年忘れの高指山(911m)と不老山(839m)
 
日 時:2005年12月23日(金)
行 程:843高尾−906,910上野原−928,932不老下バス停−950登山口−1020,1030金毘羅大権現−1125,1132不老山−1201,1204高指山−1208,1338山頂直下−1422,1428和見峠−1513,1528甲東小学校前−1545,1555上野原

ルート断面図とルート図
高指山断面図 高指山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

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今年の忘年山行は甲東三山の高指山である。甲東三山とは中央本線上野原駅に近い高指山、不老山とその南東に位置する瀬淵山の三つを指すのだが、【甲斐の国東部の三山】だとすれば、滝子山、百蔵山、扇山など周囲にもっと高くて立派な山がいくらもあるのに、何故こんなちっぽけな山を選んだのだろう? ちなみに今年2月に上野原町と秋山村とが合併して市になったばかりの上野原市に【甲東】という地名はない。【甲東三山】というやや大げさな名前の由来はネットで調べても不明だったが、山頂で疑問が解消することになる。

集合場所の高尾駅でガラガラの小淵沢行に乗り込む。雲一つない冬晴れの空には周囲の山々がくっきりとスカイラインを描いている。 わずか20分程で着いた上野原からタクシーに分乗し、山里を縫って不老下バス停へ向かう。バス停から脇道に入った所で下車。いつもならこの先の集落まで入れるらしいが、倒木があって通行止めだという。ヤッケやフリースを脱ぎ、高度計を340mに合わせて、9時半、急な舗装路を歩き始める。 集落を抜けて行くと左手に富士山が姿を現した。人家が途切れると墓地がありそこから山道となる。分厚い落葉の道をしばらく進むとヒノキの植林に変わった。風もなく気温は7度もあるので、毛糸の帽子では暑いくらいだ。尾根道の急登で少し汗ばんで来た。標高は早くも500mに達している。


墓地 急な舗装路を歩き始める アラカシ
シモバシラ 富士山と道志の山々 金毘羅大権現
 
傾斜が緩やかになり尾根の右を巻くように進むと、右が開けて生藤山方面の山並が見える。暖冬との長期予報にも拘わらず、この数週間日本列島には寒波が次々と到来して、東北から北陸・山陰まで大雪が降り続き、各地で12月の積雪記録を更新しているので、念のため軽アイゼンにロングスパッツまで持参したが雪のかけらもない。 歩き易くて雰囲気の良い山だが、高速道路の騒音がやや耳障りだ。ホオノキやコナラなど冬枯れの木々の中でアラカシの幼木の緑が際立つ。去年、百蔵山西稜で初めて同定した木だが、繁殖力が強いらしく随分たくさん生えている。

10時過ぎ、中風呂分岐を通過。モミの巨木の下にクリの薄い輪切りのようなものがたくさん落ちている。調べてみると3年に一度結実するというモミの球果の鱗片だった。ヒノキの森を抜けると右手が開けて、富士山の南東側に大きな雲が巨大な雪煙のようにたなびいている。 枯れたアカマツの幹に大きな白っぽいキノコが張り付いていた。スギタケというらしい。火の用心を呼び掛ける町の放送が、風に乗って上がって来る。 10時20分、小さな鳥居があった。金毘羅大権現と名前は仰々しいが高さ1m程の小さな祠が鎮座している。

   烈風に雲棚引かす白き富士

標高610mのここは南面が大きく開けていて、雲一つない青空の下、丹沢・道志の山々そして富士山まで雄大な展望が広がって気分爽快。地図を睨んで同定してみると、右から大きく張り出した扇山南稜の左にかろうじて九鬼山が頭を出し、そこから平坦な山並が伸びて鈴ヶ音峠に至り、電波塔のある大桑山が随分立派だ。 さらに高畑山、倉岳山など前道志の山が続き、その後ろには今倉山など道志の山並が控えている。鈴ヶ音峠の奥には杓子山・鹿留山が富士山の前衛をなしており、逆光なのではっきりしないが、左手一番奥に蛭ヶ岳や大室山、加入道山など丹沢北部の山々が屏風のように連なっている。

   蒼天に道志の山並重畳と

眼下には中央道下り線の談合坂SAが見える。気温は9度まで上がったが、風は冷たい。腹ごしらえをして出発。スギの植林が現れた。そこら中に間伐したスギが大量に放置されている。道端に茎の周囲に霜柱を付けた枯れ草があった。 シソ科のシモバシラは霜柱を作ることで知られているが、これ以外にも氷の花を付ける種はいくつかあるらしい。 急な尾根の直登となる。西寄りの風が肌を刺して気温は一気に3度まで下がり、ようやく冬の山らしくなったので、手袋をしてフリースを着込む。ヒノキの赤茶色の実が無数に落ちており、スギの黒っぽい実もチラホラある。高級材のヒノキは実まできれいで何となく品があるが、スギの実はがさつで安っぽいのは面白い対比だ。 11時25分、839mの不老山到着。ここも道志の山から富士山まで南側の展望良好。東には生藤山のなだらかな稜線も見える。 不老山の先は急坂で20m程一気に高度を下げ、皆から嘆声が上がる。依然として西風が強く木々が大きく揺れ、積もった落葉も吹き飛ばされている。その先の登り返しはえらく急勾配でペースも落ちてしまう。

   風騒ぎ落葉吹き飛ぶ高指山


不老山にて 急登 高指山山頂
山上の宴 冬空 山麓にて
 
左はヒノキの植林、右斜面にはリョウブ、ウダイカンバ、イヌシデ、コナラ、ネジキ、ウリカエデ、ウリハダカエデなどすっかり冬姿の落葉樹林が続く。12時丁度に高指山到着。木々に囲まれてほとんど展望のない小さな山頂には誰もいない。古びた山名表示板に【旧甲東村の三山の一つ】と墨で書いてある。 やはり昔は【甲東】という村があり、その村の三山ということで甲東三山と名付けられたという訳だ。ようやく疑問が解けてすっきりする。ここは宴会場としては風当たりが強いので、写真だけ撮って先へ進む。25000図に拠れば、東に少し下ると平らな場所がありそうだ。

「ここがいいよ」 先行したSさんが選んだ場所は、風も当たらず日当たり良好のお誂え向きの宴会場だ。早速、枯れ木などを払い、乾いた落葉の上にシート2枚を広げ、靴を脱ぐ。ワインで乾杯。Hさん手作りのレンコン唐辛子炒めがうまい。M君はいつも通りカップ麺を抱えている。 燻製卵、チーズ、ラッキョウそして定番のベーコン野沢菜炒めに海苔餅で締め。冬枯れの木々の間から見上げる澄み切った青空と流れる白雲が鮮やかなコントラストを描いていて心が洗われるようだ。

   冬空に流雲白く目に染みる

1時間半の宴を切り上げ、和見峠目指してのんびり下り始める。しばらく行くと厳しい急斜面となったが、うまくジグザグに道が付けられているので歩き易い。和見峠で休憩。 15時前、舗装された林道に出ると銀色に光る大きな貯水槽があった。点々と立派な家のある集落を縫って20分程下ると甲東小学校前のバス停に着いた。タイミング良く15分で上野原行きバスがやって来た。今日はそれ程寒くもなく最後まで快晴で山並がくっきり見え、道中誰にも遭わず、年忘れにふさわしい爽やかな山旅であった。

参考:甲東小学校前〜上野原 富士急バス 430円