花盛りの千畳敷から宝剣岳(2931m)を巡る
 
日 時 : 2011年7月22日(金)〜23日(土)
行 程 : 
【22日】 730佐倉−850北習志野−940東松戸−三郷南IC−外環道−関越道−圏央道−中央道−1420駒ヶ根IC−1430宮田観光ホテル松雲閣泊

【23日】 545宿−550,600菅の台バスセンター−634,703しらび平−710,725千畳敷〜757,802八丁坂〜828,835乗越浄土〜900,910宝剣岳〜952,1004三ノ沢岳分岐〜1017極楽平〜1057,1108千畳敷−1115,1125しらび平−1200,1210菅の台バスセンター−松雲閣−1400駒ヶ根IC−中央道−首都高−1700東京駅

累積標高差 : 上り320m、下り320m
歩行距離 : 2.5km
行動時間 : 3時間30分
歩行時間 : 3時間(コースタイム2.5時間)

ルート断面図とルート図
宝剣岳断面図 宝剣岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

写真をクリックすると拡大します。 また千畳敷・宝剣岳の樹と花は photos をクリックして下さい

夏の木曽駒は最近大人気で宿も土曜日は予約が難しく金曜日出発となった。しらび平まで一般車乗入れ禁止であり、アプローチのバスもロープウェイも1時間待ちになるらしい。迷走台風6号が余りに遅いのでやきもきさせられたものの、何とか離れてくれたので天気はまずまずのようだが、展望は余り期待出来ないだろう。三郷南ICから外環・関越・圏央道を経て中央道へ入り順調に駒ヶ根ICへ。

インターからほど近い宮田観光ホテル松雲閣は増改築を繰り返した5階建てで建物も設備も古く、名前のイメージどおり団体向けの大雑把な宿だった。一風呂浴びた後、夕食まで第2回「森の講座」を開講。今回は「木の漢字」をテーマにテストを交えて60種の樹木の解説を試みたが、焼酎を酌み交わしながら脱線の連続で大いに盛上った。

翌朝、頼んでおいた弁当を受取り、6時前に出発。標高850mの菅の台バスセンターからしらび平行きのバスに乗り込む。天気は上々、起床時に宿の窓から南アルプスがちらりと見えていたので期待も高まる。ドル箱観光路線らしく要所では「何とか地蔵」とか解説の放送が入る。ヘアピンカーブの連続30分ほどで標高1662mのしらび平に到着。

通常20分間隔のロープウェイは12分間隔に大増発されており待ち時間は大したことはなかった。60人乗りゴンドラは満員電車並みのすし詰めで、ガイド嬢が滝や樹木などについて案内しても外が良く見えない。8分で標高2612mの千畳敷駅に降り立つ。風はなく気温は15度。まだ7時過ぎだ。空は抜けるように青く楽しい山歩きが期待出来る。

宝剣岳 宝剣岳 宝剣岳 宝剣岳
 
目の前には宝剣岳を盟主として岩峰群が屏風のように連なっており、その下に典型的なカール地形が広がっている。このカールは2万年前の最終氷期に氷河の侵食で形成されたものだという。東には南アルプスの大展望が得られるはずだが、今は雲に覆われて全く見えないのが残念だ。 弁当の朝食を済ませ八丁坂へ向かう。小さな駒ヶ岳神社の脇を抜けてカールに入るといきなりチングルマとコイワカガミの群落が出迎えてくれた。

木曽駒は行列が予想されるので宝剣岳の岩峰を巡るつもりだ。シナノキンバイ、コバイケイソウ、キバナノコマノツメ、クロユリ、アオノツガザクラ、ヨツバシオガマ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲと次々に登場してメモが追い着かない。ヨツバシオガマは東北の山で見たのより随分背が低く同種と思えないが、この花は北へ行くほど背が高くなるようだ。

八丁坂の急坂に掛かると渋滞が始まった。ジグザグのガラ場は見渡す限りカラフルな登山者の列でつながっている。他の百名山と同様中高年団体ツアーが多いが、山ガール・山ボーイのカップルや女子二人組も負けていない。千畳敷を振り返るとガスがどんどん上がって来る。あっという間に青空がほとんど消えてしまった。

周囲にはイワツメクサ、ハハコヨモギ、ヒメウスユキソウ、タカネツメクサ、オヤマノエンドウ、ミヤマダイコンソウなど岩礫地に生育する花々が展開している。それにしてもミヤマダイコンソウやミヤマキンポウゲ、ミヤマキンバイなどの黄花は非常に似ており、葉を詳細に見ないと同定は難しい。少し休憩して水分を補給。

