連休最後の今日は大黒天から刈田岳経由雪の熊野岳へ登るつもりだが、雲は厚く好天は望み薄なのでどこを歩くか迷う所だ。6時過ぎに家を出て近所のコンビニでおにぎりなどを調達していつもの国道457号で遠刈田温泉経由エコーラインを辿る。
大鳥居をくぐるとコナラやブナ、カエデなど新緑のトンネルがどこまでも続いて清々しい。冬季閉鎖のエコーラインは4月末に開通したばかりだが、5月7日までは午前8時まで夜間通行止めだ。まだ7時を少し回った所なので、時間つぶしに滝見台へ寄って朝食がてら三階滝と不動滝を眺めて見る。
谷を隔てて正面に見える三階滝は何度も見ているが、雪解けで水量が多く今迄で一番立派に見えた。澄川に7時半頃着くと何と門が開いている。早目に開けてくれたと喜んで進むと賽の磧のゲートは閉まっていた。道脇の駐車場で待機。ここは2年前に初めて蔵王山へ足を踏み入れた記念すべき場所だ。7時50分の開門と共に出発。すぐに濃霧となり視界は20〜30mしかない。これではお釜も全く見えないだろう。仕方ないので予定を変更し、刈田峠から屏風岳方面へ向かうことにする。
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ハイライン入口手前の駐車場で隣に車を停めた単独の人が支度をして歩き出そうとしているので
「どこまで行くんですか?」
と声を掛ける。
「うーん、屏風か不忘までかこのガスですから行ける所までですね」
「今日はルートが判りにくいでしょうね」
「どうしても左へ行き過ぎますからね」
「私も去年4月に来た時、かなり左へ行ってしまいましたよ。今日は視界が良ければ熊野岳へ行くつもりでしたがこの天気じゃ仕方ないですね」
「あっちは何も見えないでしょうね」
いつの間にかスパッツも付けていてさっさと行ってしまった。結構冷えているので冬用山シャツの上にフリースを着込み、雨具上下にロングスパッツ、毛糸の帽子と手袋で完全武装して先程の人より10分遅れで出発。念のため軽アイゼンもザックに納めてある。
エコーラインに沿って山形寄りの登山口へ向かうが道の山側には少しだけ雪壁が出来ていた。道脇には長けてしまったフキノトウがびっしり並んでいる。大きな案内板のある登山口からオオシラビソが立ち並ぶ雪面を下り始めたが、昨年同様夏道は深い雪の下で全く見当がつかない。
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このルートは一旦避難小屋のある刈田峠まで下って前山、杉ヶ峰へと登って行くのだが、霧が深く視界は100m程で刈田岳も前山も全く見えず、ただなだらかな雪の大斜面がどこまでも広がっているので、踏み跡を見失うとヤバイ。しかし、そのトレースも間違っていることがあるので注意が必要だ。
積雪期には前山と杉ヶ峰を左から迂回して芝草平へ出るのが一般的で夏道よりかなり左を進むことになる。ところが左へ行き過ぎない様意識して右寄りへ進むとトレースが笹林に消えてしまった。一寸右へ寄り過ぎたようなので引き返して左へ下り気味に進むと刈田峠避難小屋に出た。
夏道から少し左に外れているこの小屋を見るのは初めてだ。その先をやや左寄りに登って行くと足跡は左下がりの斜面を延々とトラバースして行く。前山の東斜面だろう。遥か下まで続く急な雪面がガスの中に消えている。次の杉ヶ峰も東斜面を巻いて進む。
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昨年は杉ヶ峰山頂付近を通過して屏風岳を正面に見ながら芝草平まで大斜面を快適に下ったのだが、今年は余程地形を熟知した人がトレースを付けたらしく、芝草平までほぼ水平にトラバースしている。芝草平の手前で今朝先行した人が引き返して来た。
「今日はもう帰ります」
「そうですか。私はもう少し行ってみますよ」
「気を付けて」
どこまで行ったのかは聞き漏らした。間もなく半分雪に埋もれた芝草平の案内板を見つけた。立ったまま少し休む。屏風岳への長い登りが始まるが、ここから先はほぼ夏道沿いに歩くことになる。少し登ってシラビソの立ち枯れが目立つ辺りで新しいトレースが消えた。
さっきの人はここから引き返したらしい。この先はかすかな古い踏み跡しかない。所々足元から雪解けの水音が聞こえるし、踏み抜いた跡がたくさんあるので雪が何時崩れるか判らない。踏み抜くと膝上まで雪に潜ってどっと疲れるので用心して歩く。少し風が出て来た。烏帽子への分岐を通過。
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ここの道標もほとんど雪に埋まっている。山頂が近付き傾斜が緩くなるにつれて雪も減り泥んこ道が現れ出した。背の低いシラビソやハイマツの中でウグイスが盛んに囀る。ガスが益々濃くなり、視界は10m程になった。11時前ようやく平坦な屏風の山頂に辿り着く。
去年もそうだったが1等三角点のある山頂にはほとんど雪はない。しかし、南側には大きく雪が張り出して雪庇になっているようだ。気温は6度。風が強くかなり寒い。丸太のベンチに腰掛けておにぎりを頬張る。登山口からここまで2時間半、ほとんど休んでいないので一寸くたびれた。
雨は降っていないが雨雲の中を歩いて来た感じで、帽子も手袋もザックもびっしょりだ。スチームサウナのように眼鏡に水滴がびっしり着くのでトレースが見えにくく、帰路でも何度か迷う。避難小屋からの最後の登りでは左(山形側)へ寄り過ぎてしまい、登山口よりも100m程西でエコーラインにぶつかった。
今年は黄砂が多かったせいか雪が茶色に汚れていて気分爽快とはいかなかったが、静かな雪山を独り占め出来て最高だった。
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