森の雑学その3 日本の森の危機


●ナラ枯れとは

*各種のカミキリムシを始め木の幹を食べる昆虫は多いが、日本在来種は生きた木には潜入出来ず、枯木または衰弱した木の幹を食べる。これは樹木が樹液などで防御していると考えられている。しかし、「ナラ枯れ」と「松枯れ」は外国から来た菌や線虫が健康な木を殺してしまう恐ろしい伝染病である

*ナラ枯れは1930年代に宮崎・鹿児島で最初に発生。その後日本海側を中心に徐々に発生地域が拡大、1980年代から被害が激増し2009年現在26府県に及んでいる。関東地方では今の所発生していないが時間の問題と思われる

*林野庁ホームページより抜粋
【平成22年度におけるナラ枯れ被害とその特徴】
(1)平成22年度の全国のナラ枯れ被害量は、前年度と比較して約10万立方メートル増の約33万立方メートル。1.4倍と大きく増加しました。
(2)被害の発生地域は、本州日本海側を中心としてミズナラ、コナラ等が集団的に枯損していましたが、新たに、青森県、岩手県、群馬県、東京都(八丈島等)、静岡県で被害が確認されたほか、奈良県、宮崎県で再発し、30都府県において被害が発生しました。


*長い間原因不明だったナラ枯れは、長年の研究の末近年ようやく真の原因が突き止められた。すなわちナラ枯れとは「カシノナガキクイムシがナラ菌という病原菌を伝播することによって起こる樹木の伝染病の流行」なのである

*コナラ・ミズナラ・クリ・シイ・カシなどブナ科の大木・衰退木に穿孔し、共生するナラ菌が道管を塞いで1〜2週で枯死させる(但し、ブナ・イヌブナには耐性があるらしく感染しても枯れない)

*ドングリが激減して熊が里に現れる原因の一つにもなっている。枯木が増えるのでキツツキの大発生という副産物もある。若くて元気な木には伝染しないので、里山放置によってコナラなどが薪炭材として伐採されず、老木ばかりになったことが大きな要因である

*防除法は殺虫剤の塗布や樹幹注入だが、広範囲に対応することは不可能




●松枯れとは

*マツノマダラカミキリが健康なアカマツ・クロマツ・ゴヨウマツにマツノザイセンチュウという1mmほどの線虫を植え付け、マツの樹体内で増殖した線虫が仮道管を塞いで翌年までに枯死させる伝染病。こちらも原因究明には長い時間が掛かった

*1905年にアメリカから輸入されたマツにより長崎で集団枯損が発生して以来徐々に感染が拡大し、1970年代から被害激増、2010年には北海道以外全県で発生。日本の松は絶滅の危機に瀕している。ハイマツには被害はないが、モミやカラマツ、ヒマラヤスギにも被害が発生している

*アメリカのマツはマツノザイセンチュウに対して耐性があり枯れないそうである

*防除法は殺虫剤の樹幹注入だが、高価でもあり広範囲に対応することは困難。枯れた松は線虫が脱出する前に伐採して焼却処分する必要あり




●外国人による森の買占め

*最近北海道などの森林を中国人が買収するケースが増えているようだ。投資目的らしいが将来全ての木を伐採して売り払うなどということが起きないよう注目して行きたい。

*外国人による不動産買収は止むを得ないと思うが、自然破壊につながりかねない森林売買については何らかの規制が必要だろう
2011.3.20