初秋の秋田駒ケ岳(1637m)
 
日  時:2009年8月30日(日)
天  気:晴れのちくもり
行  程:【29日】白石−盛岡IC−秋田街道−道の駅雫石あねっこ−国見温泉駐車場(車中泊)

【30日】520駐車場〜6251175m〜645,6571本目〜804,828横岳1583m〜854,910男女岳1637m〜946,1007男岳1623m〜1036水沢分岐〜1106御坪分岐〜1148,12131175m〜1243駐車場−道の駅雫石あねっこ−盛岡IC−白石

累積標高差(上り):約1060m
累積標高差(下り):約1060m
歩行距離:約11.9km
コースタイム:約7時間15分
実歩行時間:約5時間45分

ルート断面図とルート図
秋田駒ケ岳断面図 秋田駒ケ岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

東北の名山巡りも飯豊山で打ち止めとし、休暇の後半は紀行文をまとめるつもりだったが、それは後回しにして目一杯歩くことにした。今シーズンはなるべく蔵王以外の山を歩くつもりで磐梯山を皮切りに、朝日連峰、早池峰、岩手山、月山、鳥海山、飯豊山、焼石岳、西吾妻を訪れて来た。

いよいよ白石生活最後の週末、締めくくりの山をどこにするか悩んだ末秋田駒に決めた。秋田岩手県境に聳えるこの秋田駒も片倉コースの八合目までシャトルバスが入るので余り気が進まなかったが、南側の国見温泉から入れば静かな山を楽しめそうだ。29日午後白石を立ち、盛岡ICへと向かう。今夏、早池峰、岩手山、焼石岳に続き4度目の岩手県入りである。

盛岡から国道46号を走り「道の駅雫石あねっこ」で温泉に浸かり、ついでに夕食も済ませる。仙岩トンネルの手前で山道に入り、国見温泉下の駐車場に車を停める。ここにはきれいなトイレがあり、ペーパーも備えてあった。駐車場の隣にある石塚旅館の明かりのお陰で今回も星はほとんど見えず。気温は15度。

秋田駒
 
翌30日5時20分に出発。気温は7度と冷え込んでいるのでフリースを着て歩く。強い硫黄臭の中、車道を少し登り森山荘の脇から階段道に入る。間もなくコンクリートの丸太道から木道となった。周囲にはダケカンバもあるが、ほとんどブナの純林が続き、緩やかな歩き易い道を快調に登る。

30分ほどで視界が広がり前方に稜線が、後ろには和賀山塊が見え出した。気温は10度だが体も温まったのでフリースを脱ぐ。えぐれた石ころ道になりヨツバヒヨドリやミヤマアキノキリンソウ、ヤマハハコなどがチラホラ咲いているがもう盛りは過ぎている。6時25分、横長根の一角に着いた。

ここから外輪の稜線歩きとなるが、今日は反時計回りに1周するつもりだ。稜線とはいえ道がえぐれている上、両側にブナやオオカメノキ、ハウチワカエデなどが茂っているので余り展望は良くない。時折り、樹間から女岳方面が見える程度だ。しかし、緩やかな傾斜のきれいな砂道で岩や石も無くすこぶる歩き易い。

秋田駒 秋田駒 秋田駒
 
この横長根の稜線は岩手・秋田の県境でもあり、男女岳・男岳・女岳・田沢湖などは秋田県側になる。高度が上がるに連れ木々の背が低くなり、女岳の左下には深さ日本一(水深423m)として知られる田沢湖が見え始めた。ウメバチソウやハクサンシャジンもやはり盛りを過ぎている。

6時45分、1220m地点で一本立て、朝食とする。気温9度。じっとしていると寒いので、またフリースを着込む。第2展望台まで来ると女岳の後ろに男岳が現れた。風が冷たい。そろそろ森林限界を抜けたらしく展望が良くなった。この山も鳥海山や飯豊山と同様に亜高山針葉樹林が無く、落葉樹林が尽きると「偽高山帯」になってしまう。

背丈1m程のダケカンバやミネカエデの中にトリカブトの大群落やヤマハハコの大きな株がある。小岳・男岳への道を左に分けると大焼砂の巨大な砂礫帯が広がった。スコリアと呼ばれる真っ黒な火山礫と火山砂が見渡す限り堆積したもので、タカネスミレやコマクサの群生地として知られている。

秋田駒
 
今はコマクサがわずかに残っているのみ。両側にロープが張られた急な道を登るに連れ、周囲のパノラマが刻々と変化する様は圧巻だった。正面には横岳が高々と聳え、左手の男岳がどんどん大きくなって、寄り添う女岳は段々低くなる。田沢湖の湖面が少しずつ広がり、横岳の右奥に堂々たる岩手山が徐々に姿を現す。

