めると、頂上から人の声が近づいて来た。かなり大勢いるようだと思ったら、ひょっこりピークに飛び出した。

狭い山頂は20人以上の中高年登山者で満杯状態である。皆それぞれ弁当を広げてわいわいがやがやと、ここまでの静かな山とは別の山のようだ。我々とは反対側の笹子追分から登る人が多いのだろう。頂上付近はかなり伐採されているので、360度さえぎるものがない。本社ヶ丸から鶴ヶ鳥屋山の稜線が南の空を大きく画している。手前眼下には2月に登った大沢山の尾根もある。富士山が一段と大きく、白黒のモノトーンで日本画の世界を思わせる。青空とは違った雰囲気でこれも中々いい。来月行く予定の御坂黒岳も随分大きくて立派に見える。甲斐駒から北岳、間ノ岳、農鳥、塩見、手前には鳳凰三山、右に八ヶ岳さらに奥秩父、大菩薩連嶺へと続く。最後に何度も行った滝子山。

眺望を充分楽しんだ後、早々に喧騒のピークを逃れ、元来た道を引き返す。急斜面を軽い足取りで下る。前を年配の男性が行く。追いつかない程度に歩を緩め、のんびりと下って行く。このまま付いて行くと笹子峠へ下りてしまうので右手に注意をしながら歩く。我々がたどってきた尾根道の分岐は非常に判りづらい。あやうく通り過ぎる所だったが、何とか探し当てて尾根道に入る。すぐに9番目の鉄塔に出た。鉄塔の下の南斜面に下りてツェルトを張り大休止とする。ツェルトに潜り込み、ボジョレヌーボーで乾杯。外の気温は下がって来たが、中は日に照らされて明るく暖かい。先程の山頂とは打って変わった静けさの中でゆっくりと昼食を摂る。久し振りのツェルトの中は、狭いけれども何だか不思議に落着く空間である。一寸床が斜めなのが難点だが気持ち良い。午睡を楽しんで撤収し、落ち葉の道を下り始める。

送電鉄塔を数えながら軽快に下る。分厚く敷き詰められた落ち葉が素敵なクッションになっている尾根道は、勢い良く足を置く度に、がさっがさっと大きな音を立てる。クロモジ、オオバクロモジそれに覚えたてのコアジサイの葉が黄色く目立つ。9番鉄塔から1時間程で尾根道が終わり、再び藪に突入。一歩一歩慎重に踏み跡をたどりながらゆっくりと下る。幸い迷うこともなく墓地の上の舗装路に飛び出した。今朝も見かけたのだが、道の脇の一軒家につながれた大きなセントバーナードがなつかしそうにしっぽを振りながら近づいて来た。そこからは墓地の下の駐車場はすぐだった。