巨木連なる櫛形山(2051m)
 
日 時 : 2012年8月11(土)〜12日(日)
行 程 :【11日】 1515佐倉−1640船橋−市川IC−首都高−中央道−1820日野バス停−1900甲府南IC−2055南アルプス市県民の森駐車場(車中泊)
【12日】 530県民の森駐車場(890m)〜615,6251080m地点〜715,723 1380m地点〜730櫛形山林道〜811,821 1580m地点〜902,918祠頭〜948,955アヤメ平分岐〜1006バラボタン平〜1020,1100櫛形山〜1140,1157裸山(2002m)〜1230アヤメ平〜1255,1300平成峡遊歩道分岐〜1335,1350 1400m地点〜1402,1407櫛形山林道〜1430,1435 1160m地点〜1505,1511北尾根登山口〜1535,1555県民の森駐車場−1630,1700やまなみ温泉−1715甲府昭和IC−2040日野バス停−原木IC−2145船橋−2250佐倉

累積標高差 : 上り1400m、下り1400m
歩行距離 : 14km
行動時間 : 10時間
歩行時間 : 7.5時間
やまなみ湯泉 : 500円


ルート断面図とルート図
櫛形山断面図 櫛形山ルート図
カシミール3Dにて作成しています


写真をクリックすると拡大します。 また櫛形山の樹と花は photos をクリックして下さい

  中央道甲府南ICから新山梨環状道路という無料自動車道であっという間に南アルプス市に達し、一気にヘアピンカーブの山道を登り、県民の森駐車場には予定時刻に到着。誰もいないだろうとの予想に反して広い駐車場は満車に近い状態である。キャンプ場やグリーンロッジなどの宿泊者が多いようだ。雲の切れ間から星が瞬いており、この分なら明日は天気が良いかもしれない。

予定より少し遅く起床し5時半に中尾根登山道を歩き出す。立派なバンガローが立ち並ぶ県民の森「桧の巨木ゾーン」遊歩道にはチップが敷き詰められ、道幅も広く快適である。両側のヒノキ林は切り捨て間伐されて、コアジサイなど林床植生は豊かである。15分ほどで急な山道となったが段差もなく歩き易い。気温は18度と8月にしては涼しい。

よく手入れされた見事なヒノキ林を延々と進むと、標高1200m付近からカラマツ林となった。イタヤカエデ、オオイタヤメイゲツ、ミズキなども混じる。目立つ樹木には観光協会や地元の高校の生物クラブが付けた名札がある。また、100m登る毎に標高表示もあるが正確かどうかはあやしい。少しガスが掛かって幻想的な雰囲気になって来た。

ヒノキ林 巨木 サルオガセ 群落
 
歩き始めて2時間で櫛形山林道に出た。木々を観察しながらのんびり歩いているのでコースタイムよりやや遅い。時々追い着いて来た登山者に道を譲る。緑色の実を付けたアブラチャンを見付けた。緑溢れる森の中でノリウツギの白い花がよく目立つ。標高1700mを越えた辺りから葉が枯れたバイケイソウが点在するようになった。

万緑に包まれ友と甲州路

気温は16度と低いが、風がなく登りが続くので汗が止まらない。モミやツガの巨木が増え、傾斜が緩やかになると、トロロ昆布のようなサルオガセがそこら中にぶら下がっている。サルオガセは針葉樹林に多い地衣類で多くの種類があるらしいが、樹木を枯らす寄生生物ではなく、よく光が差す枯木に好んで着き、空気中の水分を吸収して光合成するそうだ。

9時過ぎ、祠頭(ほこらがしら)に着いた。この辺りもオオイタヤメイゲツなど巨木が多い。平坦な広場になっており、マルバダケブキやバイケイソウが咲き残っている。脇には立派なトイレもあった。時々青空が覗くが、相変わらずガスが掛かっておりいつ雨になるか判らない。バラボタン平にはマルバダケブキの大群落があり、ダケカンバも目立つようになった。

ほとんど平坦な道を少し辿ると、人声がしてあっけなく櫛形山山頂に到着。周囲は南アルプスらしい樹林帯でありほとんど展望はない。学生と思しき男女のグループがバナナを食べている。東側がわずかに開けていて、晴れていれば甲府盆地方面が見えるはずだが、今はガスで真っ白だ。一角には「天然カラマツ」と表記された巨木が堂々たる風情だ。男子学生に頼んで、山名表示板をバックにシャッターを押してもらい、まだ10時半だがシートを広げて昼食とする。彼らが池ノ茶屋林道方面へ下って行くと静けさが広がった。