「あれ、あそこで人が倒れているよ」 最後の急坂に掛かると一人の女性がしゃがみ込んで動けなくなっていた。リーダーがトランシーバーで他班と連絡しながら対応に大童だ。声を掛けようかと思ったが、介抱する人は何人もいるので我らは脇を抜ける。登るに連れ徐々に両側から岩峰が迫って来た。8時半、広々とした乗越浄土に立つ。大勢が休んでいるが広い稜線なので混雑感はない。

宝剣岳 宝剣岳 宝剣岳 宝剣岳
 
前方には中岳まで緩やかな稜線が伸びており、人波も蟻の行列のように続いている。右手は伊那前岳方面の稜線だ。宝剣山荘の横を左に折れて宝剣岳の岩峰へ向かうと人も少なくなりマイペースで歩けるようになった。山頂直下の鎖場は高度感が出る所だが、乾いた花崗岩で浮石もなくフリクションが十分に利くので、慎重に登れば危険はなく快適である。 先行したK氏が鎖に捉まるメンバーを一人ずつカメラに収めている。鳥海山のような狭い山頂には数名しか立てず、記念撮影しただけで次のパーティに場所を譲らざるを得ない。

「そっちは道じゃないよ。岩壁だから墜ちるよ」 極楽平へ向けて下り掛けた時、若い女性二人組が絶壁の方へ行こうとしているのであわてて止める。一人はストック2本をザックに挿しているのだが、握り部分がザックの下に突き出ており、下りでは岩に当って転落する危険性が高い。K氏が注意したが何のことか理解出来なかっただろう。 このレベルの山ガールには木曽駒へ行ってもらいたいものだ。

ここからの下りは高度感に溢れ、久々に快適な岩の感触を味わうことが出来て非常に楽しかった。 「はい左手でこの岩をつかんで右手はここ」 「右足はここへ置いて左足はじわーっとここまで下ろして」 難所では岩場に不慣れのA夫人にスタンス・ホールドを一つずつ示してゆっくり動いてもらう。登って来るパーティとのすれ違いには特に気を遣ったが、オーバーハングした岩で待機するはめになったY氏は眼下に千畳敷ホテルを眺めながら余裕の表情を見せていた。悪場が終わり三ノ沢岳分岐で一息入れる。

宝剣岳 宝剣岳 宝剣岳
 
Hさん差入れのグレープフルーツが実にジューシーだ。三ノ沢岳の稜線の右側だけ雲が湧き上がっており、太陽は左側なのであそこに立てばブロッケンが見られるだろう。なだらかな稜線をしばらく下ると極楽平に達し、左に折れて千畳敷への下り道に入る。道の両側には背の低いダケカンバやハイマツ、ウラジロナナカマドなどに混じってチングルマやタカネツメクサの大群落が広がっている。

千畳敷方面はガスが立ち込め結局南アルプスは全く姿を見せなかった。この道は登山者も少なく静かに高山植物を愛でることが出来る。岩だらけの階段道をガクガクしながら下って行くとTA氏の様子がおかしくなった。どうやら膝を痛めたらしく大幅にペースダウン。全く踏ん張りが効かないのでTUさんと共にフォローしながら一歩ずつ降りて行く。何とか下り切り11時少し前に千畳敷駅に辿り着いた。すぐにロープウェイの列に並ぶと、先程まで「1時間待ち」のアナウンスがあったというのに10分も待たず全員乗車。バスも接続良く、12時丁度に菅の台バスセンターに帰着。

宿に戻って温泉で汗を流し、昨日目星を付けておいた光前寺門前の蕎麦屋で昼食とする。観光地値段だが質量とも満足。初めてのリンゴの天ぷらも旨かった。中央道も首都高もほとんど渋滞なく、駒ヶ根ICから3時間で東京駅に帰着。ハイシーズンのメジャーな山で混雑を覚悟したが、バスやロープウェイの待ち時間も少なく、登山路の渋滞も許容範囲で天候にも恵まれ快適な山旅となった。

参考:菅の台バスセンター 〜 しらび平 バス往復 1600円
    しらび平 〜 千畳敷 ロープウェイ往復 2200円
    菅の台バスセンター駐車場 1台  500円