山粧う帝釈山(2060m)と尾瀬沼散策
 
日  時:2008年10月18日(土)〜19日(日)
天  気:【18日】 快晴 【19日】 快晴
行  程:【18日】530白石−福島飯坂IC−会津若松IC−945,1045檜枝岐−1130,1140馬坂峠〜1225,1320帝釈山〜1405,1420馬坂峠−檜枝岐かぎや旅館(泊)
【19日】725檜枝岐−745,800御池−820,825沼山峠〜935,1000長蔵小屋〜1104,1120沼山峠−1140,1145御池−1210,1245檜枝岐−郡山南IC−国見IC−1640白石


山域図
山断面図 帝釈山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

枠のある写真をクリックすると拡大します


田代帝釈山には11年前の6月に湯の花温泉泊まりで、猿倉登山口から田代山湿原を経て帝釈山までピストンした。登山口の山開き横断幕と静かな田代湿原そして田代山山頂の大師堂が印象に残っている。 今回は当初木賊温泉泊まりで田代山〜帝釈山の計画だったが、檜枝岐から林道が馬坂峠まで延びて帝釈山に簡単に登れるようなのでこのルートに変更した。ところが直前にHさんの腰痛が再発して不参加となった。HさんあってのYACなので非常にさびしい。

千葉埼玉組とは檜枝岐「かぎや旅館」10時合流予定で白石を5時半に出る。7時過ぎ、会津若松ICを降りてやや混雑した会津若松市内を抜け国道118号を南下、会津田島から289号で西へ向かう。 福島から会津若松辺りまで濃い霧に包まれていたが、南下するに従って見通しも良くなった。素晴らしい秋晴れである。ほとんど信号もなく快適な道だ。南郷村で沼田街道に入った辺りから周囲の山々の紅葉が目に付くようになった。檜枝岐が近付くに連れ色付きが濃くなる。

集合時間より少し早く「かぎや」に到着、しばらく時間があるので周囲を散策する。宿のすぐ前にある檜枝岐歌舞伎の舞台と石造りの観客席は歴史を感じさせて中々いい雰囲気だ。檜枝岐川に掛かる歩道橋にはソバの実が干してあった。周囲の山々の木々は十分に色付いているが豪華絢爛というほどではない。 馬坂峠への林道入口の橋も確認する。宿で尋ねると峠までダート道なので45分は掛かるそうだ。10時半頃、本隊が到着。仕度をして4駆のフォレスターとレガシーに分乗して宿を後にする。

檜枝岐川に掛かる橋を渡り、舟岐川に沿って狭くてカーブの多い林道を遡る。しばらくすると舗装が終わって砂利道となった。よく整備されて凹凸は少ないが時々大きく揺れる。対岸の山肌の紅葉は見頃を迎えているようで歓声が上がる。檜枝岐から登山口の馬坂峠までは約15km、標高差は約900mある。 高度が上がるに連れて紅葉は盛りを過ぎてしまい、峠付近のダケカンバなど皆葉を落として冬姿になっていた。シラビソに囲まれた標高1790mの馬坂峠には20台位は置けそうな駐車場と立派な水洗トイレが設置されている。時間が遅いから満車を心配したが、スペースには十分余裕があった。


帝釈山 帝釈山 帝釈山
 
11時40分、いつものHさんに代わってKJ一家の孫である6歳のY隊長を先頭に歩き出す。元気が良くて素晴らしいペースだ。皆着いて行けない。

「遅いぞー、早く来ーい」 「待ってくださいー隊長ー」 「ゆっくりねー、飛び跳ねたらだめだよー」 峠から山頂までほとんど木道が整備されている。段差が大きいので結構くたびれるが隊長は元気一杯、ひょいひょい軽快に登って行く。2世代年上の大人たちは青息吐息だ。シラビソの中にダケカンバやコメツガが混じる深い森が続き、ナナカマドの赤い実が目立つ。気温は16度もあり、風がないので汗ばんで来た。

「隊長、休憩して下さーい」 懇願の声が上がった時には山頂はもう目の前だった。峠から45分、隊長に叱咤されたお陰でコースタイムより若干速い。数組の登山者がいる露岩の狭い山頂からは360度の大展望が広がった。やや霞んでいるが空にはほとんど雲がなく、西には会津駒から燧、至仏、笠ヶ岳、上州武尊が望める。 南には日光白根、太郎山、女峰山など日光連山が並び、太郎山の左には男体山も顔を出している。東には那須連山が見えているが何山だか同定は出来ない。北面は木々に隠れて荒海山や七ヶ岳などは見えず。風もなくとても10月後半の2000m級の山とは思えない穏やかな日和だ。


帝釈山 帝釈山 帝釈山
 
しばらく大展望を堪能した後、各自岩の椅子を確保して昼食にする。いつもの宴会のようなクッキングとはいかないが、KN氏がコンロでスープやコーヒーを準備してくれる。

「Hさんに電話しましょう」 何人かが携帯を取り出したが圏外で掛からない。小生のauでやってみると通じた。 「今、帝釈の山頂に着いた所です。天気は最高で展望もいいですよ」 「いやー、うらやましいなー。とにかく腰が痛くて参ったよ」 「早く治してまた行きましょう」 前回の西吾妻とは様変わりのこの好天にHさんがいないのは残念だ。 「誰も田代山へ行かないの?」 全員そんな気はなく、YACとしては極めて珍しくアルコールゼロの昼食を終え下り始める。さすが元気な隊長も木道の下りは滑りやすいのでペースが落ちる。14時近いこの時間になっても次々に登って来る人がいるのは驚きだ。結局、登りと同じ45分掛かって峠に帰着。

