ツブ沼コースから焼石岳(1548m)
 
日  時:2009年8月23日(日)
天  気:曇りのち晴れ
行  程: 【22日】1530白石IC−平泉前沢IC−国見平温泉−ツブ沼駐車場(車中泊)

【23日】 521ツブ沼駐車場〜607,622一本目650m地点〜645金山沢〜728石沼〜818中沼コース分岐〜845,858銀明水〜1009,1016姥石平〜1042,1130焼石岳〜1215,1220東焼石岳〜1238姥石平〜1318,1329銀明水〜1345中沼コース分岐〜1415石沼〜1445金山沢〜1525ツブ沼駐車場−すぱおあご−水沢IC−白石

累積標高差(上り):約1310m
累積標高差(下り):約1310m
歩行距離:約19.5km
コースタイム:約8時間20分
実歩行時間:約8時間25分


ルート断面図とルート図
焼石岳断面図 焼石岳ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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今回は岩手・秋田県境に位置する焼石岳を目指す。この山は栗駒山から真北に約20kmと距離も近いので、去年の岩手宮城内陸地震による被害を受けているはずだ。 中尊寺に近い平泉前沢ICで降りて国見温泉に立ち寄り、真っ暗な山間の道を進んでいると急に左前方が明るくなり何事が起こったかと途惑う。野球場を10個以上並べたように広大な範囲が煌々と照らされていて大きなダンプカーが走り回っている。どうやら巨大なダム工事のようだ。

工事の為、道路が付け替えられて地図とは違っていたが、何とか「中沼登山道」入口の看板を見つけた。しかし、この道は地震の為通行止めになっている。遠路はるばるやって来たのに登れないのではと心配しながら、急いで地図を調べると、少し先に「ツブ沼登山口」がある。気を取り直して石淵ダム湖沿いに進むと大きな駐車場があった。 通行止めなどの表示は無いのでこの登山道は大丈夫そうだ。中沼コースよりかなり距離が長いので早立ちしたい。土曜の夜だというのに工事の照明で空は白く霞んでいて星はほとんど見えないが、明日の好天を期して早々に布団を被る。



23日朝、5時前に起床して5時21分出発。天気は曇りだが北西の空は晴れている。気温は18度とやや高めだ。車道を少し登りダム関連工事の柵横から山道に入る。風はないが自然林の中はひんやりして清々しい。段差がなく歩き易い道を緩やかに登って行く。しばらくすると道脇できのこ採りらしい人が何やら支度をしていた。 道は赤土がぬかるんで滑りやすくなる。

左下から沢音がして傾斜が急になり、早くも大汗。所々ぬかるみが深く、山靴が潜って泥だらけだ。6時過ぎ、水場があったので1本立て、朝食のおにぎりを頬張っていると、先程の男性がさっさと追い抜いて行った。熊除けの笛を吹きながら、ハウチワカエデ、ホオノキ、コシアブラ、オオカメノキなどが混じるブナ林を進む。

沢音が近付いて左斜面を高巻くと金山沢に出た。彼が休んで靴の泥を落しているので先行する。色褪せたヤマアジサイが咲く左岸の道を進むと、また彼に追い着かれた。白のYシャツに普通のズボン、足元はスニーカーという出で立ちのこの人は

「お宅は"純粋登山"ですか?もったいないねー」 と妙な言い方をする。

「毎日来てるの?」 と尋ねると

「僕は舞茸専門だけどここは初めて」

と応えたが、初めてとは思えない軽快な足取りで、ぬかるんだ急坂をスタスタと行ってしまった。7時頃右手が開けて石沼の上に出た。この辺り地震によると思われる土砂崩れが多く、山道も寸断されて迂回路が続く。右下にエメラルドグリーンの石沼が静かなたたずまいを見せている。気温は13度まで下がり汗も引いて快適だ。

やがて緩やかな下りとなって前方の樹間から焼石連峰の山並みが見えて来た。相変わらず深いぬかるみに足を取られる。トリカブトやミヤマアキノキリンソウ、ミズギクなど登場。8時過ぎ、中沼コース分岐を通過。きれいな湧き水が道を流れている。木道や丸太の階段道となり斜度が増す。8時半過ぎ、彼が戻って来た。大きなビニール袋を提げて

「今日はもう終わり」

と云いながら下って行く。どの位の小遣い稼ぎになるのだろうか。一寸胡散臭いが山慣れした人だった。9時少し前、大きなダケカンバに囲まれた銀明水に到着。小さな広場には丸太のベンチも置かれている。ここの湧き水は旨かった。アザミやオヤマリンドウなどのお花畑を縫って急斜面を登る。

