春爛漫の日ノ出山(902m)
 
日 時:2011年4月16日(土)
行 程:555佐倉−713,744新宿−おくたま1号−811立川−842,856青梅−901,910日向和田〜935登山口〜1048,1056三室山647m〜1220,1330日ノ出山〜1420,1425 480m地点〜1452,1615つるつる温泉−1635,1647武蔵五日市−あきがわ3号−御茶ノ水−佐倉
累積標高差: 上り850m、下り710m
歩行距離:9.7km

ルート断面図とルート図
日ノ出山断面図 日ノ出山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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正月以来のYAC山行だが、残念ながら主役のHさんが腰痛の為不参加となった。その代わりKN氏と同じNIJ勤務のTAさんが初参加で、本日のメンバーは総勢8人だ。新宿駅11番線には【ホリデー快速おくたま1号】を待つ大勢の登山客が行き交い、山ガールも沢山いて華やかである。

先月の大震災以来日本中が自粛ムードに包まれていたが、1ヶ月を過ぎ、計画停電も当面中止となったので、ようやく皆ハイキングへ出掛ける気分になったのだろう。数年前まで山は中高年グループばかりだったが、最近では若い人も増えて様変わりである。

新宿では曇り空だったが、日向和田に着く頃には雲も取れ青空が広がった。多摩川に掛かる神代橋から上流を眺めると河原にカヌーが沢山並べてある。気温は21度もあり、すっかり初夏の装いの街を抜け「梅の公園」脇を緩やかに上って行く。もちろん吉野梅郷の梅はもう散っているが周囲の山々は淡い新緑に包まれ満開のヤマザクラが彩りを添えている。

両脇の庭先にはミツバツツジやハナカイドウ、ボケ、レンギョウ、ユキヤナギ、シロヤシオ、コブシなど咲乱れて正に春爛漫である。家並みが尽きて森に入ると間もなく【日ノ出山登山口】の標柱があり、琴平神社の鳥居をくぐって山道に入る。道の右にはゴルフのショートコースがあり、ネット越しにおじさんが芝刈りするのが見えた。

手入れの良い杉林が続く。しっかり枝打ち・間伐されて林内は明るくアオキなどの潅木も多い。傾斜もきつくないので皆快調である。時折り、若者グループに追い着かれて道を譲るが、ほとんど離されずに付いて行く。余りのハイピッチに堪りかねSさんが 「おーい、スピード違反だよ」 と叫ぶ。

ウグイスやシジュウカラの声が森に響く。スギの人工林が続くので、花のある野草はタチツボスミレくらいだ。スギ以外にはアオキ、ナンテン、シロダモ、アセビ、シラカシ、イチイガシ、アカガシなど常緑の低木や稚樹が多い。たまにモミ、エノキ、アカマツなど高木が現れる。モミジイチゴの白い花やミツバツツジの濃いピンクが目立つ。 (ムラサキヤシオかアカヤシオかと思ったが、おしべが5本なのでミツバツツジ。ムラサキヤシオは太平洋側には分布していない)

日ノ出山 日ノ出山 日ノ出山
 
大きなヤマザクラの下で一休み。里と違ってまだほとんど蕾で一番上の方だけわずかに開花している。琴平神社では先程の若者グループがお参りをしていた。 送電鉄塔を過ぎた辺りで右手が落葉樹林に変わり、若葉に包まれたコナラ、イヌシデなどおなじみの木々が現れた。さっきから矢鱈とヒサカキの花のガス臭いにおいが鼻に付く。11時前に三室山に到着。初参加のTA氏も余裕綽々だ。

「昼飯にしようか」 「まだ早いから日ノ出山まで行きましょう」 「えー!ここからつるつる温泉に下るんじゃないの?」 「ここまで400m登ってきたけど、日ノ出山までは300m以上の登りだな」 「まー、帰りを急ぐこともないから行ってみるか」

皆腰を上げて日ノ出山を目指す。急な下りのあとダラダラ登りで梅野木峠に出た。南側が大きく開けているが、春霞で遠望は利かない。眼下の斜面ではスギが広範囲に伐採されていた。双眼鏡で眺めると伐採跡にはちゃんと苗木が植えてある。峠から舗装された広い道を進むと地元の消防団らしい小さな消防車が降りて来た。