山頂 カラマツ 裸山
 
甲府盆地から西を見上げると白峰三山の左手前に大きく横長のどっしりした山が見えるのだが、それがこの櫛形山だ。最高点は2051mのここ奥仙重であるが、北に裸山2002mと唐松岳1856mの3つの三角点が連なり、頂稜の長さは3kmに及ぶ。横から見ると櫛の形なのが名の由来である。ゆっくり休んで裸山へ向かう。北東に向かって緩やかに下り、バラボタン平の分岐を直進してサルオガセで満艦飾のカラマツ林を辿る。裸山の周辺はアヤメの群生地で7月中旬が見頃のようだ。

苔むした巨木を巡る夏の山

鹿避けのネットが張り巡らされており、小さな覗き穴から中を見るとクガイソウやコウリンカなどのお花畑になっていた。ネットに沿って右回りに登ると裸山である。ここは北岳など白峰三山の展望が良いそうだが、今は雲で全く見えず。反対側の南面には先ほど登った櫛形山が見えるはずだが、ガスが次々に上がって来て中々全体が見渡せない。

しばらく待っているとようやく雲が取れて櫛形山(奥仙重)から裸山にかけての稜線がはっきり見えた。右回りにロープが張られた遊歩道を一回りして鹿避けネットに戻り、アヤメ平へ向かう。ここもアヤメの群生地で、地元では日本一の規模と自慢している。平坦なアヤメ平を過ぎると北尾根登山道の猛烈に急な下りが始まった。膝に衝撃を与えないよう注意して歩くが、斜度がきつく、行動時間7時間を超えて疲れた膝関節が悲鳴を上げる。この程度の斜面は若い頃なら足取り軽く駆け下りたものだが、筋肉と関節の衰えは隠しようも無い。平成峡遊歩道分岐を過ぎた辺りから、時折り右手(南側)が開けて今朝登った中尾根やその下の甲府盆地が見えるようになった。

足元には清楚なソバナがひっそりと咲いている。14時過ぎ、ようやく櫛形山林道に出た。アヤメ平からコースタイム60分の所を1時間半も掛かってしまった。駐車場のある見晴台からは広い甲府盆地が一望出来る。少し休んで再び山道に入った。一旦自動車道路に出ると気が緩んでしまうので、急坂の下りは堪える。20〜30分毎に膝を休ませながら騙し騙しゆっくり下って行く。両膝サポーターをしているが関節はそろそろ限界だ。雨に削られて溝になった道の両側は余り手入れの良くないスギやヒノキ林で下草はなく、観察すべき植物も無い。たまに登って来る人もいるが、この殺風景な急坂を延々と登るのはもっと苦痛だろう。

カケスが「ジェー」と汚い声で鳴きながら飛び去った。右下を流れる坪川の沢音が徐々に大きくなり、少し元気が出る。15時過ぎ、林道に出た。北尾根登山口である。ここまで来れば後は平坦な舗装路を1.5km歩くだけだ。今日はどこかで雨に降られると覚悟していたが、最後まで全く雨に遭わず。道の両側の木々を観察しながらのんびり歩く。程なくキャンプ場の子どもたちの遊ぶ声が聞こえた。やまなみ温泉に立寄って帰路に着く。中央道の渋滞は激しく帰宅は深夜になった。

【見かけた植物など】
木本:ヒノキ、コアジサイ、カラマツ、イタヤカエデ、オオイタヤメイゲツ、ミズキ、アブラチャン、ミズナラ、オガラバナ、ノリウツギ、オオカメノキ、モミ、コメツガ、ダケカンバ、ナナカマド、サラサドウダン、マンサク、イヌシデ、ヌルデ、オヒョウ、ヤマアジサイ

草本:チヂミザサ、バイケイソウ、マルバダケブキ、クガイソウ、コウリンカ、ソバナ、フタリシズカ、マムシグサ、ヨウシュヤマゴボウ、イタドリ、シモバシラ、シモツケソウ

その他:サルオガセ