夏の赤鞍ヶ岳(1257m)
 
日 時 : 2012年7月23日(月)
行 程 : 730相模湖IC−810,820厳道峠駐車場〜850,8571000m地点〜925御牧戸山〜950,10001060m地点〜1016長尾〜1113,1125細茅の頭の先〜1200,1245赤鞍ヶ岳手前〜1348,1355長尾手前〜1405長尾〜1430御牧戸山〜1500,1505送電鉄塔の上〜1515,1525厳道峠駐車場−1550,1630秋山温泉−相模湖IC
累積標高差 : 上り750m、下り750m
歩行距離 : 9km
行動時間 : 7時間
歩行時間 : 5.5時間
日帰り温泉 : 秋山温泉 大人800円


ルート断面図とルート図
赤鞍ヶ岳断面図 赤鞍ヶ岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

この所7月後半としては異例の涼しさが続いているが、今日も予報ではそれ程暑くはならず雨の心配もなさそうだ。首都高・中央道を順調に抜けて相模湖ICで降り、コンビニに寄ってから登山口である厳道峠を目指す。今回は森林インストラクター仲間のTさんが同行してくれた。 時折り青空が覗く中、秋山川を渡り安寺沢沿いの狭い林道を進むと、到る所に大きなヤマユリが咲き誇っており目を楽しませてくれる。石垣や法面から道路に向かって長い茎を伸ばしたものの、花の重さを支えきれず逆さまに垂れ下がっているのが面白い。

秋山村と道志村を結ぶこの林道は、舗装されているものの車1台がやっとの部分が多く、対向車が来ないことを祈りつつ急カーブを登って行く。峠の狭い駐車場に着くと「伐採作業中」の掲示をした車が3台停めてあったが人影はなし。空は雲に覆われ霧も掛かって展望は期待出来ない。ストレッチをして目の前の登山口から歩き始める。 今日のルートは標高780mの厳道峠から西へ伸びる稜線を辿るのだが、最初のピークである御牧戸山まで一気に200mの高度を稼ぐ直登が難関だ。送電鉄塔直下の草付きから急登が始まった。登山道の右斜面は上部までヒノキの人工林なのだが、伐採予定と思われる木の幹に白いテープが巻いてある。

伐採地 ヤブレガサ アカショウマ タマゴタケ
 
白鉢巻ヒノキは見渡す限り広がっており、数百本ありそうだ。ざっと見渡した所、巻いてないのは半分くらいであり、間伐レベルではなく主伐と云えるが、上部で伐り出した材の搬出は大変だろう。この尾根は斜度が30度位だが、道はジグザグではなくほぼ直登なので膝が着きそうな急登である。 気温は19度だが、無風で湿度が高く大汗が噴出す。チヂミザサを見つけたので草笛の練習をしながら歩いたが、息苦しいのですぐ中止。あちらこちらに素晴らしく立派なくもの巣が朝露に光っているのを避けながら通る。

蜘蛛の巣がきらりと光る夏の峰

アカマツが混じるヒノキ林を抜けるとコナラやカエデの落葉広葉樹林となり、足元にはオカトラノオやイタドリ、フタリシズカ、ヤブレガサ、アカショウマなどが目に付く。道に沿ってイノシシが掘り返した溝のような穴が延々と続いている。 「これはあれだ。えーと、何だったかなー。あ、そうだコウヤボウキ」 「これでどうやって箒を作ったのかな」 「Wさんが小枝を集めて箒にしたと云ってた」 「よく見ると葉の縁が紅くなっているのとそうでないのがあるね。日当りの違いかな」

大きくて真っ赤なタマゴタケがコナラの下に顔を出している。標高が1000mを越えるとようやく傾斜が緩み歩き易くなった。峠から約1時間で御牧戸山のアンテナが見えた。ここからは小さな登り下りを何度も繰り返す稜線歩きとなる。冬であれば木々の間から北面や南面の山並みが見えるのだが、今は葉が生い茂ってほとんど何も見えない。