辺りは手入れの悪いヒノキ林に変わった。間伐していないので林床に光が届かず下草・潅木が全くない。間もなく舗装は切れ、大きな電波塔と管理舎あり。キブシ、アセビ、モミジイチゴなどの花が目に付く。幅広くきれいに均されて石ころ一つない歩き易い道だ。地図上ではピークを2つ越えるはずだが左を巻くように道が作られているのでアップダウンはほとんどない。 従って皆のペースは相変わらず速い。右手から砂埃のような黄色い粉が空に舞い上がった。

「ヒノキの花粉ですね」 KN氏が指摘したが、こんなヒノキ花粉の大量飛散は初めて見た。傾斜が急になり尾根の木の根登りとなった。高度計は780mを指しており、これが最後の登りだろう。振り向くと1台のマウンテンバイクが登って来た。ギア比を一杯に上げてゆっくり確実に木の根を越えていく。我らが先頭のTUさんも70歳とは思えないペースで相変わらず飛ばしている。 本日の紅一点TU夫人A子さんとSさんが遅れ出し、とうとうA子さんは立ち止まってしまった。

TUさんは直ちに停止。トップを譲り、奥さんのもとへ向かう。ぐっとペースを落して尾根を辿ると石垣が見えて来た。人声もする。 「日ノ出山には砦があったのかな」 「標高900mに砦を作って意味あるの」

ぶつぶつ云いながら石垣の間を抜けると大きなアセビに白花が満開だった。そこからは山頂の東屋が目の前。20人以上の登山者が休んでいるが、広い山頂にバラけているので窮屈感はない。これだけ広ければ砦も造れただろう。3等三角点のある日ノ出山からは360度見渡せるのだが、今日は霞んでいて西に大岳山と御岳山その右奥に雲取山が見える程度だ。

日ノ出山 日ノ出山 日ノ出山 日ノ出山
 
日向和田から3時間10分、ほぼコースタイム通り着いてしまったことになる。我々は人の少ない西端にシートを広げ、先ずはビールで乾杯。つまみも次々に並び、 「今日はこれが重くて疲れたよ」 Sさんがおもむろにウィスキーの栓を開ける。Hさんがいないのは寂しいが、オニオンスライスやノビルも登場して久し振りにYACらしい春の宴となった。すぐ脇の老ヤマザクラが開花寸前で花見にならないのが惜しい。TAさんは山でウィスキーなんて初めてだろう。もっとも8人で1本なので、各自水割り2杯程度だが。 満腹で気分良く一寸横になる。

1時間強の中宴会を終え、つるつる温泉目指して下山開始。階段道を軽快に駆け下りる。アセビやシャクナゲが街路樹のように両脇に並んでいるが、シャクナゲはこんな低地に自生しないから地元で植えたのだろう。半分枯れかかっている。

スギとヒノキの混植林にイヌシデ、コナラ、クヌギなどが混じる。10分ほどで階段が終わると林道に出た。【つるつる温泉まで3.2km】の大きな看板があり、その向こうはまたもや大規模な伐採地だ。脇にある東京都森林組合の立て看板に拠れば「花粉対策事業としての主伐」とある。材木として活用されれば良いが、花粉のために伐られたとしたら可哀相だ。

ミツバツツジなど眺めながらのんびり林道を下り、標高500mを切った辺りで少し休む。前半のオーバーペースが祟って太腿もふくらはぎもパンパンになりながらようやくバス道に出ると【つるつる温泉まで300m】とある。しかもはるか上の高台だ。

この急坂には参った。ヨロヨロ歩きようやく辿り着いた温泉は名の通りつるつるの湯で心地良かったが、露天風呂はプラスチックの湯船で何とも味気なかった。ともあれ春爛漫の宴会山行は無事終了。武蔵五日市へ向かう機関車バスでは全員眠りこけてしまったようだ。

注)つるつる温泉:800円、機関車バス:390円、JRホリデーパス:2300円