焼石岳 焼石岳 焼石岳 焼石岳
 
青い空には高積雲が広がってもう秋の気配である。銀明水から15分ほど歩いた頃、突然木道が無くなって崖になっている場所あり。これも去年の地震の爪跡だ。岩だらけの小沢を辿ると傾斜が落ちて乾いた石ころ道となる。チシマザサの草原には所々木道が敷いてあり、小さな池塘の脇にはミツバオウレンやハクサンフウロが控え目に咲いている。

10時前、沢を渡ると澄み切った青空に連峰の大展望が浮かび上がった。左手には横岳が大きく空を画しており、意外に小さな焼石岳本峰が正面に鎮座。そして右には東焼石岳のなだらかな稜線が伸びている。右端には経塚山もトンガリ頭を出し、その左奥には早池峰と薬師岳もはっきり見える。風が出て来た。

焼石岳
 
10時過ぎ、姥石平に着いた時には帽子が飛ばされそうで手も冷たくなり、雨具の上着と軍手を着ける。気温は12度と真夏とは思えない。姥石平分岐を右に行くと東焼石岳だが、直進して泉水沼の左を抜け、わずかな登りで誰もいない焼石山頂に立つ。10時42分、ツブ沼から5時間強である。風は収まって来た。

それ程広くない山頂からは文字通り360度の大展望を独り占めだ。北には和賀山塊が山並みを連ね、遥か奥には秋田駒そして八幡平の稜線が緩やかなカーブを描き、岩手山が群を抜く高さで聳えている。東に目を転ずると東焼石、牛形山、経塚山の彼方に早池峰と薬師岳が並び、南には秣岳を従えた栗駒山が望める。真西に鳥海山が見えるはずだが同定出来ず。

焼石岳 焼石岳 焼石岳 焼石岳
 
大休止をして十分展望を満喫し、北斜面を降りて東焼石へ向かう。このルートは「刈払い不十分」と地図にある通り、途中から踏み跡が怪しくなりとうとう完全に消えてしまった。膝上から腰位の高さのハイマツやチシマザサが密集した草原なので見通しは利くが、360度見渡しても道がない。

靴先で周囲の藪下を探りながら、獣道のように続く空隙を辿って東焼石岳の方向へゆっくり進む。ここでガスって来たら一寸やばいだろう。右に左にパズルのようにルートファインディングしながら笹薮を掻き分けて行くと、刈払いされた道に飛び出した。どこかでルートをショートカットしてしまったらしい。

焼石岳
 
焼石岳の山腹を巻くように南下して、姥石平からの道と合流すると間もなく、だだっ広い東焼石の山頂に着いた。 12時15分、焼石岳から45分だ。また風が強くなってウメバチソウやハクサンフウロ、ハクサンシャジンなど大きく揺れて写真が撮れない。帽子も飛ばされてあわてて追いかける。焼石岳山頂では何組かのパーティーが登って来たが、ここは人の気配が全く無い。やや雲が増えて早池峰など遠くは霞んで見えないが、相変わらず焼石連峰の展望は良い。

稜線というより牧場のような広々とした緩やかな高原の中をルンルン気分で姥石平まで下ると風は弱くなった。この辺りで山スキーをしたら最高だろう。石ころ道を飛ばして銀明水まで下ると、登りでは気付かなかった避難小屋がすぐ上にあった。気温は20度まで上がり日向は暑い。

13時45分中沼コース分岐、14時15分石沼と長い下りが続く。石沼付近でラジオを聴きながら数人のグループが休んでいた。高校野球中継で地元の学校が出ているらしい。(甲子園大会8月23日の準決勝第2試合で岩手代表花巻東が中京大中京と対戦したが、決勝には進めず。この試合の実況だった)道は少し乾いてぬかるみは今朝より多少ましだ。

金山沢でタオルを濡らして頭に巻く。ヒンヤリして気持ちいい。15時頃、二人連れとすれ違った。今から登るのかと驚いたが、銀明水の避難小屋に泊まるのだろう。15時半、ツブ沼駐車場に帰着。今回も好天に恵まれて素晴らしい夏山を満喫出来た。国道397号沿いにある「すぱおあご」という温泉に立寄って帰路に着く。

焼石岳
 
追記:胆沢ダム(いさわダム)は岩手県奥州市北上川水系胆沢川に建設中のダムである。堤高132.0m、堤体長は日本最長の723m(黒部ダムの1.5倍)という巨大ロックフィル式ダム。2013年(平成25年)の完成を目指してダム本体の盛土工事を行っている。完成すればダム湖の大きさは現在の石淵ダムの4倍になるという。 このダム建設に伴い、焼石岳登山道の一つ「中沼コース」の入口が変更になっている。ただし、2009年8月23日現在、岩手宮城内陸地震のためこのコースは使用できないので注意が必要。

国見平温泉 350円

すぱおあご 500円