アカマツやミズナラなど多くの倒木が道を塞いでおりルートが判りづらい。風はほとんどないが曇りで気温は20度と夏の低山にしてはさわやかな陽気で汗も乾いて来た。この山は4回目だが、今までクロモジだと思い込んでいた株立ちの低木は葉柄が紅いのでアブラチャンであることが判明。注意しているとあちこちに紅い葉柄の潅木が目立つ。 小ピークの長尾を過ぎ、かつて「クロモジの純林だ」と騒いだ林もアブラチャンであった。ヒノキの植林と落葉樹林が交互に出て来る歩き易い稜線を延々と辿る。冬に登った時には大展望が得られたいくつかのポイントも霧と木の葉に遮られてほとんど何も見えず、一度だけ雲の間から大室山が姿を現してくれた。

植物観察に夢中で細茅ノ頭はいつの間にか通り過ぎたようだ。かつて大きなツルに巻かれていた痕跡を残すイヌシデに再会。幹がとぐろを巻いているが、10年以上前に見た時と同様、何事もなかったように立っている。前方から草刈機のエンジン音が響いて来た。そういえばこの辺りの道は刈ったばかりのようである。 何人かで刈ってくれているのだろう。しばらく登り小さなピークを越えると一人の男性が弁当を開いていた。傍らに刈払機が置いてある。

「こんにちは。ありがとうございます」 「一人でやってるんですか。今日の作業はもう終わりですか」 声を掛けると 「いやー、まだまだやりますよ」 元気な答えが返って来た。この長い道を一人で刈っているとは・・・。当方と同年輩と思しき男性だが、登るだけで大変な急斜面を暑い時期に刈りながら登るのは並大抵の体力ではない。子どもの頃からこの辺りを駆け回っていたのだろう。少し下って緩やかに登り返す。

イヌシデ ヒノキ ヒノキ
 
「あっ、ブナの実だ」 振り向くと、Tさんが種の抜けたブナの実を見せてくれた。気が付けば周囲にはブナの若木が増えている。前方には赤鞍ヶ岳と思われるピークが大きく聳えているが、もう12時なので行動は打ち切り、ここから引き返すことにして昼食場所を探す。大きなヒノキが倒れている辺りが平坦なのでシートを広げる。 (帰宅後、過去の記録を照合したら、ここから赤鞍ヶ岳まであとわずかだった) いつも通り裸足になっておにぎりを頬張る。頭上にはヤマモミジの葉が空一杯だ。

見上ぐれば空を覆へり山紅葉

食後、倒れたヒノキの根を観察する。横に根を張る針葉樹の典型でほんとに薄くて平らだ。樹高20m近いのに真横から見ると根張りの厚さは30cmほどである。これでは倒れやすいだろう。記念に写真を撮り下山開始。再び作業を始めた彼に挨拶して、横をすり抜ける。ほとんど標高が変わらない稜線の昇り降りだがやはり下りは速い。 登りの半分の時間で御牧戸山に帰着するとキアゲハやツマグロヒョウモン、モンキチョウなどが舞っていた。ここから急斜面をゆっくり下り始める。朝はかなり濡れていて滑りそうだった道はほとんど乾いており、あまり滑らない。

ヒノキの伐採予定地ではヘルメット姿の作業者数名が巻尺で測量をしていた。下を見ると送電線が光っている。もうあとわずかだ。慎重に下り鉄塔下の草地を抜けて林道に下り立つと、すぐ後から測量を終えた県の技術者らしい人も下りて来て、車で別の作業場へ移動して行った。秋山温泉で汗を流して帰路に着く。

【見かけた植物など】
木本:アカマツ、ヒノキ、コハウチワカエデ、ヒナウチワカエデ、オガラバナ、コナラ、コウヤボウキ、アブラチャン、ヤマボウシ、ミズナラ、イヌシデ、ブナ、ヤマモミジ、モミジイチゴ、クリ、ホオノキ、ミズキ
草本:イタドリ、オカトラノオ、フタリシズカ、キンラン、アカショウマ、ヤブレガサ、エビネ、ミツバツチグリ、トリカブト、トウバナ、ヤマユリ、トチバニンジン、チヂミザサ
その他:タマゴタケ