まだ宿へ行くには早過ぎるのでのんびりドライブする。紅葉がきれいな場所を見つけては路肩に車を停め、河原に降りたりして写真を撮るが、秋の日が傾いていい写真は撮れなかった。15時半、「かぎや旅館」に帰着。皆で散歩がてら檜枝岐歌舞伎の舞台など見て歩く。 この旅館、「秘湯の宿」という割りに温泉は加温循環でSさんの眼鏡にかなわなかったが、夕食は山菜やきのこ、岩魚の刺身と塩焼き、裁ちソバ、「つめっこ」「はっとう」と全て地元食材の素朴な料理で岩魚の骨酒と共にいうことなし。20時には全員就寝とすこぶる健康的な一夜であった。



翌日は前日に増して好天。正に雲量ゼロの快晴である。日本中が高気圧に覆われているようだ。2日目はすぐ近くの「ミニ尾瀬」でも見て帰ろうかというつもりだったが、この天気にそれではもったいない。少し遠いが御池からシャトルバスで沼山峠まで行き、尾瀬沼まで歩いてみようということになった。 6時半に朝食を摂り、7時25分、宿を後にしたが、放射冷却のせいで気温3度とキリッと冷えている。七入の駐車場を過ぎるとつづら折れの登りとなりグングン高度が上がる。1300m辺りから1500m付近が紅葉のピークらしく、赤・黄・橙・朱と全山燃えるような木々の装いに大歓声の連続だ。

昨日のくすんだ紅葉とは雲泥の差である。残念ながら車を停める場所がないので写真は撮れない。もっともこの迫力あるパノラマはカメラに収めようもないが。20分ほどで大駐車場がある御池に着き、シャトルバスに乗り換える。宿で駐車券をくれたので2台分2000円が浮いて大助かりだ。 御池から沼山峠までの道は燧岳の東麓をトラバースするように作られているので急な登りはない。シャトルバスは紅葉の森を縫うように進み、時折、燧岳が姿を現す。展望の良い場所で停車するサービスもあった。この付近の紅葉は盛りを過ぎていたが、葉を落としたダケカンバの森も風情ある光景だ。


尾瀬 尾瀬 尾瀬
 
20分で沼山峠休憩所に着き、山道に入る。もちろん先頭はY隊長だ。道はしばらく緩やかに登っており、階段や木道が続いている。

「ピーヒョロー」 「あれは何?」 「鹿が鳴いてるんだよ」 KN博士は何でも知っている。気温は8度まで上がり少し汗ばんだ頃、最高点を過ぎて道は緩やかな下りになった。道の右脇にベンチが置いてあり、尾瀬沼が少し見える。いまや鳩待峠と並んで尾瀬の玄関となった感のあるこの道は観光客も多く、革靴やツッカケで歩く人もいる。 「遅いぞー」 Y隊長は相変わらず前方から皆を鼓舞している。道が平らになり、シラビソの森を出ると一気に大江湿原が広がった。真新しい複線の木道が遥か彼方まで延びており、隊長はうれしいらしく運動会のように駆け回っている。

「走ると疲れるからダメだよー」 と云われてもどこ吹く風だ。遠くに青々とした尾瀬沼が見え出した。鴨の群れが水面に浮かんでいる。シラビソの森をバックに葉を落としたダケカンバの白い幹が印象的だ。右手に燧岳も姿を現した。さすがの隊長もソロソロ疲れたか、ガクッとペースが落ちた。走っては止まって寝転んでいる。


尾瀬 尾瀬 尾瀬 尾瀬
 
「あの道を少し間隔を開けて歩いてみて」 尾瀬沼をバックにKJプロが注文を出し、俄かモデルがゾロゾロ木道を歩く。湿原を流れる小川を覗くと、橋の下には数十匹の岩魚が集まっていた。沼の畔に建つ長蔵小屋を囲むカラマツ林の黄葉が素敵だ。9時半過ぎ、大勢の登山客で賑わう長蔵小屋に着いた。

ここは何年ぶりだろう? 40年前の学生時代に初めて尾瀬を訪れた時、悪天のため燧をあきらめてこの小屋で停滞したことを思い出す。当時は渡し舟が沼を往復していた。大江湿原を埋め尽くす見事なニッコウキスゲの大群落が忘れられない。翌日、ほとんど客がいない温泉小屋の大きな部屋で一人ポツンと座っていたなー。

若き日に辿りし道や尾瀬の秋

依然として雲一つ無い青空に浮かぶ燧を見上げていると感傷的になってしまった。小屋脇のベンチで休み、ワイワイ写真を撮ったり、行動食を食べてのんびりする。10時丁度、小屋を後にしたが、Y隊長は一寸走っては 「疲れたー」 と寝転んでは、また少し走ることを繰り返している。平らな湿原からシラビソの森に入り、急坂に差し掛かるとすっかりペースが落ちてヨレヨレ、フラフラだ。

「ダメだというのに走るからでしょ」 Sお祖母さんから怒られていたが、皆が待っているベンチまで来て少し休み、おやつを食べるとたちまち復活。また先頭に立って歩き出した。長蔵小屋で買ってもらった鈴の音が暗い森に響く。6歳でこれ位歩ければ将来頼もしい。


尾瀬
 
11時過ぎ、沼山峠に帰着。帰りのバスは随分飛ばして14分ほどで御池到着。ここから檜枝岐への下りは朝より一段と光り輝き、豪華絢爛な紅葉に見とれながらのドライブとなった。檜枝岐でおいしい蕎麦を食して帰途に着く。

参考:御池−沼山峠シャトルバス料金 往復800円
「つめっこ」蕎麦のすいとん、鴨・自家製のじゃがいも・味噌使用
「はっとう」蕎麦粉ともち米粉を練り、茹でてエゴマをまぶした蕎麦料理