振り向けば黒い砂礫帯の向こうに和賀山塊が山並みを連ねている。ハイマツ帯に入ると間もなく横岳に到着。8時を過ぎた所で気温は11度。改めてじっくりと周囲の展望を楽しむ。横岳分岐から阿弥陀池へ下り、避難小屋の横を抜けて秋田駒の最高峰である男女岳(おなめだけ:女目岳)の階段道を登る。

秋田駒 秋田駒 秋田駒 秋田駒
 
周囲にはオヤマリンドウ、ミヤマアキノキリンソウ、ウゴアザミ、イブキトラノオなど8月末にしては花が多い。阿弥陀池から15分程で無人の山頂に辿り着く。気温は13度。まだ9時前である。ここ男女岳からの展望も素晴らしかった。北西方向にすっきりとしたシルエットを見せているのは森吉山らしい。

その右手やや離れて八幡平から岩手山まで長々とした山並みが続く。北方遥か彼方には岩木山や八甲田山も姿を見せ、岩手山のすぐ右奥に姫神山、更に東南方向にはかろうじて早池峰と薬師岳が望める。南に目を転ずると女岳の奥に和賀山塊が黒々と広がっており、男岳の右下には田沢湖の湖面が光っている。

秋田駒
 
南西方向、田沢湖のやや左奥にかすかに浮かぶ山並みは鳥海山だろう。増えて来た登山者とすれ違いながら阿弥陀池まで下り、池の畔の木道を辿って男岳へ向かう。岩場の急登では渋滞発生。シャトルバスで上がれば、1時間の歩きでこの大展望を楽しめるのだから混雑も致し方ない。

狭い山頂には鳥居と祠があり、信仰の対象は最高峰の男女岳ではなくこの男岳であったことが判る。男女岳よりわずかに低いが、ここからの眺望も迫力満点だった。眼下に田沢湖の全景が大きく広がっており、手前には五百羅漢へと続く金十郎長根が伸びている。

秋田駒
 
その左には女岳が溶岩流に覆われた姿を見せ、小岳の丸い噴火口も良く見える。振り返ると男女岳と阿弥陀池の間に岩手山が大きく競り上がっている。改めて山座同定を堪能して金十郎長根を下る。山頂に溢れた人達はほとんど八合目ピストンか小岳方面へ下るのでこの道には誰もいない。

急傾斜のガレ場と痩せ尾根が続く厳しい下りである。程なく左下から岩場を登って来る大人数のパーティーあり。どう見ても地図にあるルートではない。しばらくして尾根道に合流したので話を聞くと、ルート図を手にした年輩のリーダーが色々説明してくれた。 女性を含む中高年ばかりだが、地元の山岳会の人達で、元気にバリエーションルートを楽しんでいるようだ。

「この金十郎長根は小岳コースより面白い道ですよ。頑張って下さい」

リーダーの人に励まされて、滑りやすいガレ道を慎重に下る。時折り、地元の人らしい単独の人とすれ違うが、静かな山を好む人にはぴったりのコースである。やがて傾斜が落ちて五百羅漢の岩場に差し掛かると左に巻き道があった。この一帯はヨツバヒヨドリ、ミヤマアズマギク、ウメバチソウ、ハクサンシャジン、ヤマハハコ、ミヤマアキノキリンソウなどの花々で溢れている。

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男岳から30分で水沢分岐を通過すると笹原が広がり、気持ちいい緩やかな稜線歩きとなって快調に飛ばす。依然として右手には田沢湖が大きな湖面を見せている。ブナ林に囲まれた姿見ノ池の向こうに和賀山塊が近付いて来たが、1400m級とは思えない立派な山々である。その左奥に先週歩いた焼石連峰も小さく見える。

突然、左の草むらで何かが動いた。見るとマムシが藪に吸い込まれていく。11時過ぎ、御坪分岐を過ぎると展望はなくなった。小さな沢を渡り笹原の急登となる。しばらくして平坦な道となったが、藪に囲まれて風も無く汗が滴る。気温は15度とそれ程上がっていない。

樹間から男岳や女岳、田沢湖が覗く。いままで気付かなかったが、周囲のブナがヒゲだらけの実をびっしり付けている。姿見ノ池もチラリと見えた。空はすっかり厚い雲に覆われて今にも降り出しそうだ。12時前、国見温泉下り口に帰着。数組の登山者が昼食を摂っている。

当方もシートを広げ、例によって裸足になっておにぎりを頬張る。ここからは階段道を軽快に駆け下りる。硫黄の臭いがすると森山荘の屋根が見えた。12時43分、国見温泉の駐車場に帰還。予定より随分早い。8月末にしては花が多く、男岳山頂以外は人も少なく静かな山歩きを楽しめた。昨日に続き「道の駅雫石あねっこ」の温泉に浸かって帰路に着く。

これにて慌しい東北名山巡りも無事終了。総じて好天で展望良く、花を十分楽しむことも出来、個性溢れる山々を歩き通せて大満足の連続となった。

道の駅雫石あねっこ温泉 500円