天狗山(1882m)から男山(1851m)
 
日 時:1999年6月12日(土)
天 気:快晴。夏山の感じで陽射しきつい。風はほとんどなし。
行 程:630大深山遺跡駐車場―715,735 1本目―835,845 2本目(稜線直下)―908,1000 天狗山―1040,1045 1797m峰手前―1145,1310男山―1405,1425 林道―1500黒沢橋

ルート断面図とルート図
 
天狗山断面図
 
天狗山ルート図
カシミール3Dにて作成しています

ブナ、カラマツの新緑とシャクナゲの稜線漫歩に岩尾根のスリルを期待しての山行である。ガイドブックには中級向きとある。満天の星で期待したとおり、梅雨にしては爽やかに晴れ渡った空の下、大深山遺跡駐車場を後にする。駐車場の端に「山道」という上に向かう道標があり迷ったが、ガイドブックに従って舗装された車道を一旦下ることにする。(これは大きな間違いだった)気持ち良い空気を割いて実に様々な鳥達が高原の朝のハーモニーを奏でている。一度にこんな沢山の種類の鳥の声を聞くのは初めてだ。残念ながら鶯とホトトギスしか判らない。10分程下ってT字路を左折し、馬越峠へ向かう林道へ入る。野菜畑の中を緩やかに上って行く。左手に天狗山の岩峰が大きくせり上がる。字が消えて頼りにならない道標に従い、細い林道に分け入る。天狗山へ直上しているので間違いはないだろう。気温がかなり上がって汗ばむ中、ようやくミズナラやカエデの多い雑木林へ入って日陰になった。昨晩のにわか雨で道がややぬかるんでいる。駐車場で会った単独の男性が追いついてきたので道を譲り、朝食にする。

ミズナラやシラカバの若葉が朝露に濡れて輝いている。エゾハルゼミがうるさいくらいだ。ジグザグの急斜面をゆっくりと登って行く。余り人が入っていないらしく下草が足を濡らす。リョウブとシャラノキ(ナツツバキ)は樹皮が良く似ていていつも同定に悩んで来たが、今回ようやく葉をじっくり観察してはっきり確認出来た。リョウブの葉には細かくて鋭く尖った鋸歯があり、シャラノキの葉は鋸歯が丸味を帯びている。登るにつれて段々シラカバが増えてきてほとんど純林になる。ミズナラとリョウブが少し混じっている。玉葱のように剥がれるダケカンバも点在する。

露岩が目立つようになり、稜線が近い気配だ。露岩の後ろから人の声がしたと思ったら馬越峠からの稜線と合流した。鞍部には5人の中高年グループが休んでいた。峠から45分だそうだ。ここからは岩尾根状になる。左手の展望が開けてシラカバ林の若葉が見事だ。もうシャクナゲの花は終わっている。代わりに盛りを過ぎたヤマツツジが点々と咲いている。わずかの登りでやっと天狗山到着。ここは独立峰なので360度の大展望だ。南に瑞牆・金峰。左(東)に国師さらに甲武信など奥秩父の山々。北には御座山。西に八ヶ岳、手前にはこれからたどる男山の岩峰が魁偉な姿を見せている。さらに左(南西)方向には櫛形山の長大な稜線。奥に甲斐駒も見えるが富士山は見えない。

男山の方から夫婦二人のパーティーが登って来た。大深山駐車場を8時前に出て「山道」の道標に従って直上し、男山との鞍部経由ここまで1時間半で来たそうだ。我々はガイドブックを信じたばかりにえらく遠回りしたようだ。後ろから先程の5人組も到着して賑やかになる。まず5人組が、続いて夫婦も男山へ向って行った。我々も出発する。すぐに5人組の一人が引き返して来た。うっかりして足を捻挫したので車へ戻るそうだ。切れ落ちて若干スリルのある岩尾根を軽快に進むとまもなく一人欠けた4人組に追着いた。カラマツの間にスミレやキンポウゲらしき黄色い花が咲いている。ウラジロモミ、コメツガ、ミズナラなども多い。トウゴクミツバツツジは花が終わっている。ルートファインディングが難しい所もあり中々面白い。久し振りの岩の感触はいいものだ。

小さなピークをいくつも越えてようやく男山に着いた。先客はあの夫婦だけだ。ここも天狗山同様360度遮るものがない気分最高のピークである。冷たい日本酒で乾杯。色々つまみが出てきてすっかり長居を決め込む。例の夫婦はお先にと下りてゆき、後ろの4人組は引き返したらしく誰も来ない。きらめく太陽の下、静かな時が流れる。別の4人組が到着したのを潮に腰を上げる。少し下って分岐を右に折れる。(これが最大の間違いだった)ゴルフ場の上に出て直接大深山駐車場へ向うつもりだ。歩きやすい道をどんどん下って行く。ゴルフ場に向かうなら西へ行かねばならないが、段々東へ向っている。どうやら御所平への道のようだ。御所平へ下りると車の回収が大変だ。困ったがもう下るしかない。ようやく林道へ出てしばらくすると先程の夫婦に追着いた。彼等も道が違うと思い、西へ向かうべく40分も藪こきしたらしい。

何とか御所平への舗装路に出た。黒沢橋のたもとに着いたのは3時過ぎだ。大深山へ車回収に向かう。ここからの5kmはかんかん照りで疲れた体には応えた。千曲川沿いのだだっ広い景色の中、山靴でアスファルトの土手道を延々と歩き続けるのはつらい。特に最後1kmの上りでは足が引きつって参った。やっとの思いで大深山駐車場に着いたらあの夫婦が帰り支度をしていた。ザックをかついだまま歩いたらしい。全くタフな二人だ。帰りの中央高速と首都高も渋滞したし本当に疲れたが、夏の光岳に向けて充分なトレーニングになったろう。久々に歯応えのあるいい山だった。